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38 普通の転生者、晩御飯を食べながら話し合う
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昼はとりあえずあれで済んで、帰りに待ち伏せでもされたらどうしようって思ったけど、さすがにそこまで暇ではなかったらしく、僕は何事も無く宿舎に帰った。
だけど今日みたいな事がこれからも起こるのは困る。僕としてはこのまま穏やかに王城勤めを続けていきたいのだ。だってせっかく試験に受かったんだもの。それにこの前ちょっと自信がある計算と書類の整理で褒められたし。
そういう事を積み重ねてしっかりとした文官になりたい。
もっとも宰相府に関しては段々どうでも良くなってきているんだけどね。
お料理なんてほとんどしないから、僕の晩御飯はほとんど買ってきたものを並べるだけだ。そうしている間にフィルが帰ってきた。
「今日はお疲れ様、サミー。帰りは大丈夫だったみたいだな」
「おかえりなさい。うん。さすがにそこまで暇では無いみたいだよ。えっとフィルの方に何か困ったような事はいっていない?」
ほら、お祭りに一緒に行ったり、付き合っているっていう噂をお互いにきちんと否定していないからね。
だからもしも八つ当たりみたいな事があるのは嫌だって思ったんだ。
心配していた宰相様の方からは特に何かがある訳では無かったけれど、あの殿下は分からないじゃない?
「ああ、特にはな。あ、お前もこれを買ったのか」
並べてある食事を見てフィルが笑った。どうやら同じものをってしまったらしい。
「残ったらマジックボックスに入れておけばいいよ。食べよう?」
そう、この世界は冷蔵庫は無いけれどマジックボックスとかマジックバックとかがあって、時間経過が無いものもあるからとても便利。でもそれなりのお値段はするけどね。
僕達は買ってきた物をつまみながらゆっくりと口を開いた。
「僕ね、ちゃんと断ったつもりだったんだ。でも養子の話も、婚約の話もなんだかきちんと断っていないみたいだから、今度の休みにエマーソンに行ってくる」
「……ああ」
「フィル?」
何かな。何となくフィルが元気がないように見える。やっぱり誰かに何かを言われたのかな?
「フィル、やっぱり僕のせいで誰かに何かを言われているんじゃない?」
「は?」
「その……僕達付き合っているっていう噂を否定していないじゃない? その事でフィルが面倒な事に巻き込まれていたら」
「そんな事は想定内だから気にするな。むしろその為の伯爵家への養子だ。領なしの男爵家じゃ話にならないからな。まぁ、どうなっているのか、きちんと断る事が出来るのか、断ってもちゃんと城で働く事が出来るのかっていうのを改めて聞いてきた方がいいのかもしれないな」
フィルの言葉に僕は食べていた肉の串焼きを皿の上に置いて「フィルは……」と口を開いた。
「ああ?」
「フィルは城勤めをしていたら断れないと思う?」
「……いや、レスター様が本気で動いたらおそらくは養子の話も、結婚の話も断れるだろう。ただ」
「ただ?」
「…………すまん。分からん。レスター様の孫って言う噂がどう言う風に影響するのかは分からない」
「そっか~、なんだか僕は知らない事だらけだったんだね。養子の事も、婚約の事も、大祖母様の事も、お祖父様の事も……」
シンと静まる部屋の中。そして。
「でも何にもしないのはなんだか違うと思うから、やっぱり話をしてくるよ。ありがとね、フィル」
「俺は何もしていないよ」
「そんな事ないよ。何とかしようって思えたのはフィルのお陰だよ」
「……そうか。なら、良かった」
小さくそう言って、ふっと顔を背けたフィルの顔がほんのり赤くなっている。
あれ? フィルってば照れているのかなと思った次の瞬間「サミーは強くなったな」って、真っ直ぐに見つめられて、なぜだか分からないけれど、今度は僕の顔が赤くなった。
だけど今日みたいな事がこれからも起こるのは困る。僕としてはこのまま穏やかに王城勤めを続けていきたいのだ。だってせっかく試験に受かったんだもの。それにこの前ちょっと自信がある計算と書類の整理で褒められたし。
そういう事を積み重ねてしっかりとした文官になりたい。
もっとも宰相府に関しては段々どうでも良くなってきているんだけどね。
お料理なんてほとんどしないから、僕の晩御飯はほとんど買ってきたものを並べるだけだ。そうしている間にフィルが帰ってきた。
「今日はお疲れ様、サミー。帰りは大丈夫だったみたいだな」
「おかえりなさい。うん。さすがにそこまで暇では無いみたいだよ。えっとフィルの方に何か困ったような事はいっていない?」
ほら、お祭りに一緒に行ったり、付き合っているっていう噂をお互いにきちんと否定していないからね。
だからもしも八つ当たりみたいな事があるのは嫌だって思ったんだ。
心配していた宰相様の方からは特に何かがある訳では無かったけれど、あの殿下は分からないじゃない?
「ああ、特にはな。あ、お前もこれを買ったのか」
並べてある食事を見てフィルが笑った。どうやら同じものをってしまったらしい。
「残ったらマジックボックスに入れておけばいいよ。食べよう?」
そう、この世界は冷蔵庫は無いけれどマジックボックスとかマジックバックとかがあって、時間経過が無いものもあるからとても便利。でもそれなりのお値段はするけどね。
僕達は買ってきた物をつまみながらゆっくりと口を開いた。
「僕ね、ちゃんと断ったつもりだったんだ。でも養子の話も、婚約の話もなんだかきちんと断っていないみたいだから、今度の休みにエマーソンに行ってくる」
「……ああ」
「フィル?」
何かな。何となくフィルが元気がないように見える。やっぱり誰かに何かを言われたのかな?
「フィル、やっぱり僕のせいで誰かに何かを言われているんじゃない?」
「は?」
「その……僕達付き合っているっていう噂を否定していないじゃない? その事でフィルが面倒な事に巻き込まれていたら」
「そんな事は想定内だから気にするな。むしろその為の伯爵家への養子だ。領なしの男爵家じゃ話にならないからな。まぁ、どうなっているのか、きちんと断る事が出来るのか、断ってもちゃんと城で働く事が出来るのかっていうのを改めて聞いてきた方がいいのかもしれないな」
フィルの言葉に僕は食べていた肉の串焼きを皿の上に置いて「フィルは……」と口を開いた。
「ああ?」
「フィルは城勤めをしていたら断れないと思う?」
「……いや、レスター様が本気で動いたらおそらくは養子の話も、結婚の話も断れるだろう。ただ」
「ただ?」
「…………すまん。分からん。レスター様の孫って言う噂がどう言う風に影響するのかは分からない」
「そっか~、なんだか僕は知らない事だらけだったんだね。養子の事も、婚約の事も、大祖母様の事も、お祖父様の事も……」
シンと静まる部屋の中。そして。
「でも何にもしないのはなんだか違うと思うから、やっぱり話をしてくるよ。ありがとね、フィル」
「俺は何もしていないよ」
「そんな事ないよ。何とかしようって思えたのはフィルのお陰だよ」
「……そうか。なら、良かった」
小さくそう言って、ふっと顔を背けたフィルの顔がほんのり赤くなっている。
あれ? フィルってば照れているのかなと思った次の瞬間「サミーは強くなったな」って、真っ直ぐに見つめられて、なぜだか分からないけれど、今度は僕の顔が赤くなった。
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