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51 普通の転生者、再びお祖父様の元へ行く
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またまたエマーソンに来ています。しかもまたまたお祖父様の屋敷に直行。ごめんね、さすがに今日は実家に寄るのは無理かなぁ。
ちゃんとフィルにも宰相閣下からの伝言を伝えたよ。
ちょっと苦い顔をしていたけど、行く事は言質を取った。でも一緒には行かない。多分フィルは僕に話を聞いて欲しくはないみたいだから。
「えっと、お手紙です。よろしくお願い致します」
お祖父様はそれを受け取って、直ぐに広げて読み始めた。そして。
「………なるほど」
何が書かれているのかも分からないから「なるほど」ってなんだろうって思ったけど、宰相様が話せる事と話せない事があるって言っていたから、多分聞いたらいけないんだろうなって思いつつその後の話を待っていると、お祖父様は手紙をしまって返事はこちらから出しておくって。
「城の中も少し変わってきたようだな」
「え?」
「私がいた頃とは随分違うな」
「……そうですか」
どこがどう違うのかは僕にはよく分からないけど、お祖父様が城勤めしていたのって随分前だと思うから、それはやっぱり色々と違うところもあるんじゃないかな。
「あ、あの……」
「どうした?」
「………やっぱりいいです」
だって、話せる事と話せない事……、それにフィルの事はフィルが自分で話すまでは聞いたら駄目だよね。
「ふふふ、サミーは色々と我慢をしているのね」
「お祖母様」
「でも我慢をし過ぎると昔のようにお腹が痛くなってしまうわよ」
クスクスと笑うお祖母様に僕はちょっとだけ顔がヒクッてなってしまった。だって、さすがにそれはさぁ……
「サミー、聞いたら悪いかな、言ったら困るかな、そんな事ばかり考えていたら何も出来なくなってしまいますよ。どうしても話せないものは相手がきちんをそう言うでしょう。そうしたら話せるようになったら話してほしいっていっていいのよ。心配をしている事も伝えていいの。何も言って貰えなくて悲しいって言う気持ちも、力になりたいって言う気持ちも伝えていいの。その人の事が大事ならね」
「…………」
「サミーは昔から肝心なところで臆病なのよね」
うううう、何だかよく分からないけど、そうなの? そうなのかな。
「それくらいにしてやりなさい。誰しも自分の事は一番よく分からんものだ」
「ふふふふ、そうですね。サミー、お腹に溜め込んでは駄目よ。言葉を出しなさい。出す言葉が分からないならどうして聞きたいのかなって考えてごらん。さぁ、明日からまたお仕事でしょう? 頑張って」
「はい。えっと、じゃあ、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「王城で起きているのは、アルトマイヤー様が仰っていたように、単なるいじめではないのでしょうか」
「……そうだな。それはもう少し固めていかないと答えられんが、その可能性はある。私も動く。きちんと分かったら伝えよう」
「ありがとうございます」
「フィリップに、なるべく早く来るように伝えなさい」
「はい。あ、あの……」
「うん?」
「フィルは……すみません。やっぱり自分で聞きます。有難うございました」
僕はやっぱり何も聞けないまま頭を下げてお祖父様の家を後にした。
お祖母様は「お仕事を頑張っているからお土産よ」とクッキーと紅茶をくれた。ロイヤルシーズンのものでビックリしたら「ほんの少しだけなのよ」って笑った。
「誰しも自分の事は一番分からない………か……」
お祖父様の屋敷から自分の部屋に転移陣で飛んで、見慣れたそこではぁっと息を吐いて呟いた。
自分の事も、フィルの事も、なんならお城で起きている事も僕は何にも分からないよ。そんな気持ちでもう一つ溜息をついて、ダメダメって頭を振ると「どうして聞きたいのかなって考えてごらんなさい」っていうお祖母様の言葉が聞こえた気がして。なんだかますます分からなくなってしまった。
こんな事をしてたら幸せがにげて行っちゃう。
「よし、紅茶とクッキーで挽回だ」
声を出して、僕は部屋を出た。フィルはまだ帰っていないみたいだった。
なんだかそれが淋しいなって思った。
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ちゃんとフィルにも宰相閣下からの伝言を伝えたよ。
ちょっと苦い顔をしていたけど、行く事は言質を取った。でも一緒には行かない。多分フィルは僕に話を聞いて欲しくはないみたいだから。
「えっと、お手紙です。よろしくお願い致します」
お祖父様はそれを受け取って、直ぐに広げて読み始めた。そして。
「………なるほど」
何が書かれているのかも分からないから「なるほど」ってなんだろうって思ったけど、宰相様が話せる事と話せない事があるって言っていたから、多分聞いたらいけないんだろうなって思いつつその後の話を待っていると、お祖父様は手紙をしまって返事はこちらから出しておくって。
「城の中も少し変わってきたようだな」
「え?」
「私がいた頃とは随分違うな」
「……そうですか」
どこがどう違うのかは僕にはよく分からないけど、お祖父様が城勤めしていたのって随分前だと思うから、それはやっぱり色々と違うところもあるんじゃないかな。
「あ、あの……」
「どうした?」
「………やっぱりいいです」
だって、話せる事と話せない事……、それにフィルの事はフィルが自分で話すまでは聞いたら駄目だよね。
「ふふふ、サミーは色々と我慢をしているのね」
「お祖母様」
「でも我慢をし過ぎると昔のようにお腹が痛くなってしまうわよ」
クスクスと笑うお祖母様に僕はちょっとだけ顔がヒクッてなってしまった。だって、さすがにそれはさぁ……
「サミー、聞いたら悪いかな、言ったら困るかな、そんな事ばかり考えていたら何も出来なくなってしまいますよ。どうしても話せないものは相手がきちんをそう言うでしょう。そうしたら話せるようになったら話してほしいっていっていいのよ。心配をしている事も伝えていいの。何も言って貰えなくて悲しいって言う気持ちも、力になりたいって言う気持ちも伝えていいの。その人の事が大事ならね」
「…………」
「サミーは昔から肝心なところで臆病なのよね」
うううう、何だかよく分からないけど、そうなの? そうなのかな。
「それくらいにしてやりなさい。誰しも自分の事は一番よく分からんものだ」
「ふふふふ、そうですね。サミー、お腹に溜め込んでは駄目よ。言葉を出しなさい。出す言葉が分からないならどうして聞きたいのかなって考えてごらん。さぁ、明日からまたお仕事でしょう? 頑張って」
「はい。えっと、じゃあ、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「王城で起きているのは、アルトマイヤー様が仰っていたように、単なるいじめではないのでしょうか」
「……そうだな。それはもう少し固めていかないと答えられんが、その可能性はある。私も動く。きちんと分かったら伝えよう」
「ありがとうございます」
「フィリップに、なるべく早く来るように伝えなさい」
「はい。あ、あの……」
「うん?」
「フィルは……すみません。やっぱり自分で聞きます。有難うございました」
僕はやっぱり何も聞けないまま頭を下げてお祖父様の家を後にした。
お祖母様は「お仕事を頑張っているからお土産よ」とクッキーと紅茶をくれた。ロイヤルシーズンのものでビックリしたら「ほんの少しだけなのよ」って笑った。
「誰しも自分の事は一番分からない………か……」
お祖父様の屋敷から自分の部屋に転移陣で飛んで、見慣れたそこではぁっと息を吐いて呟いた。
自分の事も、フィルの事も、なんならお城で起きている事も僕は何にも分からないよ。そんな気持ちでもう一つ溜息をついて、ダメダメって頭を振ると「どうして聞きたいのかなって考えてごらんなさい」っていうお祖母様の言葉が聞こえた気がして。なんだかますます分からなくなってしまった。
こんな事をしてたら幸せがにげて行っちゃう。
「よし、紅茶とクッキーで挽回だ」
声を出して、僕は部屋を出た。フィルはまだ帰っていないみたいだった。
なんだかそれが淋しいなって思った。
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