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番外編

番外編20 お帰りなさい  ※

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 ベヒモスが討伐された後、ダグラスがノーティウスの町に帰って来たのはニ週間後の事だった。
 いやまさかそんなに帰って来られないなんて俺の方がびっくりだった。あの出張販売をしていた広場で抱きしめられて、良かったねって一緒に帰れると思っていたからさ。

 ダグラスが面倒くさそうに「全部こっちに押しつけやがって」ってブツブツ言っていたのはこの事なんだって何となく判ったのはダグラスがその後、王都まで連れて行かれて、王城に呼ばれて、色々なやりとりをしているって聞いてからだ。

 あの流れで行くとさ、ベヒモスを退治した一番の功労者は絶対にモニカさんだって思ったんだけれど、モニカさんは「知らないよぉ」の一点張りで、勿論王都に行く事もなく俺と一緒にノーティウスに戻って来てしまった。
 ザイルさんもこめかみの辺りを押さえたりしていたし、カイザックも眉間にものすごい皺を寄せながら「仕方ねぇよな」って言っていたから、まぁ冒険者をやめているからなんだなって思っていたんだよね。でもどうやらそういう事ではなかったらしい?

 結局ブラムウェルさんが指名依頼をしたダグラスを含むS級とS級に近いA級の冒険者たちには王国から報奨金が出た。そしてこの討伐依頼を出したブラムウェルさんにもね。勿論ブラムウェルさんは王国からの報奨金とは別にダグラスたちにきちんと依頼料が出したって。しかもベヒモスの素材も配分されたんだってカイザックから聞いた。
 ベヒモスの素材……そのうち気が向いたら何に使えるのか創造魔法で鑑定をしてみようと思う。

 そして面倒だったのがやっぱりエリクサーβだった。
 王国の目に止まっちゃったんだよね。でもそこはモニカさんの出番で「あたしがノーティウスのダンジョンで見つけたんだよぉ。今回大きな討伐があるっていうから破格値で売ったんだよ。でももう終わりだよ。だってまたいつ出るかなんて分からないからね。それがダンジョンってもんだよ。そういう事で収めてほしいね」って王国からの呼び出しも一蹴した。更にそれが通った。
 え? モニカさんって何者なの? そして俺はノーティウスのギルドからの単なる出張販売員って事で終了。

 とにかくそんなこんなでようやく戻ってきたダグラスはモニカさんを見るなり「あんたが足を洗った気持ちはよく分かった」って言ってから、カイザックに向かって「連れて帰るから。2、3日は休ませる」って宣言して、そのまま俺をお持ち帰りしてしまったんだ。
 何が何だか分からないまま、お帰りも言えずに肩に担がれるようにして運ばれていく俺の耳にはケンタローさんの「いいなぁ、抱っこ」っていうわけの分からない言葉が聞こえてきて、視界には満面の笑みを浮かべてバイバイ手を振るモニカさんが居て……。



「も、やだぁ! もう、あっ・あっ・やぁぁぁ! ダグラス!」

 ギルドから担がれて連れ去られて「家まで転移してくれ!」って言われて、せめてただいまくらい言えって言おうとしたら、ベッドでのしかかられていたって言うのは一体どういう事なんだろう。

「まだ、まだだ、もっと……出来るだろう?」

 いや、S級冒険者の体力と、鑑定とお弁当販売をしているギルド職員の体力を同じにしないでほしい。っていうか!

「ふ、ふざけるな! ただいまくらい言え! ってぁぁぁぁ! 奥、奥に、きちゃ……あん! あん! やぁぁぁぁ」

 すでに何度イッたか分からないし、何度出されたかも不明だけど、それでもダグラスのものは硬いままで、久しぶりだからって例の香油を(まだあったのか!)たっぷり仕込まれて奥に挑まれている。

「ソウタ、ソウタ……ソウタ……」
「あぁ! おねが……もっとゆっくり……やぁん! そこ、ゴリゴリしちゃ……い、いぃあぁぁ!……」
「気持ちいい?」
 
 腰を振りながら聞くな馬鹿! って怒鳴りたかったけれど、口を開けば甘ったるいような、泣いているような声しか出てこないし、涙も、よだれも出ちゃうしさ……もう、もう……

「も、でないぃ……くるし……ダグ」
「ごめん……だけど……止まらない、ずっと、欲しくて……行きたくもない城になんて連れて行かれて……」
「んん、……っあぁ! あ、あ、あん! や、前、も、さわ……な……」
「ソウタ、守るから。俺が、守るから……」

 揺さぶられながら、ダグラスは一体何を言っているんだろうって思った。
 そして快感って言うのは過ぎれば苦しいものになるっていうのを久しぶりに身に染みて味わった俺は、後ろから泡立つようなとんでもない水音を聞きながら、意識を飛ばしたのだった。





 気づいたら、時間が経っていないみたいにまだ抱かれていましたって言うのはいくら好きな相手でもちょっと遠慮をしたいシチュエーションだった。

「お、い……」
「うん? ああ、目が覚めたか?」
「……っ……」
「ああ、ごめん。声が出なくなっちゃったな。すまん」
「……そ、んなこと……ぉ……ってない……だ……ろ」
「思っている。浮気されていたらどうしようとも思っていた。あんな風に城まで連れて行かれるなんてちょっと想定外だったからな。ええっと、さっきポーション飲ませたから多分体力も戻って来るよ。声は……どうなんだろうな。傷用も飲ましたけど」
「き……ず?」
「ああ、すまん。その、少し、切れた」
「…………」

 どこが、とは聞くまいと思った。全くいくらなんでもポーション飲みながらのセックスなんてしたくねぇよ。

「いうこと……ある、よな」
「ごめん。ただいま、ソウタ。愛してる」
「…………お帰り、ダグラス。とうばつ……お疲れ様。とり……あえず、一度抜け」
「やだ。中は溢れちゃったから一度綺麗にしたから大丈夫」
「ちっとも大丈夫じゃねぇ!……っ……ふ……」
「今度はゆっくりするから……」

 グチグチと音がして肩に乗せられた足がゆらゆらと揺れるのを見つめながら、身体の中に広がっていく熱を耐えるようにして俺はダグラスの背中に爪を立てた。

「……っ……」
「ふ……ぁ、あ、あ、んん……あぁ!」
「いいところだけこすってやる……」
「ばか……っ……ああ!……や、も、これでおしまい」
「じゃあ、ゆっくりするか……」
「やぁぁだ! も、ちゃんと……顔見せろって……」

 切れ切れにそう言った途端、ダグラスの顔が甘く溶けた。

「じゃあ、この後は風呂に入って、それから飯食って、またしよう?」
「ええ~、そこは寝るんじゃないの?」
「何だかもったいなくて……」

 そんな事を言いながらストロークを早めるダグラスに俺の息も上がる。
「ああ、やば……イキそうだ……」
「うん……おれも……あ、あ、あ、ダグラ……あ、も……い……っ!」
「……っく!……」

 中に熱いものを受けながら、俺はもう一度意識を飛ばした。




 結局その日は気を失っている間に風呂に入れられたらしくて、気づいたら食事が並んでいた。どうやらエイダの所に行って作ってもらったらしい。最近は自分の弁当とか、畑で採れたものを創造魔法で適当に作って出したりしていたからエイダの所の食事は久しぶりだった。

「食えるか?」
「……くう」
「おう」

 二人でゆっくりと食べる食事も久しぶりで、何だかそれだけでホッとした。

「食べながら寝るなよ」
「うん」

 本当はまだ眠い。でもダグラスじゃないけど。もったいない。

「ねぇ」
「うん?」
「討伐の話聞きたい。あと、王都の話も、城の話も、それから……」

 そう抱き合う中で聞いた言葉。

「俺を何から守ってくれるのかも」
「……しまったな。聞こえていないと思っていた」

 ダグラスはそう言って少しだけ困ったような、どこか苦しいような不思議な表情を浮かべた。

「全部話してね。ちゃんと話して。今日じゃなくていいから」
「………わかったよ」

 そうして俺たちは食事の後、ダグラスが立てた予定を覆して、そのまま眠りに落ちた。だって、まだ明日も、その次も、多分その次も休みになる筈だから。


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あとちょっと!
3000字超えたから切った。
更新遅くてすみません。



 
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