悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
126 / 127
仮面舞踏会編

第96話 入場

しおりを挟む
「ダリア嬢!」

 嬉しそうに駆け寄るアルマにダリアは優しく微笑み迎えた。

「おかえり、アルマ。さぞ怖い思いをしただろう、部屋で休んだ方がいい。」

「そんな、わたくしはただ現場に居合わせただけに過ぎません。ヒナお嬢様に比べれば…」

 優しく微笑むとアルマの肩に手を置いた。

「気遣ってくれてありがとう、アルマ。君がいるってわかったから安心して舞踏会に送れたよ。」

 そんな二人の間にジルが割って入りダリアを冷たく見下ろす。

「やぁ、君が遠征の任を無事に果たしたという話しは聞いているよ。グローリア卿。」

「どうも·····」

 ダリアはフッと笑うとジルの脇を抜けてアルマの手を取ると量の中へと手を引く。

「道理で殺気を隠しきれない訳だ…もっと狡猾に生きないとね、グローリア卿。」

 炎のように光る瞳でダリアの笑みを射抜く。

「俺様が気付かないとでも思っているのか?クロウリー。」

 ダリアの背中を睨みつけ拳を強く握りしめる。

「アルマをパーティに参加するように仕向けたのは……貴様だろう?」

ドアを開けてアルマを中に入れるとダリアはジルに振り返って笑みを浮かべた。


「君も参加するといいよ、学園の仮面舞踏会に。」





聖ブルノア魔術学園

ここディシュタイン王国ては古くから新たな一年を迎える日に女神が祝福をもたらすと言われている。
だが一方でその女神の威光に惹かれてあの世から死霊が地上に溢れかえるとも信じられていた。
生者たちは死霊にあの世へと連れていかれぬように顔を隠し身を守るのだ。


そう、それこそが聖ブルノア魔術学園で行われる『仮面舞踏会マスカレード』所以だ。
今では学園で行われる貴族たちの余興に過ぎないが立派な伝統行事として重んじられている。

狡猾な思惑と甘美な秘密が混ざり合うホールで彼らは踊り踊り踊り舞う。


「公女様、仮面舞踏会用のドレスが届きましてございます。」

「ありがとう、マーサ。」

「公女様にお呼び頂き誠に光栄でございます。」

「流石にリアーナに任せる訳にはいかないからね、あの子も準備しないといけないのだから。ところでメアリーも到着している?」

「はい、お言い付け通り リアーナお嬢様の侍女として付いております。」

「ありがとう、あの子はなかなか甘えないからね。いい機会だろう、ロランも久しぶりに屋敷から出ていい気分転換にもなるだろうし。」

「なかなかお仕いすることを賜うことが出来ずに落ち込んでおられましたよ?」

「仕方ないでしょ?学園は融通が効かないんだよ、こういう時でしかね。」

「ロラン様も心配なのです、本当にこの薬を飲まれるのですか?」

マーサは怪しげに光る紫色の液体が入った小瓶を手に不安げに眉を顰める。

「ただの毛生え薬だよ、長い方がドレスに合うでしょう?」

「魔術にお詳しいのは結構ですがあまり無茶をなさらないでくださいな。」

返事の代わりとでも言うように微笑む。

「楽しい舞踏会で終わるといいけれど…」

本来のストーリーであればヒロインのクリスティーナとアルベルトが急接近するはずのイベントでふたりがゴシックな会場で雰囲気良く踊る以外は何も起こらないはずなのだ。


(悪役令嬢であり主人公の婚約者でもある私がアルベルトと入場することになっているけどクリスティーナが現れたらよくある転生モノらしく後ろに下がろう。)


「今年の仮面舞踏会は役者が勢揃いだね…本当に楽しみだ。」




仮面舞踏会 当日

アルベルト第二王子とダリア公女が共に入場する。

「何か企んでるんじゃないだろうな?」

「学園が執り行う舞踏会とはいえ公的な場ですよ?自重しますとも。」

「どうだかな、お前はいつも突拍子なことをするから。」

アルベルトの手を取りながらダリアは小さく笑みを浮かべると

「久しぶりに舞踏会で着飾ったのですから感想を聞かせてくださいな?」

腰まで伸びたロイヤルブルーの髪は美しく飾られ、髪の色とお揃いのドレスは金の装飾が施されていた。
騎士を易々と切り伏せるとは思えないほど線の細い体は彼女が女であることを物語っていた。
人々は彼女を<戦乙女ワルキューレ>と呼ぶがアルベルトにはイタズラ好きの妖精にしか見えなかった。
満ちては引いていく波のように彼女の心が不規則に思えた。
だが彼女が見つめているのはただ一点のみであることもアルベルトには見抜いていた。
突拍子なことをするのも、無茶なことをするのも…
時には誰よりも冷酷になり、平気で手を汚そうとする。

そこまでして一体誰を助けたいというのか。



彼女の目に写る唯一の存在を知りたい…



𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

薔薇の令嬢はやっぱり婚約破棄したい!

蔵崎とら
恋愛
本編完結済み、現在番外編更新中です。 家庭環境の都合で根暗のコミュ障に育ちましたし私に悪役令嬢は無理無理の無理です勘弁してください婚約破棄ならご自由にどうぞ私ちゃんと手に職あるんで大丈夫ですから……! ふとした瞬間に前世を思い出し、己が悪役令嬢に転生していることに気が付いたクレアだったが、時すでに遅し。 己の性格上悪役令嬢のような立ち回りは不可能なので、悪足掻きはせず捨てられる未来を受け入れることにした。 なぜなら今度こそ好きなことをして穏やかに生きていきたいから。 三度の飯より薔薇の品種改良が大好きな令嬢は、無事穏便な婚約破棄が出来るのか――?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。 なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。 超ご都合主義のハッピーエンド。 誰も不幸にならない大団円です。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...