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【第1章】
『純情なヤクザ』
しおりを挟むまさかのヤクザ。
このご時世では法律でグルグル巻きなのだろうが、生をその場で見てしまうと何もできない。住む世界が違う。
「いい年こいた大人が雁首揃えて……たったひとりの女の子に温かい言葉もかけてやれんのか!! 情けのぅて涙が出てくるわ!!」
「うっ……」
「誰かひと言でも、嬢ちゃんの面ァ見たか! 見てみぃ……」
男……金井が歯を軋ませながら、叫ぶ。
「こんなに泣いとるやないか!!」
……え?
泣いていた?
そう言われて、初めて澪は自分が涙を流していることに気がついた。
緊張で気を張っていたから、分からなかった。
涙なんて……お母さんが悲しむ……
「もうええんや! 泣いたってええんや!!」
パーソナルスペースというものがない金井が、澪の小さな肩に手を置く。
「泣いて泣いて……感情爆発させたらええんじゃ! そしたら、きっとお袋さんも安心する!」
「……」
「まぁ……このまんま泣いてもらっても構わないんやが……早う連れて来い言われとるンでなァ」
金井は何か急いでいるようだった。
「急かすつもりはない。せやが、澪ちゃんは新居に行かなアカン。支度……できるか?」
究極の質問がやってきた。
ヤクザが自分を引き取るというのだ。
しかも、事情も何も分からないまま。
こんなの、危ない話しに決まっている。
だが――この親戚たちと一緒に居ても意味は無い。
「ワシが信じられんのも分かるが……」
「いいわ。行く」
親戚たちが異議を唱えようとするが、壁際で失神している叔父を見ると……何も言えない。
「ホンマか! ほな、準備してくれ。ワシはこのボケナス共とちょいと話しがあるんでな」
自室にて旅支度をする。
支度と行っても、学業に必要な道具や制服、それと私服と好きなマンガ……それくらい。
きっと、もうこのアパートには戻ってこないのだろうという確信めいたものがあった。
しかし、迷いはない。
元から頼るアテのない身の上。
舌舐めずりする叔父よりも、少なくともあの金井とかいうヤクザの方がマシに見えた。
鞄とリュックに物を詰め込み、和室に戻る。
「準備終わりました」
「おおっ! ほな、行きましょ!」
傷だらけのヤクザに案内されながら、家から出て行く。
残った親戚一同は、まるで地獄の沙汰を下されたかのような陰鬱な状態になっていた。
大方、もしも通報したらどんな目に遭うのかなど、脅されたのであろう。
ガチャリとドアノブを回し、外に出る。
夏の終わりを感じる涼しい風が、なんとも心地よい。
「車ァ待たせとりますンで」
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