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【第1章】
『金井組長』
しおりを挟む「……いいですよ」
「じゃあ……失礼します」
のしのしと男は畳を歩く。
モーゼのごとく親戚たちが道を開け、男は遺影と線香立てしかない霊前に座った。
「お疲れ様でした。あとはワシらに任せて、ゆっくりと休んでつかあさい」
男は背筋を伸ばし、礼儀正しく正座。
線香に火を灯して、灰に刺し合掌をした。
数十秒が数分にも思える。
その間に、声を発することができた者はいない。
「……南無阿弥陀仏」
男が座布団から降りて、座ったままくるりとこちらを向く。
それだけで、親戚たちはギョッとしたのであった。
「ワシは今日、和田澪様の件で参りやした。直系血族である者の意向により、澪さんの今後はワシが責任を持って面倒を見ます」
どよめきが起こる。
と――
「だ、誰がお前みたいなチンピラに!」
あの叔父だった。
丁寧な男に向かってツバを飛ばしながら、立腹。
「書類でも何でも持ってきて、証明して見せろ! それまで俺が澪ちゃんを預かる」
「ですから、今すぐにでもこちらで手続きをいたしますので……」
「ええい、埒が明かない……警察に通報するからな!」
叔父がスマホを取り出し、一一〇番のボタンを押す――
スッ……
「オンドレ……」
男が立った。
叔父よりも背が高く、見下ろされる形で叔父は先ほどまでの勢いを失ってしまった。
「ワレェ……下でに出てみれば、図に乗りよってゴラァ……」
「あ、あの……」
「オドレも灰にしたろかァ!? ゴルァ!!」
男が何をしたのか?
叔父の顔面ド真ん中に、思い切り蹴りを見舞ったのである。
鼻が砕ける『ベキョッ』という音と共に、人間が宙を舞う。
ゴシャァ!!
「ぶがぁ……」
叔父が壁に叩きつけられ、そのまま気を失った。
下を向いている顔からは、鮮血がボトボトと落ちていた。
「殺すぞゴラァ!! アァ!?」
澪は悟った。
嗚呼、コレがこの名も知らない男の本性。
霊前での丁寧さは、必死に取り繕った体裁なのだと。
「ウジ虫がわめきよって……ったく」
もう無理をしなくてよいと判断したのか、男は親戚たちをぐるりと見渡して牽制をした。そして親指で自分を指さし、こう告げる。
「ワシは金井猛! 金井組の組長や!! 文句があったら拳でかかってこいや!!」
誰もかかってくるワケがない
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