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【第一章】チューニング
エンジェルフォール
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「小娘、どうやってあの女を呼んだ?」
ずしりずしりとこちらへと近づき、トカゲ男は私に問いかける。
その一歩一歩がグラウンドに深く痕跡を残し、その一歩一歩が地球そのものを遥か深い地点で振動させているように思えた。揺れる尻尾はまるで何かの冗談のようだ。
「だから知らないって……」
死の恐怖に締め上げられた喉から、私は振り絞るようにそう答える。
「不合理なんだよ。奴が〝ここ〟から視認できていること自体が」
トカゲ男はナイフで背後のQを指し示す。
「知らない! 私は何もしてない! だから殺さないでよ! 何の関係もないじゃん! 二人だけでやっててよ! バカ! 頭使えっ!」
不条理な死に対し、私は断固抗議する。しかし私は言い終わってからハッとする。言い過ぎた。これはもう殺されてしまうかもしれない。
「あー、いやいや、バカは言い過ぎました。でも言いたくなる気持ちもわかるでしょ? だって私は何もしてないのに殺されそうになってるんですもん。いいですか? 私はちっちゃい小動物を探しにここに居たんです。そしたらQが突然現れて、話をしてただけなんですよ。確かに授業はサボってたし、校長先生にもちょっとだけ失礼なことも言いました。だからそれについては真剣に反省してます。ごめんなさい。でも殺すほどのことじゃないと思いませんか?」
トカゲは意外にも私の主張を最後まで静かに聴いていた。思考力がないわけではないのだ。
巨大な口がゆっくりと開く。
「小娘、お前の言わんとすることはわかる」とトカゲ。「しかしな、お前はもう俺のこの姿を見ちまったんだよ。これは途中では止められない種類のことなんだ。お前は、俺やあの女を見れてしまっている時点で〝こちら側〟に含まれてる。そしてそれは致命的に常軌を逸している。だから俺はお前を〝無かったこと〟にしないといけない。初めから〝無かったこと〟に。そうしなければこれから何もかもが狂う。何もかもだ。これから一秒たりともお前をここで生かしてはおけない」
「……知らないよ。何もかも狂わせとけばいい。初めからこの世界に確かなことなんてひとつも無いじゃん。私一人の命で世界平和にでもなんのかよ。そんなに安っぽい世界なの?」
「悪いな」そう言ってトカゲはゆらりとナイフを天へと掲げる。「お前が偶然〝こちら側〟に辿り着いた。ただそれだけのことだ。お前は何も悪くないさ」
しばしの憐れみのまなざしの後、トカゲの眼光はある一瞬のうちに殺人的に強くなり、そしてそのまま、彼のナイフを持つ手は私へと真っ直ぐに振り下ろされた。私は目をつぶり、断絶の外側でナイフが風を叩っ切る音を聞いた。
ずしりずしりとこちらへと近づき、トカゲ男は私に問いかける。
その一歩一歩がグラウンドに深く痕跡を残し、その一歩一歩が地球そのものを遥か深い地点で振動させているように思えた。揺れる尻尾はまるで何かの冗談のようだ。
「だから知らないって……」
死の恐怖に締め上げられた喉から、私は振り絞るようにそう答える。
「不合理なんだよ。奴が〝ここ〟から視認できていること自体が」
トカゲ男はナイフで背後のQを指し示す。
「知らない! 私は何もしてない! だから殺さないでよ! 何の関係もないじゃん! 二人だけでやっててよ! バカ! 頭使えっ!」
不条理な死に対し、私は断固抗議する。しかし私は言い終わってからハッとする。言い過ぎた。これはもう殺されてしまうかもしれない。
「あー、いやいや、バカは言い過ぎました。でも言いたくなる気持ちもわかるでしょ? だって私は何もしてないのに殺されそうになってるんですもん。いいですか? 私はちっちゃい小動物を探しにここに居たんです。そしたらQが突然現れて、話をしてただけなんですよ。確かに授業はサボってたし、校長先生にもちょっとだけ失礼なことも言いました。だからそれについては真剣に反省してます。ごめんなさい。でも殺すほどのことじゃないと思いませんか?」
トカゲは意外にも私の主張を最後まで静かに聴いていた。思考力がないわけではないのだ。
巨大な口がゆっくりと開く。
「小娘、お前の言わんとすることはわかる」とトカゲ。「しかしな、お前はもう俺のこの姿を見ちまったんだよ。これは途中では止められない種類のことなんだ。お前は、俺やあの女を見れてしまっている時点で〝こちら側〟に含まれてる。そしてそれは致命的に常軌を逸している。だから俺はお前を〝無かったこと〟にしないといけない。初めから〝無かったこと〟に。そうしなければこれから何もかもが狂う。何もかもだ。これから一秒たりともお前をここで生かしてはおけない」
「……知らないよ。何もかも狂わせとけばいい。初めからこの世界に確かなことなんてひとつも無いじゃん。私一人の命で世界平和にでもなんのかよ。そんなに安っぽい世界なの?」
「悪いな」そう言ってトカゲはゆらりとナイフを天へと掲げる。「お前が偶然〝こちら側〟に辿り着いた。ただそれだけのことだ。お前は何も悪くないさ」
しばしの憐れみのまなざしの後、トカゲの眼光はある一瞬のうちに殺人的に強くなり、そしてそのまま、彼のナイフを持つ手は私へと真っ直ぐに振り下ろされた。私は目をつぶり、断絶の外側でナイフが風を叩っ切る音を聞いた。
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