パン屋の初恋 彼女が楽しく暮らすために今日も私はパンを焼く

千暁

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8.私の想いを伝えた

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「ジュリさん、私と結婚前提で付き合ってくれませんか?私はジュリさんをうちの母のようなよそ者差別をする人から守りたいし、必ずあなたを幸せにします。」

私がそう言うと、

「…ごめんなさい…結婚なんて…出来ません…セタさんの生活を犠牲にするなんて…」

ジュリさんは苦しそうな声で言った。

まぁそうだよな、いきなり言われてOKされるとは自分だって思ってはいない。
思ったより早かった母の登場で、私は計画を変更した方がいいと判断した。昨日は一緒に暮らしているうちに少しずつ仲良くなれたらと思っていたが、ここは小さな街でよそ者に厳しい人も多く、うちの母のような心無い言葉をかける人も多い。だからこそ、私はあなたの味方でありたいし守りたいという意思をはっきりと見せなければとさっきの不躾な訪問を受けて思い、もう一足飛びに結婚申し込みまでした。もういっそのこと嫌がられるギリギリのラインまで攻めていきたい。

「犠牲なんて思っていないですよ。会話をしたのは昨日が初めてだったけれど、今までどんなに大変な仕事をしてきても笑顔を忘れず暮らしていることだって知って、私はあなたにどんどん惹かれている。私自身もあなたと結婚することで幸せになれると思っているから言ったんです。私もジュリさんもパンが好きでお店を良くしたいと考えているし仕事面でもきっといいパートナーになれる。あなたが笑顔で過ごせるように、私の母のような遠慮のない人間からだって、大切な家族として、妻として守りたい。」

私は想いが届いてほしいと念じながら俯く彼女に寄り添うように語り続けた。

「もちろん今すぐ結婚しようとは言わないし、ジュリさんにとってもっと素敵な人が現れたらその人と付き合うのもいいと思う。でもとりあえず今はジュリさんの時間を少しだけ私にくれませんか?私ははもっともっとジュリさんを知りたいです。」

「でもキスや体の接触が苦手なこともなんとなくわかっているから安心して。今までの店主のようなことは『絶対に』しない。絶対に。」

「あっ…」

小さく声をあげて彼女が私の顔を見た。

「…絶対に、なんて言わないで…。まだ短い時間しか一緒にいないけれど私もセタさんに惹かれています。…だからッ」

そう言うと彼女は性急に私の首を両手引き寄せ、私の唇を軽く食んだ。
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