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出会い編
8.真実
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「私とアレは」
唐突に始まった私語り。
どうしたと目を見張った俺と、ああ打ち明けるんだねと冷静な尊。
「好き合っていた訳ではない。ある日社内の忘年会で前後不覚にまで酔った日があった。その翌日裸で同じベットにいたのがアレだ。その後妊娠したと詰め寄り、上司の娘だった事もあって断れずに結婚した。アレは兎も角生まれてくる尊に罪は無い。私自身に結婚願望も無かったのもある」
ほぼノンブレスで垂れ流すように語られた事実。ってか子供に聞かせる話じゃねぇ!慌てて尊を見れば、当の本人は知ってた風に冷めた目で鼻を鳴らした。
「ていうか父さんが前後不覚になったのって祖父さんが一服盛ったかららしいよ。自慢気に母さんが友達に話してたし」
刑事案件!
てか子供の前で何て事話してんだあのアマー!!
「心配しないでよおじさん。その話してたの僕が幼稚園の時だから。きっと話しても理解出来ないか聞こえてないって思ってたんでしょ」
そして何処迄も冷めてる小学生……。これじゃどっちが大人だかわかりゃしねぇ。
取り敢えず言えるのは「響也に似て良かったね」だ。言わないけど。
「本当。僕はあの人に似なくて良かったよ」
本人が言った!!
反面教師の極み。それの生末が響也か。
「祖父さん共々訴えた方が良くない?」
んん!俺も思ったけど小学生が冷静に言う事ではない!
「必要ない。既に終わった話だ。尊は辛いかもしれないが私は尊に会えたことは良かったと思っている」
「ん」
冷静に、でも見る人が見れば慈愛が籠っているとわかる目で尊を見る響也と、素っ気無い返しの様でいて照れている尊。どっちも尊い。
ああ、そうか。
「“尊”ってもしかして響也が考えた?」
「ほう。良くわかったね」
ははっ。やっぱり。響也も尊を“尊い”存在だって思ったんだ。言っちゃ失礼だけどヒステリックなあの人からは程遠い名前だと思ったんだよな。
「でもさ。ならあの日は何であんなに素っ気無かったんだ?」
ポツリと漏らした。漏らした後で「しまった!」って顔をしても遅い。
遅いのに、響也と尊はキョトンとした後で、どこまでも冷静な顔をしていた。
「「仕事の方が大事」」
2人揃った返し。それに響也の「だろう」が続く。
響也は兎も角、まだ小学生の尊に仕事の大切さがわかるもん?疑問に思った答えは直ぐに出る。
「だって父さんが仕事を真面目に頑張ってくれてるから僕は大学付属の小学校に通えているし、衣食住にも困らない」
お、おぅ。頭の良いお育ちであらせられました。え?普通の小学生って頭いい学校行っただけでこんなに大人より大人になるもんなの??
「父さんと別れた後のあの人は酷いよ。実家に頼りきりで家事も仕事もしない。そのうえ直ぐに新しい男を連れてきて僕を置いて出て行った。残された祖父さん一家は僕を腫れもの扱い。だから僕の方から出てきてやったんだけど……。実はちょっと父さんにも受け入れられないかもって不安だったんだ……」
ものすっごく軽蔑を顕わにして語ったあまりに酷い内容に、でも最後の方の捨てられた子犬感に俺はぐっと胸を詰まらせた。
「響也はそんなことしない!なんなら俺んち住んだって構わない!」
思わずバッと立ち上がりギュッと抱き締めに行った。そうすればオズオズと首に回される小さな手。
「おじさん……。ありがとう。もう苗字も違う僕だけど、父さんは一緒に暮らしてくれるって言ってくれたから大丈夫だよ」
殊勝な言葉を紡ぐ尊。
俺は勿論この時の尊の顔は知らない。抱き締めている俺からは見えないから。
だから言葉とは裏腹に無表情な瞳に狩りをする猛獣の瞳で嗤っていた事も。
俺にわからない様に響也に親指突き上げていた事も。
そして響也が目元を赤くして狼狽えていた事も。
俺は知らない。
その後、尊の親権を響也に移すって話が出ている。とはいえ親権の変更は容易ではないと聞く。出来たとしても時間が掛かるだろう。
取り敢えず苗字は違うが学校には事情を説明し、優秀な成績を収めている尊の心情を優先して受け入れて貰っている。苗字が短期間にコロコロ変わるのは子供達の心象に良くないんじゃとは思ったが、尊曰く「そんな狭量な友人は持ち合わせがない」だそうだ。格好良いな。
で、俺はというと。
家族水入らずを邪魔するのは教育上も良くないよな。と思っていたら……。
「食育って大事だと思う。僕はおじさんの家の教育方針に感銘を受けたから是非いっぱい家に来て欲しい」
と力説されたので今じゃ第二のパパを自認してる。
だって素直な尊可愛い。尊と一緒に料理する響也も可愛い。
普段は冷静沈着クールな男前が慈愛の目をするのは卑怯だと思います。
あとその後嬉しそうにはにかんだ笑みを俺に向けるのはもっと卑怯だと思います。
あ゛――――!!ちゅーしてぇなこの野郎!
そう思う俺はもう末期かもしれない。
唐突に始まった私語り。
どうしたと目を見張った俺と、ああ打ち明けるんだねと冷静な尊。
「好き合っていた訳ではない。ある日社内の忘年会で前後不覚にまで酔った日があった。その翌日裸で同じベットにいたのがアレだ。その後妊娠したと詰め寄り、上司の娘だった事もあって断れずに結婚した。アレは兎も角生まれてくる尊に罪は無い。私自身に結婚願望も無かったのもある」
ほぼノンブレスで垂れ流すように語られた事実。ってか子供に聞かせる話じゃねぇ!慌てて尊を見れば、当の本人は知ってた風に冷めた目で鼻を鳴らした。
「ていうか父さんが前後不覚になったのって祖父さんが一服盛ったかららしいよ。自慢気に母さんが友達に話してたし」
刑事案件!
てか子供の前で何て事話してんだあのアマー!!
「心配しないでよおじさん。その話してたの僕が幼稚園の時だから。きっと話しても理解出来ないか聞こえてないって思ってたんでしょ」
そして何処迄も冷めてる小学生……。これじゃどっちが大人だかわかりゃしねぇ。
取り敢えず言えるのは「響也に似て良かったね」だ。言わないけど。
「本当。僕はあの人に似なくて良かったよ」
本人が言った!!
反面教師の極み。それの生末が響也か。
「祖父さん共々訴えた方が良くない?」
んん!俺も思ったけど小学生が冷静に言う事ではない!
「必要ない。既に終わった話だ。尊は辛いかもしれないが私は尊に会えたことは良かったと思っている」
「ん」
冷静に、でも見る人が見れば慈愛が籠っているとわかる目で尊を見る響也と、素っ気無い返しの様でいて照れている尊。どっちも尊い。
ああ、そうか。
「“尊”ってもしかして響也が考えた?」
「ほう。良くわかったね」
ははっ。やっぱり。響也も尊を“尊い”存在だって思ったんだ。言っちゃ失礼だけどヒステリックなあの人からは程遠い名前だと思ったんだよな。
「でもさ。ならあの日は何であんなに素っ気無かったんだ?」
ポツリと漏らした。漏らした後で「しまった!」って顔をしても遅い。
遅いのに、響也と尊はキョトンとした後で、どこまでも冷静な顔をしていた。
「「仕事の方が大事」」
2人揃った返し。それに響也の「だろう」が続く。
響也は兎も角、まだ小学生の尊に仕事の大切さがわかるもん?疑問に思った答えは直ぐに出る。
「だって父さんが仕事を真面目に頑張ってくれてるから僕は大学付属の小学校に通えているし、衣食住にも困らない」
お、おぅ。頭の良いお育ちであらせられました。え?普通の小学生って頭いい学校行っただけでこんなに大人より大人になるもんなの??
「父さんと別れた後のあの人は酷いよ。実家に頼りきりで家事も仕事もしない。そのうえ直ぐに新しい男を連れてきて僕を置いて出て行った。残された祖父さん一家は僕を腫れもの扱い。だから僕の方から出てきてやったんだけど……。実はちょっと父さんにも受け入れられないかもって不安だったんだ……」
ものすっごく軽蔑を顕わにして語ったあまりに酷い内容に、でも最後の方の捨てられた子犬感に俺はぐっと胸を詰まらせた。
「響也はそんなことしない!なんなら俺んち住んだって構わない!」
思わずバッと立ち上がりギュッと抱き締めに行った。そうすればオズオズと首に回される小さな手。
「おじさん……。ありがとう。もう苗字も違う僕だけど、父さんは一緒に暮らしてくれるって言ってくれたから大丈夫だよ」
殊勝な言葉を紡ぐ尊。
俺は勿論この時の尊の顔は知らない。抱き締めている俺からは見えないから。
だから言葉とは裏腹に無表情な瞳に狩りをする猛獣の瞳で嗤っていた事も。
俺にわからない様に響也に親指突き上げていた事も。
そして響也が目元を赤くして狼狽えていた事も。
俺は知らない。
その後、尊の親権を響也に移すって話が出ている。とはいえ親権の変更は容易ではないと聞く。出来たとしても時間が掛かるだろう。
取り敢えず苗字は違うが学校には事情を説明し、優秀な成績を収めている尊の心情を優先して受け入れて貰っている。苗字が短期間にコロコロ変わるのは子供達の心象に良くないんじゃとは思ったが、尊曰く「そんな狭量な友人は持ち合わせがない」だそうだ。格好良いな。
で、俺はというと。
家族水入らずを邪魔するのは教育上も良くないよな。と思っていたら……。
「食育って大事だと思う。僕はおじさんの家の教育方針に感銘を受けたから是非いっぱい家に来て欲しい」
と力説されたので今じゃ第二のパパを自認してる。
だって素直な尊可愛い。尊と一緒に料理する響也も可愛い。
普段は冷静沈着クールな男前が慈愛の目をするのは卑怯だと思います。
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あ゛――――!!ちゅーしてぇなこの野郎!
そう思う俺はもう末期かもしれない。
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