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恋人編
17.親心
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廊下に冬の冷たい空気が手足を冷たくさせる。
俺の告白に、母さんの背中が小さく縮んだ様に見える。
「母さん」
呼び掛けにはビクリと震わせ、でも何も言わない。
出方を伺っていたけど、母さんは向き合う勇気が出なかったらしい。
「私……ごめんなさいね、ごめんね……頭が、混乱してて」
そう言って背中を向けたまま去ってしまった。
やっぱり無理なのか。田舎じゃマイノリティは更に駆逐される。
特にうちは兄貴が早々に結婚して子供が出来たから余計に考えたことも無かったろうし。
そうして独りになった廊下で、冬の冷たさがいや増した気がした。
重い足取りで居間に戻ると響也が父さんと囲碁で盛り上がっていた。初めての響也だが持ち前の頭の良さで直ぐに父さんの相手が出来るようになっていた。父さんも最初の威嚇なんて無かったかのように朗らかだ。
母さんは居間には来てないのか。
「あれ?尊は?」
尊もいないな。
「うん?尊ならきみ江の手伝いするって探しに行ってるぞ」
父さんが次の手に悩みながら言った。盤面から目を逸らさない所を見るに負けてるらしい。
「そう……」
俺も尊を探しに行こうかと振り返った。
「大丈夫だよ。尊に任せて侑真は落ち着くと良い」
どうやら響也には俺の不安が丸わかりだったようだ。何時もより深めの笑みは、きっと俺を安心させる為のもの。
「ん……」
何があったか聞かないでくれる優しさに、俺は思わず響也の背に背を預けた。
無意識に出た甘え。
後を向いていてわからないが、この時、響也は一瞬目を見開いた後でとても愛おしい気持ちに溢れた顔をしていたらしい。
後に父さんから聞いた話だが、この時には父さんは何となく俺と響也の関係を察していたそうな。
「……孫はもう3人もいる。侑真は気にせず思うままに生きなさい」
でもそんな事を知らない俺は、ただこの時の父さんが本当に父親なんだなって思えて、少し涙した。
男を好きなままの息子で良いですか。
口に出ない言葉は噛み締めた唇の奥で消えた。
2月の三連休。休みの前日、尊の小学校終わりから直ぐに来た実家。明日はもう帰る日だ。
このまま母さんに認められないまま終わるのか。
その不安は……。
ニコニコした母さんによって掻き消えた。
あれ?俺何に悩んでたんだっけ??
さっきまで不安に胸を締め付けられる思いで響也の背中の温もりを感じていたのに。それ自体が夢現だったと思わせるような朗らかさで母さんは外から戻って来た。しっかりと尊と手を繋いで。
対して尊はというと、響也とアイコンタクトで頷き、俺と視線が合うとグッと親指を突き出した。
本当に何があった。
「いんやだよぅ。もうこげなめんこい子が孫になるなんて思ってもみながった。侑真!絶対離すでねぇぞ!」
だから何があった。
母さんよ。ほんのついさっきぞ。拒絶を示して俺から逃げたのは。
もう一度尊を見るとしたり顔で頷いた。そしてもう一度親指をグッと上げた。
うん。取り敢えず尊が何かしたのはわかった。
……。うちの子が優秀過ぎて怖い……。
因みにその様子に父さんは笑っていたらしい。俺が見た時には盤面を真剣に睨んでいたけど。
何はともあれ俺の所も無事お付き合いの報告が出来た。大分ギリギリだったけど良しとしよう。
そこからは交流を深める意味も込めて尊は母さんにベッタリくっついて、響也は父さんの勝負を受けていた。むしろ俺が何もしてない感強い。
「今日は俺が夕飯作るよ」
居た堪れなくていそいそとキッチンに立った。
さて何を作ろう。田舎だけあって野菜は割と充実してる。魚は……お、ワカサギある。肉も有るし、よし。ハヤシライスとワカサギのマリネ、あとはサラダにしよう。母さんの料理は和食が多いからたまには良いだろ。
俺に料理を教えたのは母さんだ。「そいじゃお願いね」とあっさり丸投げして尊と戯れるのに夢中になっている。
父さんも響也との勝負に真剣になっていて俺の事忘れてないか?
誰も俺を気に掛けてくれなくて少しぶすくれていたけど、ふと目が合った響也が優しく微笑みを浮かべてくれたからもうそれで良いことにした。俺チョロいな。
食事も和やかにこれぞ田舎の家族団欒って感じで過ごし、次の日には惜しまれながらも帰宅の途についた。
だがな父さん母さん。俺より尊と響也が帰るのを惜しむのってどうなんだよ。ぐれるぞ。良い年こいた俺だけど。ぐれるぞ。
俺の告白に、母さんの背中が小さく縮んだ様に見える。
「母さん」
呼び掛けにはビクリと震わせ、でも何も言わない。
出方を伺っていたけど、母さんは向き合う勇気が出なかったらしい。
「私……ごめんなさいね、ごめんね……頭が、混乱してて」
そう言って背中を向けたまま去ってしまった。
やっぱり無理なのか。田舎じゃマイノリティは更に駆逐される。
特にうちは兄貴が早々に結婚して子供が出来たから余計に考えたことも無かったろうし。
そうして独りになった廊下で、冬の冷たさがいや増した気がした。
重い足取りで居間に戻ると響也が父さんと囲碁で盛り上がっていた。初めての響也だが持ち前の頭の良さで直ぐに父さんの相手が出来るようになっていた。父さんも最初の威嚇なんて無かったかのように朗らかだ。
母さんは居間には来てないのか。
「あれ?尊は?」
尊もいないな。
「うん?尊ならきみ江の手伝いするって探しに行ってるぞ」
父さんが次の手に悩みながら言った。盤面から目を逸らさない所を見るに負けてるらしい。
「そう……」
俺も尊を探しに行こうかと振り返った。
「大丈夫だよ。尊に任せて侑真は落ち着くと良い」
どうやら響也には俺の不安が丸わかりだったようだ。何時もより深めの笑みは、きっと俺を安心させる為のもの。
「ん……」
何があったか聞かないでくれる優しさに、俺は思わず響也の背に背を預けた。
無意識に出た甘え。
後を向いていてわからないが、この時、響也は一瞬目を見開いた後でとても愛おしい気持ちに溢れた顔をしていたらしい。
後に父さんから聞いた話だが、この時には父さんは何となく俺と響也の関係を察していたそうな。
「……孫はもう3人もいる。侑真は気にせず思うままに生きなさい」
でもそんな事を知らない俺は、ただこの時の父さんが本当に父親なんだなって思えて、少し涙した。
男を好きなままの息子で良いですか。
口に出ない言葉は噛み締めた唇の奥で消えた。
2月の三連休。休みの前日、尊の小学校終わりから直ぐに来た実家。明日はもう帰る日だ。
このまま母さんに認められないまま終わるのか。
その不安は……。
ニコニコした母さんによって掻き消えた。
あれ?俺何に悩んでたんだっけ??
さっきまで不安に胸を締め付けられる思いで響也の背中の温もりを感じていたのに。それ自体が夢現だったと思わせるような朗らかさで母さんは外から戻って来た。しっかりと尊と手を繋いで。
対して尊はというと、響也とアイコンタクトで頷き、俺と視線が合うとグッと親指を突き出した。
本当に何があった。
「いんやだよぅ。もうこげなめんこい子が孫になるなんて思ってもみながった。侑真!絶対離すでねぇぞ!」
だから何があった。
母さんよ。ほんのついさっきぞ。拒絶を示して俺から逃げたのは。
もう一度尊を見るとしたり顔で頷いた。そしてもう一度親指をグッと上げた。
うん。取り敢えず尊が何かしたのはわかった。
……。うちの子が優秀過ぎて怖い……。
因みにその様子に父さんは笑っていたらしい。俺が見た時には盤面を真剣に睨んでいたけど。
何はともあれ俺の所も無事お付き合いの報告が出来た。大分ギリギリだったけど良しとしよう。
そこからは交流を深める意味も込めて尊は母さんにベッタリくっついて、響也は父さんの勝負を受けていた。むしろ俺が何もしてない感強い。
「今日は俺が夕飯作るよ」
居た堪れなくていそいそとキッチンに立った。
さて何を作ろう。田舎だけあって野菜は割と充実してる。魚は……お、ワカサギある。肉も有るし、よし。ハヤシライスとワカサギのマリネ、あとはサラダにしよう。母さんの料理は和食が多いからたまには良いだろ。
俺に料理を教えたのは母さんだ。「そいじゃお願いね」とあっさり丸投げして尊と戯れるのに夢中になっている。
父さんも響也との勝負に真剣になっていて俺の事忘れてないか?
誰も俺を気に掛けてくれなくて少しぶすくれていたけど、ふと目が合った響也が優しく微笑みを浮かべてくれたからもうそれで良いことにした。俺チョロいな。
食事も和やかにこれぞ田舎の家族団欒って感じで過ごし、次の日には惜しまれながらも帰宅の途についた。
だがな父さん母さん。俺より尊と響也が帰るのを惜しむのってどうなんだよ。ぐれるぞ。良い年こいた俺だけど。ぐれるぞ。
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