上 下
4 / 50

4 出会い

しおりを挟む
「この子達は光生のお嫁さんだよ。」

 光生が物心つく前には父親がこの3人を家に連れて来た。Ω性は成長と共に一般のβ性から別れ出ると言われている為ある程度成長しなければ分からないものなのだが、一部例外がありごく稀にだが生まれながらにしてΩ性を判別できる事がある。そこに優秀な後継者を必要とする者達は目をつけた。産まれながらのΩ性の子供を後継者の伴侶として組織の中の職員や従業員の家族から募り抱え込む事だ。この子供達は後継者の伴侶として産まれながらの玉の輿が決定している為、親達も喜んで子供達に性判定を受けさせ募集に応じた。 
 
 光生の父親が連れて来た3人(羽織、まり、松花)もこうして集められたΩ性の妻候補だった。


 なんだかその日はいつもと違い、光生の両親は朝からそわそわしていた。普段開けていない部屋が開けられて掃除もされているし、屋敷内であちこち動き回ってはかくれんぼをしながらお手伝いと遊んでいた光生にはそんな慌ただしい家の中がなんとも不思議だった。
 
 母親に呼ばれて広間に行ってみれば、父と知らない子が3人いる。父が名前を紹介してくれて挨拶するためにそばに寄ったらどの子も皆んな良い匂いがする……
 初めて見る子達ばかりだけど、みんな優しそうで柔らかそうでなぜだか落ち着かないから光生は早く部屋から出たい様な、逆にここにずっと居たい様な変な感じに襲われた。まだ性タイプを理解しておらずα性としての性質も顕著には出ていなかった光生だが、妻候補達には少なからずの好意を抱いた。そして一人っ子の光生にとってはが何であるかよりも友達がやってきた、とただ純粋に喜んだ。

 皆んな同じ歳、今日からここに一緒に住むと父に言われれば小躍りするくらいにはしゃぎ出した光生とは逆に、妻候補の子達はおどおどし始め泣き出してしまった。この子達もまだまだ親が恋しい歳頃でこれは致し方ない事。親から離れて数日泣いていた子供達だが環境に慣れるのは早かった。一番最初に光生に近付き遊び始めたのは羽織だ。色んなおもちゃがあるプレイルームで楽しそうに羽織は光生と遊び出す。それを見ていたまりや松花も遊びに加わってくる。こうやって子供達の交流は始まった。

 預けられた妻候補の子供達は別に監禁されているわけではない。家族が会いたいと言えばいつでも会える様に家族も宿泊できる家族ルームまである程丁寧に扱われていた。そして御曹司と同じ生活環境、教育を与えられる。だから幼いうちからαの妻候補となる事は名誉な事だし、募集には応募が後を絶たなかった。

「いい匂い……」

 今日もいつもの様にクンクン、スンスンと光生は羽織の匂いを嗅ぐ。皆んないい匂いだけど、光生は一番羽織の匂いが好きだった。子供ながらに余りにもクンクン嗅ぐので、そういう行動は失礼になるからやめなさいと母親にお叱りを受ける程だった。

「こう君もいい匂い…ね?」

「うん。いい匂い。」

「ほんと!」

 Ωの方からもαの匂いは良いと感じる様で遊びながらお互いにクンクンと嗅ぎ合っている仲睦まじい姿も良く目撃される程、子供達の相性は良かった。
  

「はお君~こっちこっち!」

「待ってこう君…!速すぎだよ~」

 光生よりもまだ少し小さい羽織。足も光生の方が速くていつも光生のお気に入りの場所に行く時には羽織は置いてきぼりだ。

「まりちゃんも、松花ちゃんもお昼寝するって~こう君も帰ろう?」

 まだ幼稚科のΩ達は体力も無く午睡をする子がほとんどだが、羽織は時々光生について回って相手をしていた。

「僕、お昼寝いらない!はお君に良いもの見せてあげるから!おいで!」
 
 一生懸命走りついていこうとする羽織だが、既に息が上がって顔が赤い。それでも一人で屋敷に帰ろうとはせずに光生に必死について来た。

「ほら!!おいで!こっち!」

 少し小高くなっている岩の上から光生が腕を伸ばす。すでに肩で息をしている羽織はやっとの思いで光生の手に掴まって上まで登り切る。

「ほら!ここ!もう少ししたら見れるよ、多分!」

「……こう君何があるの?」

 光生の隣にちょこんと座って言われた通りにじっとしている羽織。狭い岩の上だから二人でくっついて座らないと中々に不安定な所。

「あの木の枝、見てて!」

「??」

 疲れた体を休めながら光生が指差す枝をじっと見つめる。

 ピチュチュ、ピチュチュ…突然のビックリする様な鳥の声。どうやら光生が指差す枝のどこかに鳥の巣が有るらしかった。羽織はすぐに見つけられなくて、首や体を動かしてみてはなんとか声の主を探そうとしてる。

 羽織のそんな一生懸命な姿が可愛いと思ってしまう。ちょっとした仕草や表情が…光生は男の友達に可愛いなんて、こんな気持ちになるなんて不思議だと思ったけど全然嫌じゃなかった……
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

噂の不良は甘やかし上手なイケメンくんでした

BL / 連載中 24h.ポイント:9,330pt お気に入り:1,364

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:319pt お気に入り:134

異世界召喚されましたが、推しの愛が重すぎます!

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:258

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,008pt お気に入り:3,807

王太子の婚約者

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,198pt お気に入り:57

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,797pt お気に入り:2,186

処理中です...