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14 あの日 1
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その日も高等科校舎の会議室でいつもの様に忙しなく学生達がそれぞれの仕事をしていた。
「なぁ、光生こっちの書類任せてもいいか?」
高校三年の卒業を待つ間に次期生徒会引き継ぎ書類を作成していたのは、幼稚科から一緒の忍城だ。彼は会計を一気に引き受けていて最後の確認という所。忍城もα性で来年結婚する番のΩも決まっている。
「ん…」
他の書類に目を落としながら、視線も向けずに光生は忍城から会計決算用紙を受け取る。
「何?そっち?社関係か?」
「急ぎだそうで、目を通せってさ。」
「どれどれ?」
戯けた様に覗きにくる忍城。社外秘の物なんてここに持ってくるわけはないのだが、まあそれでも部外者に見せる様な物でもない、から覗きに来た忍城の顔をバシッと掌で受け止めて、ググッと押し返す。
「ヌォォ…」
と言う謎の唸り声を上げて、顔面だけで突撃してこようとする忍城に負けじと押し返してを繰り返していたら、後輩に泣きつかれてしまった……
「あー!先輩達!遊ばないで、手を動かしてください!早くデータ確認してプリントアウトしないと、今日一斉停電ですよ?これ終わらせないと休日返上ですよ?俺、嫌ですよ~休日まで学校に来るの!」
ただでさえ忙しい引き継ぎ時期。なのにこの時期に電気系統の安全調査が入った……!
これを聞いた後輩達は全員、終わった……と絶望を口にした程生徒会業務が終わらない事を覚悟したらしい……彼女持ちやパートナー持ちなんかは尚更折角の休日を潰してまで不毛な作業をしたくないんだ…
「分かってるって。俺も光生も休日返上は嫌なんだよ。お前らと一緒。後は光生の確認作業が終わって、そっちの確認とデータ保存とプリントアウトで終わり!光生がこっちに目を通している間にそっち、確認するからサクサクプリントアウトしな!」
忍城は時に子供みたいな絡みをして来るが、仕事は早く的確であっちの方は任せておける。光生の方も自分の分はプリントアウトだけで、プリンターの空くのを待っていたんだ。その間に社から回って来た回覧に目を通していた。
「うぉぉぉぉ…!?」
何やら今度はプリンターの方から謎の奇声が聞こえて来る。気合を入れたところで機械のスピードは上がらないんだが、どうしても早く終わらせたいらしい……
「いや、若いね~」
なんて忍城は揶揄いながら、その目はディスクトップから離さず次々と後輩にOKを出して行く。停電予告5分前には電気機器を使う全ての作業が終わってプリントをファイルにまとめる作業に入った。
「そう言えばはーちゃんは?」
はーちゃん、忍城は羽織を昔からこう呼ぶ。忍城も幼い頃から羽織達の同級で、αとΩである事である程度の距離を保ってだが仲良くしている級友の一人でもあった。
「…今日は一人だが、待っているって言うからな。空き教室か、談話室…カフェテリア、は営業休止になるか…?」
忍城に聞かれて羽織の所在が気になり出した光生…あれこれと、何をしているのかと思い当たることを口にする。
「プククッ……」
突然忍城が笑い出す。
「何…?」
どうしたんだ、コイツ?と言う不審な目を向けていれば、もう堪らんと言う様に大笑いに変わって行った。
「アハハ…!ダメだ…!くるし~~、お前普段余計なことは言わない奴なのに、はーちゃんの事になると頭の中のものがダラダラ流れて来るのな…!」
ヒッヒッと身体を震わせながら忍城はこみ上げて来る笑いと格闘中……
「お前な……」
社の書類に目を落とそうとしていたその格好のまま光生も固まる。今迄自覚が無かったわけじゃないが…改めてそこを突かれるとそんなにおかしな事か?と詰め寄って問いただしたくなる衝動にも駆られる。
「天下の天翔の御曹司もそこを突かれると恥ずかしいか?」
クックッとまだ笑ってる……忍城よ、お前そんなに笑い上戸だったか?
「仕方ないだろう?お前だって自分の番にはこうだろう?」
忍城にも雪と言うΩの番がいる。歳が一つ上で既に家庭に入っている感じ。籍も入っていて式を来年あげるそうな。
「俺はいつも周りに見せてるから新鮮味はないだろ?こう言う新発見は普段見られない奴からの方がインパクトがあるんだよ。」
あ~雪にいい土産話しが出来たなんて言いながら、まだ震えてやがる……
既に夕刻、掲示されていた様に全館の電気は落とされ夕日が沈むのにはまだ早いが室内は薄暗くなって来ていた。
「なぁ、はーちゃんこっちに呼ぶか、お前もう行ったら?こっちは後片付けと施錠だけだし、今日は早急に帰れって言われてたしな。このままここに居たらまた面倒事頼まれるぞ?」
「ん~そうするか……」
日が沈む前に校舎を出なければ手探りでの校舎からの脱出劇になるのだ。
手早く荷物を纏めていたその時に、羽織に付けていた護衛の一人が物凄い勢いで走り込んできた…!
「なぁ、光生こっちの書類任せてもいいか?」
高校三年の卒業を待つ間に次期生徒会引き継ぎ書類を作成していたのは、幼稚科から一緒の忍城だ。彼は会計を一気に引き受けていて最後の確認という所。忍城もα性で来年結婚する番のΩも決まっている。
「ん…」
他の書類に目を落としながら、視線も向けずに光生は忍城から会計決算用紙を受け取る。
「何?そっち?社関係か?」
「急ぎだそうで、目を通せってさ。」
「どれどれ?」
戯けた様に覗きにくる忍城。社外秘の物なんてここに持ってくるわけはないのだが、まあそれでも部外者に見せる様な物でもない、から覗きに来た忍城の顔をバシッと掌で受け止めて、ググッと押し返す。
「ヌォォ…」
と言う謎の唸り声を上げて、顔面だけで突撃してこようとする忍城に負けじと押し返してを繰り返していたら、後輩に泣きつかれてしまった……
「あー!先輩達!遊ばないで、手を動かしてください!早くデータ確認してプリントアウトしないと、今日一斉停電ですよ?これ終わらせないと休日返上ですよ?俺、嫌ですよ~休日まで学校に来るの!」
ただでさえ忙しい引き継ぎ時期。なのにこの時期に電気系統の安全調査が入った……!
これを聞いた後輩達は全員、終わった……と絶望を口にした程生徒会業務が終わらない事を覚悟したらしい……彼女持ちやパートナー持ちなんかは尚更折角の休日を潰してまで不毛な作業をしたくないんだ…
「分かってるって。俺も光生も休日返上は嫌なんだよ。お前らと一緒。後は光生の確認作業が終わって、そっちの確認とデータ保存とプリントアウトで終わり!光生がこっちに目を通している間にそっち、確認するからサクサクプリントアウトしな!」
忍城は時に子供みたいな絡みをして来るが、仕事は早く的確であっちの方は任せておける。光生の方も自分の分はプリントアウトだけで、プリンターの空くのを待っていたんだ。その間に社から回って来た回覧に目を通していた。
「うぉぉぉぉ…!?」
何やら今度はプリンターの方から謎の奇声が聞こえて来る。気合を入れたところで機械のスピードは上がらないんだが、どうしても早く終わらせたいらしい……
「いや、若いね~」
なんて忍城は揶揄いながら、その目はディスクトップから離さず次々と後輩にOKを出して行く。停電予告5分前には電気機器を使う全ての作業が終わってプリントをファイルにまとめる作業に入った。
「そう言えばはーちゃんは?」
はーちゃん、忍城は羽織を昔からこう呼ぶ。忍城も幼い頃から羽織達の同級で、αとΩである事である程度の距離を保ってだが仲良くしている級友の一人でもあった。
「…今日は一人だが、待っているって言うからな。空き教室か、談話室…カフェテリア、は営業休止になるか…?」
忍城に聞かれて羽織の所在が気になり出した光生…あれこれと、何をしているのかと思い当たることを口にする。
「プククッ……」
突然忍城が笑い出す。
「何…?」
どうしたんだ、コイツ?と言う不審な目を向けていれば、もう堪らんと言う様に大笑いに変わって行った。
「アハハ…!ダメだ…!くるし~~、お前普段余計なことは言わない奴なのに、はーちゃんの事になると頭の中のものがダラダラ流れて来るのな…!」
ヒッヒッと身体を震わせながら忍城はこみ上げて来る笑いと格闘中……
「お前な……」
社の書類に目を落とそうとしていたその格好のまま光生も固まる。今迄自覚が無かったわけじゃないが…改めてそこを突かれるとそんなにおかしな事か?と詰め寄って問いただしたくなる衝動にも駆られる。
「天下の天翔の御曹司もそこを突かれると恥ずかしいか?」
クックッとまだ笑ってる……忍城よ、お前そんなに笑い上戸だったか?
「仕方ないだろう?お前だって自分の番にはこうだろう?」
忍城にも雪と言うΩの番がいる。歳が一つ上で既に家庭に入っている感じ。籍も入っていて式を来年あげるそうな。
「俺はいつも周りに見せてるから新鮮味はないだろ?こう言う新発見は普段見られない奴からの方がインパクトがあるんだよ。」
あ~雪にいい土産話しが出来たなんて言いながら、まだ震えてやがる……
既に夕刻、掲示されていた様に全館の電気は落とされ夕日が沈むのにはまだ早いが室内は薄暗くなって来ていた。
「なぁ、はーちゃんこっちに呼ぶか、お前もう行ったら?こっちは後片付けと施錠だけだし、今日は早急に帰れって言われてたしな。このままここに居たらまた面倒事頼まれるぞ?」
「ん~そうするか……」
日が沈む前に校舎を出なければ手探りでの校舎からの脱出劇になるのだ。
手早く荷物を纏めていたその時に、羽織に付けていた護衛の一人が物凄い勢いで走り込んできた…!
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