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 高級ブランド品に伝統工芸品。老舗の作る数々のお菓子やお料理。それらはお作法やお行儀よく過ごす人々の身を包み、生活やステータスの一つとしてその人達の生活に素晴らしい彩りを添えてくれる素晴らしい品々… 

 きっと誰もが羨むそんな素晴らしい生活が、後ろを振り向けばすぐに手に届く…



「あっち~~~~~」

 私の実家はそんな華々しい日々が送れる様な旧家で、昔ながらの伝統を重んじ栄えて来た家だそう……
 けれど小さい頃からここにいればそんな物には慣れてしまって、15歳を迎える頃には全くというほどキラキラした生活に興味を持てなくなってしまった。

 お茶やお花、きれいなネイルや流行の服。それが似合う様にと育てられて来た
自分の両手に持っているのは鎌に雑草。

 今、私は庭師の代わりに大きな庭の雑草を抜いている。旧家のお嬢様が何をやっているんだと人に見られると色々と煩いので、こんな時には勿論帽子にジャージ…  

 しかし、これがまた物凄く楽なのだ。大股開いてしゃがみ込んでも叱られないし、なんならそのまま地べたに座って休むこともできる。誰がどうみたって野良仕事をしている人にしか見えないのだから、服が汚れるとか裾がはだけるとか、日に焼けるだとか…

 全部全部考えなくったっていいんだ!

「らっくち~~~ん!!」

 ただいま炎天下の昼の14時。気温的には眩暈がしそうな程に暑いけれど、気持ちの上ではすっきり、さっぱり、晴れ晴れとしながら執拗に草をむしっている。

「なんだっけ?夕方までだっけ?」

 ちっとも親の言うことを聞かないからと庭の草むしりを命じられて早1時間くらいは経っただろうか?夕方日が落ちる前までに雑草を綺麗さっぱり抜き切ってしまうか、それともお綺麗なワンピースに着替えてピアノの練習に励むかどちらかだと…

「そんなのこっちに決まってるじゃな~い!」

 ふんふんと鼻歌さえも出るくらい、今の状況の方がいい。

 だって、いくら家が家だとしても、そこに産まれた人間が家にピッタリハマるとは限らないでしょう?

 自分は自分!どうしても嫌なものは嫌なんだから。

 きつく締め上げられた帯やヒラヒラのスカートよりも、大股で歩けるジャージの方が自分の性に合ってるのだから。それをちっとも理解しようとしない家人と対立し、今回は絶対に自分も折れてやるもんかとやる気満々で庭にいる。

 汗はベタベタと気持ち悪いが、心はこれ以上無いほどに清々しい。

「ふぅ~~よしよし!良いペースね。後はあっちと、その奥と~」

 子供の意地を甘くみないで欲しいわ!やると言ったらやり遂げる!

 ふん!と気合を入れて立ち上がった所で盛大に目眩に襲われ、意識を手放してしまった……………







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