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「おや、これはごきげんよう?」


 今やっと気づきましたーって顔してるよね?アールスト…絶対に第一声で気がついただろうに?


「もう!相変わらず釣れないのね?そこがまた良いのだけど。」


 軽やかな声はとても若々しくて華やかで、今青春してますっていう女子そのものだ。やっぱり…いつもアールストが持ってくる聖女の衣…真っ白な絹のドレスを着ているこの女性も聖女なのだ。


「あら、こちらは?」

 今の今までアールストにエスコートされて手を繋いでいたルーチェリアに今気が付きましたって無理があると思わないのだろうか?ルーチェリアのほうはそんな白々しい聖女?の態度にポカンとしてしまっている。

「ご紹介が遅れましたね。こちらは聖女ルーチェリア様でございます。本日が神託の間初訪問なのです。よそしくお願いしますね。聖女カナール様。」


 本物の聖女~~!!


 聖女カナール…真っ白な聖女の衣を惜しげもなく堂々と着こなしている。きっとどこか高貴な家のご令嬢なのだろう。濃い金の髪に燃える様な赤い瞳。情熱的な性格なのだろうか…一瞬たりともアールストから離れようとはせずにしっかりとその腕を抱きしめながら、ルーチェリアの事を頭の先から爪先まで品定めするかの如くに見つめてくる。

「聖女ルーチェリア…?聞かない名前ですわ?」

「左様でしょうとも。つい最近聖女認定されまして。此度は休養にて神託の間に参ったのです。」

「休養ねぇ?……貴方!」

 じっとりとルーチェリアを眺め回していた瞳をスッと眇めながら胡散臭そうに聖女カナールは問う。

「本当に聖女ですの?貴方の様なやぼったい聖女なんてここには居りませんのよ?」

 やぼったい……どうやらルーチェリアが着ている綿のワンピースの事だろうか?

「なぜ、聖女の衣を着ていないのです?まさか……!アールスト様や周りの者達を聖女だと騙してここまで来たのではないでしょうね?」


 え~~~本物の聖女って疑り深い~~……


 ルーチェリアの中の聖女のイメージがガラガラと崩れていく様な気さえする。

「まさか!ご覧ください聖女カナール様!ルーチェリア様の透ける様な白い肌と輝く金のお髪!青空の様な透き通る深い色合いの瞳には聖女の衣がピッタリと映えるとはお思いになりませんか?」
 
 ニコニコと微笑みを崩さないアールストはきっと気がつかないのかもしれない。


 この聖女カナール、完全にルーチェリアを敵視している……!






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