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「アリー?」
有都の質問が気になったのか、ラウードが有都とオリバーの側に来る。オリバーの手を握っている有都は真剣にオリバーの顔を見ていて…
「オリバー?」
心なしか、オリバーの顔色が良くなっている様だ。あれだけ血を流していたのだから致命傷であっても仕方がなかったかもしれないのに、落ち窪んだ眼窩も色がくすんだ唇も、子供らしくハリのある艶々としたピンク色に見えた。
「アリー何かしたのか?」
その様子にラウードも気がついて驚きの声をあげていた。
「消失…俺のスキルだって、サクちゃんが教えくれた。だから使ったんだよ。貧血を消失しろって…ラウード、オリバーは助かる?」
血色良く、温かそうな柔らかい肌…抱きしめるまでも無く、子供特有の体温が高い温かなオリバーの身体が手に取るようにわかる。
「あぁ……この分なら、問題ないよ…良くやってくれたね。アリー。」
「オリバー!目が覚めたの?」
「まだだよ、サク。でも大丈夫そうだ。サク、アリーに教えてくれたんだろう?お手柄だった。」
「助かるのね!?オリバー………」
ヘナヘナとその場にサクが座り込む。今までの緊張が一気に緩み力が抜けたんだろう。
「良かっ……た……また、居なくなっちゃったらどうしようかと………」
親族皆殺しを体験しているサクにとっては人事ではないのだ。サクは蹲ったままポロポロと涙を流す。
「大丈夫だ。二人とも頑張ったね。」
ラウードはそっとサクの背を優しく撫でて慰めていた。
頑張ったのか……自分の事を消すだけじゃないんだ……すご、い…考え方によっては何にでも活用できる………?
温かい柔らかなオリバーの手がそれを証明してくれている。
凄い………!
「さ!皆んな疲れてるし、明日に備えてもう寝ましょ?今晩は私がオリバーを見るから!」
泣き伏していたサクが涙を拭きながら、笑顔を見せる。先程までの表情とは打って変わってさっぱりしていて人が変わった様だった。
「う…ん…サクちゃん、もう大丈夫?」
「うん…平気。だから二人とも早く休んでね?」
サクはオリバーの看護を請け負って、布団を掛け直したり、タオルを絞ってきたりとテキパキと動き出した。
「サクちゃん…疲れたら、言って?代わるから。」
「分かったわ。」
「アリー、君はこっちに。怖かっただろう?」
"ラウードのスキル、苦悩っていうの。
相手の苦しいのを自分に移しちゃうの"
ラウードは有都を誘導する為にか手を差し出して来るが、有都はニコリと笑ってその手を辞退した。
「大丈夫です、ラウードさん。自分で歩けますから。オリバーの顔を見たら物凄く、安心した~」
「アリー……?」
ラウードは怪訝な顔をしていたが、少し苦笑を漏らし、肯いた後に部屋を出た。
やっぱり…いない………
小さい小屋にも寝台は一つで、ラウードは有都に先にベッドに入って寝ている様に言い付けると、自分は眠る前に小屋周囲の巡回に出てしまう。
「私は後から休ませてもらう。」
確かにラウードはそう言っていたのに、いつまで経っても戻ってこないのだ。また有都は寝台から抜け出すと、静かに外に出て行った。昼間の襲撃のすぐ後だから、きっとラウードは遠くまで行っていないだろうと、そう願って……
月が出でいればやはり明るい。小屋の前は少し開けた様になっているが、前にいた小屋周辺よりこじんまりした雰囲気だ。
「分かるかな?」
前は偶然だった。でも今は……?
「……消失……」
ある事を願ってそう呟いた有都は、ある目的を持って小屋から少し離れた大木の方へと歩いて行く。
直ぐに分かった…大木の根元にうずくまっている大柄の人が……
「ラウードさん………」
「アリー……?」
少し、声が震えてる?
「どうしてここが分かったんだい?君ももう、寝なくては…」
「それはラウードさんも一緒でしょう?」
「わたしは鍛えているからね。少し睡眠が少なくても響きはしない。」
ラウードは大木の根元に蹲ったまま自分の胸元をギュッと握りしめている様だった。
やっぱり………
「サクちゃんに…スキルを使ったんですね?」
「…………アリーは勘がいいね……」
否定しないラウードは表情を歪めたまま
苦笑する。苦しそうな表情でも美形は美形……その形の良い額には今日も汗がうっすらと浮かんでいる。
「どうして、ここが分かったと思います?」
ラウードに近づきながら有都は問う。
「さぁ、検討がつかないな……」
ラウードさんはサクちゃんの苦しみをどれ位持っていったんだろう…
「俺もスキル持ちですよ?」
「アリーのスキル、消失で?」
コクン…有都は肯きのみでそう答えた。
「ラウードさんを見つけられない状況を消失、で消しました。」
そう言うと、有都はラウードの直ぐそばに膝をついた。
「凄いな…アリーは…万能じゃないか…!」
「まだ、試していないことがあるんです。」
有都はそう言いながら、そっとラウードに手を伸ばした。
有都の質問が気になったのか、ラウードが有都とオリバーの側に来る。オリバーの手を握っている有都は真剣にオリバーの顔を見ていて…
「オリバー?」
心なしか、オリバーの顔色が良くなっている様だ。あれだけ血を流していたのだから致命傷であっても仕方がなかったかもしれないのに、落ち窪んだ眼窩も色がくすんだ唇も、子供らしくハリのある艶々としたピンク色に見えた。
「アリー何かしたのか?」
その様子にラウードも気がついて驚きの声をあげていた。
「消失…俺のスキルだって、サクちゃんが教えくれた。だから使ったんだよ。貧血を消失しろって…ラウード、オリバーは助かる?」
血色良く、温かそうな柔らかい肌…抱きしめるまでも無く、子供特有の体温が高い温かなオリバーの身体が手に取るようにわかる。
「あぁ……この分なら、問題ないよ…良くやってくれたね。アリー。」
「オリバー!目が覚めたの?」
「まだだよ、サク。でも大丈夫そうだ。サク、アリーに教えてくれたんだろう?お手柄だった。」
「助かるのね!?オリバー………」
ヘナヘナとその場にサクが座り込む。今までの緊張が一気に緩み力が抜けたんだろう。
「良かっ……た……また、居なくなっちゃったらどうしようかと………」
親族皆殺しを体験しているサクにとっては人事ではないのだ。サクは蹲ったままポロポロと涙を流す。
「大丈夫だ。二人とも頑張ったね。」
ラウードはそっとサクの背を優しく撫でて慰めていた。
頑張ったのか……自分の事を消すだけじゃないんだ……すご、い…考え方によっては何にでも活用できる………?
温かい柔らかなオリバーの手がそれを証明してくれている。
凄い………!
「さ!皆んな疲れてるし、明日に備えてもう寝ましょ?今晩は私がオリバーを見るから!」
泣き伏していたサクが涙を拭きながら、笑顔を見せる。先程までの表情とは打って変わってさっぱりしていて人が変わった様だった。
「う…ん…サクちゃん、もう大丈夫?」
「うん…平気。だから二人とも早く休んでね?」
サクはオリバーの看護を請け負って、布団を掛け直したり、タオルを絞ってきたりとテキパキと動き出した。
「サクちゃん…疲れたら、言って?代わるから。」
「分かったわ。」
「アリー、君はこっちに。怖かっただろう?」
"ラウードのスキル、苦悩っていうの。
相手の苦しいのを自分に移しちゃうの"
ラウードは有都を誘導する為にか手を差し出して来るが、有都はニコリと笑ってその手を辞退した。
「大丈夫です、ラウードさん。自分で歩けますから。オリバーの顔を見たら物凄く、安心した~」
「アリー……?」
ラウードは怪訝な顔をしていたが、少し苦笑を漏らし、肯いた後に部屋を出た。
やっぱり…いない………
小さい小屋にも寝台は一つで、ラウードは有都に先にベッドに入って寝ている様に言い付けると、自分は眠る前に小屋周囲の巡回に出てしまう。
「私は後から休ませてもらう。」
確かにラウードはそう言っていたのに、いつまで経っても戻ってこないのだ。また有都は寝台から抜け出すと、静かに外に出て行った。昼間の襲撃のすぐ後だから、きっとラウードは遠くまで行っていないだろうと、そう願って……
月が出でいればやはり明るい。小屋の前は少し開けた様になっているが、前にいた小屋周辺よりこじんまりした雰囲気だ。
「分かるかな?」
前は偶然だった。でも今は……?
「……消失……」
ある事を願ってそう呟いた有都は、ある目的を持って小屋から少し離れた大木の方へと歩いて行く。
直ぐに分かった…大木の根元にうずくまっている大柄の人が……
「ラウードさん………」
「アリー……?」
少し、声が震えてる?
「どうしてここが分かったんだい?君ももう、寝なくては…」
「それはラウードさんも一緒でしょう?」
「わたしは鍛えているからね。少し睡眠が少なくても響きはしない。」
ラウードは大木の根元に蹲ったまま自分の胸元をギュッと握りしめている様だった。
やっぱり………
「サクちゃんに…スキルを使ったんですね?」
「…………アリーは勘がいいね……」
否定しないラウードは表情を歪めたまま
苦笑する。苦しそうな表情でも美形は美形……その形の良い額には今日も汗がうっすらと浮かんでいる。
「どうして、ここが分かったと思います?」
ラウードに近づきながら有都は問う。
「さぁ、検討がつかないな……」
ラウードさんはサクちゃんの苦しみをどれ位持っていったんだろう…
「俺もスキル持ちですよ?」
「アリーのスキル、消失で?」
コクン…有都は肯きのみでそう答えた。
「ラウードさんを見つけられない状況を消失、で消しました。」
そう言うと、有都はラウードの直ぐそばに膝をついた。
「凄いな…アリーは…万能じゃないか…!」
「まだ、試していないことがあるんです。」
有都はそう言いながら、そっとラウードに手を伸ばした。
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