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働かざること山の如し

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「Iさんとこの研究所って、大学とか政府の研究所とかと大分毛色が違いますよね。あんまりネットとかでも名前聞かないし、知ってる人少なそうなのに、周りの知り合いには時々知ってる人いたりするし。部署の名前も哲学的というか、とんがってるというか。」

「あ、知りませんでした?うちの上の方・・・というか、関連団体というか。宗教組織なんですよ。」

「え?そんな雰囲気まったくないですよね。」

「ですよね。結構歴史の古い宗教組織がいくつか上にいるんですよね。その他にも宗教と関係ない色んな団体が関連してるというのもあるんでしょうけど。関連団体とは研究結果を伝えたり、貰ったり、こういうのなんて言うんでしたっけ?ズブズブの関係?」

「いやいや言い方が汚い。」

「情報と利益の互助状態ですから、まぁ周りの団体やら企業やらもここをないがしろにはできないんですよね。結果を出すためには宗教性とか信仰とかよりも科学的であるかの方が重要になりますよ。私も別に特別信仰はないですけど、あえていうと仏教徒なんですかね。周りの職員も似たり寄ったりじゃないですかね。」

「宗教組織でゴリゴリの科学の研究所って、なんだか違和感ありますね。」

「そうでもないですよ。初期の科学は宗教や錬金術やらが重要ですしね。遺伝法則のメンデルみたいに神父とか神学にたずさわる人が科学者の側面ありますし、音楽なんかもそうですよね。仮にある長さでホースを切って“ラ”の音が出て、ホースの長さを半分にしたら倍音の“ラ”の音がでるとか。理由を調べようと思えば今考えるとそれは科学なんですけど、当時の研究者の根底にあるのは“神の定めた真理を紐解く仕事”なんですよ。」

「あ、なるほど宗教と科学つながりますね。なんとなく対極にあるもののような気がしてました。」

「たしかに現在の宗教と科学は相いれないというか、難しいですね。“宗教”を社会学とか宗教学とかで科学的に研究することができても“宗教”が科学的アプローチは取りずらいですからね。宗教は商業利用という部分を除くと本来人の心に寄り添って人生の苦しみを和らげるもので“信じる”ことが根本にあるけれど、科学には“疑う”とか“反証の可能性”が付きまといますから。だから“条件設定”をしてその条件下で“特定の現象”が誰が行っても再現性があるかどうかは科学的アプローチとして重要です。それを積み重ねてこういうスマホとかもできてますし。」

「スマホが特殊な能力を持つ人しか使えないじゃ、意味ないですもんね。信仰心が強い人だけ電源が入るとかも困りますし。」

「例えば“教義を忠実に守れば、人生の苦しみから解放される”という救いがある宗教があったとして、条件設定として“教義を忠実に守れば”、現象として“人生の苦しみから解放される”としたら科学であれば“誰に行っても再現される”と成立しますが、多くの場合そうはなりません。または教義を忠実に守っても人生が苦しみの連続であれば科学的アプローチで見直すと条件設定か現象が間違っていることになりますが、それを認めるとその宗教の根底が覆ります。」

「うわぁ、上部に宗教団体がある研究施設とは思えない発言ですね。やばいじゃないんですか?」

「いや、さっき言ったように周りの人も似たようなもんなんで問題ないですね。こんな感じの研究所が他の国にもありますけど、複数の宗教団体があるので、どれかに属さないといけないわけでもないですし。特定の宗教や教義を広めるためとか、そんな目的のために設立されたわけじゃないですし。」

「へぇ。?」

「おっと休憩そろそろ終わりだ。午後も仕事仕事。」

「あ。なんか色々話し聞いてしまってすみません。」

Phase.303 No.56 Date6/4/-
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