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第11話 ダンジョン最下層、ジャイアントブレインオーガー現る
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「うぅ…………こ、ここは?」
目が覚めると、視界には真っ暗な闇が広がっていた。
そうだ、僕はジェルマンさんに…………。
「ってことは、ここが、ジェルマンが言っていた、ダンジョン最下層」
視界が闇に慣れ始めると、鮮明に物が見え始める。
舗装されたようにきれいな道が奥へと続き、壁一面灰色の岩で覆われていた。
そして、現在、ダンジョン最下層で僕一人、絶体絶命のピンチの状況。
「まず、ここがどこのダンジョンか調べないとな」
運がいいのか、前のようなめまいもないし、体も重くない。怪我もないみたいだし、これなら十分に調査できる。
ダンジョンは大陸ごとに一つ存在する。普通に考えるならサルモネ大陸に存在するエレガス迷宮だが、もしそうだとしても、状況は変わらない。
ダンジョンはよくレベル上げとして使われることがあるが、それはあくまで上層のみ、中層、下層、深層、そして最下層と続き、僕がいる場所が最下層。つまり、ダンジョン最深部だ。
「いや、まずは安全な場所を見つけるのが先決か」
僕はしばらくまっすぐ道なりに進んで歩いた。
ダンジョンには各ポイントに魔物が一切立ち入らないエリアが存在する。そのエリアの数は無数に存在する。
「とはいえ、最下層っていうから、魔物がたくさんいるのかと思ったけど、いったいも見当たらないな」
魔物なんて図鑑でしか見たことないため、できる限り慎重に動きたい。なんせ、僕には戦うほどの力がないからね。
「しかし、本当に不気味だ」
視界に写るのはずっと同じ景色。本当に僕は進めているのだろうか。
「このままじゃ体力が先につきそうだ」
今の僕には水も食料もない。このままじゃ、脱水症状で死ぬか、餓死するかのどちらかだ。
ってなんでこんなに冷静になってるんだ、僕は。
普通ならこの状況を受け入れられず、泣きじゃくるのが普通だろ。もしかして、この世界に来てから、感覚がマヒしているのか?
「…………やっぱり、おかしい」
前に進んでいるように感じない。
僕は今、何をしているんだ。
いくら進んでも、同じ景色に疑いを持った僕は灰色の壁に近づき、手を置いた。
「スキル、斬っ!!」
反応がない。魔物以外のすべてを斬ることができるスキルが発動しない。
つまり…………。
「僕はすでに魔物の攻撃を受けている?」
その考えがよぎった瞬間、ある可能性が見えてきた。
僕が持つスキル斬は魔物以外を斬ることができるスキル。一見、魔物以外と聞き使う際に場面が限られると思われるが、これは少しひっかけの部分がある。
それは魔物以外と記載されている部分だ。魔物以外、つまり魔物以外であれば斬ることができるということだ。
なら、その身に受けた攻撃すらも斬ることができるのが道理だ。
僕はそっと自分の手を胸に添えて。
「スキル、斬を使用する」
すると、頭の中で聞いたことのない声が聞こえてくる。
『スキル:斬の使用を確認しました』
目が覚める。
凍り付くような殺意の視線、獲物を狙う獣を息吹。
視界には群れるネズミのような形容をした魔物がこちらを見つめ続けていた。
あれが、魔物…………。
逃げなきゃダメだ。でも今から体を越して逃げるとしても、逃げられるか?
目先にはまっすぐに続く道があり、その道に走れば、この群れから逃れることはできる。
でも、この魔物、図鑑で見たことがある。
ダンジョンで灰色の悪魔と呼ばれる魔物、ネムー。幻覚を誘発させるホルモンを噴射させ、深い幻覚にいざなうことから悪魔と呼ばれ、廃人になったところを捕食する肉食魔獣だ。
遅かれ早かれ、捕食されるのは目に見えている。それに、僕が幻覚に目覚めていると確信を持たれれば、襲われるのも明確だ。なら、僕がとる選択肢は一つ。
「逃げるっ!!」
目先に広がる道へ駆け抜ける僕に反応してネムーの群れが追いかけてくる。
「やっぱり、そう簡単には逃がしてくれないよな、ただ…………斬っ!!」
スキルを使い、ネムーの群れの先頭の足元を切りつけると一瞬、足を止めた。戦闘が足を止めることで、その前を走るネムーが先頭のネムーにぶつかり、足を止めた。
「よしっ!」
これで少しは時間を稼げるはずだ。今のうちに少しでも遠くに。
ネムーは灰色の悪魔と呼ばれるほど厄介な魔物だが、群れに割には知性が乏しく、バカという特性がある。そのため、単純な行動しかできない。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ…………これは」
まっすぐ走り続けると途中、僕の身長の何倍もある大きな扉が立ちふさがった。
後ろから、ネムーの群れが襲ってくる様子はない。
ひとまず、逃げ切れたかな、それより。
「大きな扉だな」
よく見ると文様が書かれていて、文字も刻まている。しかし、言語理解のスキルをもってしても読むことができなかった。
「テンプレを考えるなら、ボス部屋だろうけど…………」
通った道に戻ったとしても、ネムーの群れに遭遇する確率は高いし、何をしないままだと、餓死して死ぬだけだ。
なら、入ってみる以外に選択肢はない。
「よしっ!行くか…………」
強く頬を叩き、気合を入れる日向。
両手で扉に触れて、軽く押すと見た目に反して普通の扉のように軽く開いた。
「思ったより軽い」
扉の先には真っ暗な空間が広がっていた。
何もない。っと扉の先の部屋へと足を踏み入れた。
「本当に何もないし、真っ暗だ」
しばらく、慎重にまっすぐ歩いていると、後ろから扉の閉まる音が聞こえる。
「え、ちょっと!?」
咄嗟に扉の前まで駆け足で駆け寄るも、間に合わずぎりぎりで閉じてしまう。
「噓だろ…………」
扉を押し開けしてみるも、びくともせず、軽く絶望した。
まさか、こんな罠があるなんて、まぁネムーの群れに襲われることがもうないと思えば、まだいいか。
日向は立ち上がり、とりあえず、周りを見渡すと、真っ暗な部屋に灯が輝き、部屋全体を照らした。
何が起こったのかと、周りを警戒すると、上から突然、何か大きなものが落ちてきた。
「な、なんだぁ!?」
地面が大きく揺れ、視界が煙で覆われるも、大きな巨体の影がハッキリと見える。
茶色の毛皮に、二つの大きな角、右手には片手斧をもち、こちらを鋭い目でにらんでいた。
『うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「…………ぁ」
声が出ないほど、僕は目の前にいる化け物から目が離せない。
獣ような荒々しい息吹を鳴らし、鋭い赤い瞳がこちらを凝視する。身を守るためか魔物が鎧を装備している。
数々の本を読んだ僕ですら、魔物が鎧を着ていたなんて文献はなかった。
ただこの魔物の正体はわかる。
茶色毛皮に大きな二つの角、そして、赤い瞳と片手斧で、すぐにわかる。
魔物の中で最強種とされる鬼に属する魔物、ジャイアントブレインオーガー。
たしか、先代の勇者が仲間と力を合わせて討伐したって文献に書いてあったけど、目の前にするここまで迫力があるのか。
『ダンジョンに挑みし挑戦者よ』
「しゃ、しゃべったぁ!?」
『汝の勇気を示せ』
「え…………」
その言葉を皮切りにジャイアントブレインオーガーは僕にめがけて突進した。
目が覚めると、視界には真っ暗な闇が広がっていた。
そうだ、僕はジェルマンさんに…………。
「ってことは、ここが、ジェルマンが言っていた、ダンジョン最下層」
視界が闇に慣れ始めると、鮮明に物が見え始める。
舗装されたようにきれいな道が奥へと続き、壁一面灰色の岩で覆われていた。
そして、現在、ダンジョン最下層で僕一人、絶体絶命のピンチの状況。
「まず、ここがどこのダンジョンか調べないとな」
運がいいのか、前のようなめまいもないし、体も重くない。怪我もないみたいだし、これなら十分に調査できる。
ダンジョンは大陸ごとに一つ存在する。普通に考えるならサルモネ大陸に存在するエレガス迷宮だが、もしそうだとしても、状況は変わらない。
ダンジョンはよくレベル上げとして使われることがあるが、それはあくまで上層のみ、中層、下層、深層、そして最下層と続き、僕がいる場所が最下層。つまり、ダンジョン最深部だ。
「いや、まずは安全な場所を見つけるのが先決か」
僕はしばらくまっすぐ道なりに進んで歩いた。
ダンジョンには各ポイントに魔物が一切立ち入らないエリアが存在する。そのエリアの数は無数に存在する。
「とはいえ、最下層っていうから、魔物がたくさんいるのかと思ったけど、いったいも見当たらないな」
魔物なんて図鑑でしか見たことないため、できる限り慎重に動きたい。なんせ、僕には戦うほどの力がないからね。
「しかし、本当に不気味だ」
視界に写るのはずっと同じ景色。本当に僕は進めているのだろうか。
「このままじゃ体力が先につきそうだ」
今の僕には水も食料もない。このままじゃ、脱水症状で死ぬか、餓死するかのどちらかだ。
ってなんでこんなに冷静になってるんだ、僕は。
普通ならこの状況を受け入れられず、泣きじゃくるのが普通だろ。もしかして、この世界に来てから、感覚がマヒしているのか?
「…………やっぱり、おかしい」
前に進んでいるように感じない。
僕は今、何をしているんだ。
いくら進んでも、同じ景色に疑いを持った僕は灰色の壁に近づき、手を置いた。
「スキル、斬っ!!」
反応がない。魔物以外のすべてを斬ることができるスキルが発動しない。
つまり…………。
「僕はすでに魔物の攻撃を受けている?」
その考えがよぎった瞬間、ある可能性が見えてきた。
僕が持つスキル斬は魔物以外を斬ることができるスキル。一見、魔物以外と聞き使う際に場面が限られると思われるが、これは少しひっかけの部分がある。
それは魔物以外と記載されている部分だ。魔物以外、つまり魔物以外であれば斬ることができるということだ。
なら、その身に受けた攻撃すらも斬ることができるのが道理だ。
僕はそっと自分の手を胸に添えて。
「スキル、斬を使用する」
すると、頭の中で聞いたことのない声が聞こえてくる。
『スキル:斬の使用を確認しました』
目が覚める。
凍り付くような殺意の視線、獲物を狙う獣を息吹。
視界には群れるネズミのような形容をした魔物がこちらを見つめ続けていた。
あれが、魔物…………。
逃げなきゃダメだ。でも今から体を越して逃げるとしても、逃げられるか?
目先にはまっすぐに続く道があり、その道に走れば、この群れから逃れることはできる。
でも、この魔物、図鑑で見たことがある。
ダンジョンで灰色の悪魔と呼ばれる魔物、ネムー。幻覚を誘発させるホルモンを噴射させ、深い幻覚にいざなうことから悪魔と呼ばれ、廃人になったところを捕食する肉食魔獣だ。
遅かれ早かれ、捕食されるのは目に見えている。それに、僕が幻覚に目覚めていると確信を持たれれば、襲われるのも明確だ。なら、僕がとる選択肢は一つ。
「逃げるっ!!」
目先に広がる道へ駆け抜ける僕に反応してネムーの群れが追いかけてくる。
「やっぱり、そう簡単には逃がしてくれないよな、ただ…………斬っ!!」
スキルを使い、ネムーの群れの先頭の足元を切りつけると一瞬、足を止めた。戦闘が足を止めることで、その前を走るネムーが先頭のネムーにぶつかり、足を止めた。
「よしっ!」
これで少しは時間を稼げるはずだ。今のうちに少しでも遠くに。
ネムーは灰色の悪魔と呼ばれるほど厄介な魔物だが、群れに割には知性が乏しく、バカという特性がある。そのため、単純な行動しかできない。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ…………これは」
まっすぐ走り続けると途中、僕の身長の何倍もある大きな扉が立ちふさがった。
後ろから、ネムーの群れが襲ってくる様子はない。
ひとまず、逃げ切れたかな、それより。
「大きな扉だな」
よく見ると文様が書かれていて、文字も刻まている。しかし、言語理解のスキルをもってしても読むことができなかった。
「テンプレを考えるなら、ボス部屋だろうけど…………」
通った道に戻ったとしても、ネムーの群れに遭遇する確率は高いし、何をしないままだと、餓死して死ぬだけだ。
なら、入ってみる以外に選択肢はない。
「よしっ!行くか…………」
強く頬を叩き、気合を入れる日向。
両手で扉に触れて、軽く押すと見た目に反して普通の扉のように軽く開いた。
「思ったより軽い」
扉の先には真っ暗な空間が広がっていた。
何もない。っと扉の先の部屋へと足を踏み入れた。
「本当に何もないし、真っ暗だ」
しばらく、慎重にまっすぐ歩いていると、後ろから扉の閉まる音が聞こえる。
「え、ちょっと!?」
咄嗟に扉の前まで駆け足で駆け寄るも、間に合わずぎりぎりで閉じてしまう。
「噓だろ…………」
扉を押し開けしてみるも、びくともせず、軽く絶望した。
まさか、こんな罠があるなんて、まぁネムーの群れに襲われることがもうないと思えば、まだいいか。
日向は立ち上がり、とりあえず、周りを見渡すと、真っ暗な部屋に灯が輝き、部屋全体を照らした。
何が起こったのかと、周りを警戒すると、上から突然、何か大きなものが落ちてきた。
「な、なんだぁ!?」
地面が大きく揺れ、視界が煙で覆われるも、大きな巨体の影がハッキリと見える。
茶色の毛皮に、二つの大きな角、右手には片手斧をもち、こちらを鋭い目でにらんでいた。
『うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「…………ぁ」
声が出ないほど、僕は目の前にいる化け物から目が離せない。
獣ような荒々しい息吹を鳴らし、鋭い赤い瞳がこちらを凝視する。身を守るためか魔物が鎧を装備している。
数々の本を読んだ僕ですら、魔物が鎧を着ていたなんて文献はなかった。
ただこの魔物の正体はわかる。
茶色毛皮に大きな二つの角、そして、赤い瞳と片手斧で、すぐにわかる。
魔物の中で最強種とされる鬼に属する魔物、ジャイアントブレインオーガー。
たしか、先代の勇者が仲間と力を合わせて討伐したって文献に書いてあったけど、目の前にするここまで迫力があるのか。
『ダンジョンに挑みし挑戦者よ』
「しゃ、しゃべったぁ!?」
『汝の勇気を示せ』
「え…………」
その言葉を皮切りにジャイアントブレインオーガーは僕にめがけて突進した。
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