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【2章】チーム・ブラックドラゴン①
しおりを挟む漆黒(しっこく)なボディカラーにワイドなGTウィング、足元には鮮やかに栄えるゴールドのメッシュホイール。
リアウィンドに大きく貼られたステッカーには、『チーム・ブラックドラゴン』と英字表記され、その文字は金色で縁取られていた。
そう、この車の主は東海エリアを拠点に持つチーム・ブラックドラゴンのトップに君臨する男『天龍寺 司』(てんりゅうじ つかさ)(28)の愛車だ。
2000年式のRX-7 タイプRZ 通称FDと呼ばれる車だ。ツインターボも兼ね備えた名車だ。更にこの天龍寺 司のFDは、マツダ車独自のロータリーEG(エンジン)の中でも特に最上級と位置付けされるトリプルローターを搭載しているモンスターマシンだ。
その高い性能をベースに用い峠仕様に最適なチューンを施(ほどこ)している。いわゆるこの車は、チーム・ブラックドラゴンの顔となる看板車なのだ。
「俺と同じロータリー使いの見習いが、わずか3ヶ月の間にセカンド(二軍)のコース基準記録を破ったって話、本当か?」
「その情報は間違いないぜ、司!」
「圭介からの報告だと、つい最近 聡のレビンが撃墜されたって話だぜ」
「ほっ本当か!? 聡のハチロク(略AE86)がか‥‥‥」
「高広、ちょっとその見習い君に興味が湧いてきたんだけど、今からセッティング出来ないか?」
「もちろんOKだぜ! この話しをしたら司が興味を示すと思ってたよ。」
「その見習い君の場所は、すでに圭介から聞いてるから、今から俺がナビ(案内)するよ」
「さすがだな、いつもながらお前は仕事が早くて頼りになるよ」
「場所がわかってるなら、早速出発するか」
〔キュルルルル、ブォーン、ボォボボボボーーーー〕
〔ブォンブォンブォーン、ボォーーーン〕
〔パシューーーン、ンキャキャキャキャーーーー〕
東海エリア最強の走り屋と呼ばれる、天龍寺 司の愛車FD(略RX-7 FD3S)のロータリーサウンドが辺りに響き渡る。
唸(うな)る重低音を撒き散らしながら、その姿は一瞬のうちに一般道の中へと消えて行った。
高広こと石神 高広(いしがみ たかひろ)(28)は、司と高校生の頃からの同級生だった。
司と高広は高校を卒業して、お互い同じ大学へと進学すると、IT系ビジネスの会社を共同して企業させた。
1、2年で成果を上げると、瞬(またた)く間に経営は軌道に乗り、今では年商10億円以上を稼ぐ会社へと成長していった。
仕事と同じく彼らには共通する趣味があった。それが『峠バトル』だった。
彼らは大学入学時に『峠サークル』を立ち上げると、同じ志(こころざし)を持った仲間を集め、校内ではコンピュータを駆使して、あらゆる角度から峠を攻略するためのテクニックを研究していった。
その延長線上で誕生したチームが今の『チーム・ブラックドラゴン』となっている。
石神 高広の役割は、主にチームの頭脳役となっている。彼の分析力は群を抜いて優秀だった。
その高広の分析力を確実にものにして、自分の運転技術へと繋げられる者だけが、チームのレギュラーとして残って行った。
その結果、東海エリアを支配する絶対的なチームへと昇り詰めたのだった。
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