なぜか俺は親友に監禁されている~夏休み最後の3日間~

ha-na-ko

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2. なんだかすごく久しぶりだ。

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オレは手島さんのマンションの前に来ていた。

なんだかすごく久しぶりだ。
考えてみたら、もう半年近くは来れてなかったかな……。

あの宮城社長の秘書になってからは、気合の空回りが多く、手を焼いていたっけ。


もう日も落ち、マンションの明かりがキラキラ光るエントランス。
スーツ姿で足を踏み入れる。

スーツは心配をかけないためのカモフラージュ。
リストラされたのを知られたくなくて毎日スーツで家を出る夫の気分だ。

オートロックのマンションの呼び鈴を鳴らした。


ウイーン……

何も応答が無いまま、自動ドアが開き、エレベーターの扉も開く。
最上階のボタンが赤く光っていた。

オレは違和感を感じながらも、乗り込んだ。


ピンポーン……一応、玄関ドアの前の呼び鈴も鳴らした。
応答は無い。
ノブに手をかけると、鍵は開いていた。


………あれ……。

部屋が暗い。
玄関もそこに続く廊下も、いつものあの手島さんのあったかい空気に包まれているような雰囲気ではなかった。

完全空調管理された部屋のはずなのに、なんだか嫌な汗が吹き出てきた。
恐る恐るリビングダイニングに続くドアを開けた。

ほんの少しだけ、サプライズで、クラッカーでも飛び出してくるのかもとドキドキしていた。
しかし、予想に反して、扉は静かに開いた。
そのリビングダイニングも薄暗く、メキシコ料理の匂いすらなかった。

そしてあのオシャレな柱の向こう側、部屋の奥のアーチ状になったテラスへと続く窓際に、月明かりで照らされた一人の人影が見えた。逆光となりそこから顔は見えない。

「……手島……さん?」

オレは警戒しながら、ゆっくりとその人影に近づき声をかけた。


その人影には見覚えがある。

あの肩のライン、立ち姿………



近づきながら、核心へと変わっていく。


途中から、体がガクガク震えだした。






「……ナツ」

聞き覚えのある、優しい低音ボイス。

月明かりに照らされて写るその姿は、


紛れも無くハヤの姿だった。




「どうして……ここに……」

震える声で、言葉を搾り出した。


「誕生日おめでとう」

やわらかく微笑む顔は、変わらない。
しかし、内には芯の通った逞しさが感じられ、ぎゅうっと胸が締め付けられた。



オレは背中を向けた。

今の自分の立場が恥ずかしかった。

あいつに近づこうと必死にもがいても、届かない。
それどころか、オレはふりだしに戻って状況を変えることもできないでいる。

オレはまだ、ハヤに会っちゃいけないんだ……。



そのまま部屋を出ようとした。
しかし俺の体は引き戻され、背中から大きな腕の中にすっぽりと包まれる。

「……待って……」

久しぶりのハヤの体温……。
ズクンッと身体の中心が疼く。

震えていることを悟られないように、オレはオーバー気味にその手を振り払った。



「会社、辞めたんだよね」

オレは驚いてハヤを見た。
が、すぐに納得した。

……そうだ、谷垣さんはもともとそういう人じゃないか。
何もかもお見通しで、こんなことをしてオレを試す。

「……粋な計らいってやつ?」

ふっ…っと虚しい笑いがこみ上げてくる。

………ただ惨めなだけだ。

男として一人前になって、何があってもハヤを守れる、そうなって初めてオレは谷垣さんに認められたい。
そして、ハヤの傍に……。



「違うよ。

粋な計らいでもなんでもない。

父さんがナツを、

認めてくれたんだ」





オレは耳を疑った。

「……何、言ってんの……?
オレ無職になったんだぜ……。
こんな27歳にもなって、社長殴ってクビってさ、社会人として最低だろ」

それとも、オレが命を救ったから、お情けで……?
そんなの、いらねぇーよ……。

感情がついていかず、固まっているオレの身体をハヤは優しく抱き寄せた。
リモコンで部屋に明かりが点く。
突然の光でオレは思わず目を瞑り、ゆっくり開けて部屋を見回した。




え…………。


信じられない思いで、オレは何度もその場でぐるぐると回る。


手島さんの家だったこの部屋は、家具の配置、カーテンのデザイン、小物から雑貨まで、以前ハヤが住んでいたとおりの物に変わっていた。



オレは懐かしさで涙が溢れだす。

「なん……だよ、これ……」


「認めてくれたって証拠さ」


「意味……わかんねぇーよ……」






「……ナツ……、俺の秘書になってほしい」



ハヤは握手を求めるかのように、右手を差し出した。


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