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番外編1
1. あれから2か月
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ふと、車の外の街並みを見た。
ビル群を分断するような何車線もある幅広の道路に多くの車が行き交う街の中、黄色い銀杏の葉がチラチラとビル風に舞い、色の薄い都会の中に鮮やかな色彩となって目に飛び込んできた。
あー…もう秋か…。と心の中で呟く。
長らく景色すら見る余裕もないほどの忙しさで、寝ている時すら仕事のことが過る毎日にようやく一段落ついた頃だった。
社用車の後部座席ではハヤが取引先と電話をしている。
その間にも自分は次の移動先でハヤがするスピーチの台本を考えタブレット端末にメモ書きをしていた。
オレはハヤの会社に再就職し、早速何人かの秘書の仕事を一気に引き受けることになった。
参った…、ハヤが有能な秘書を引き抜いてきたなんて言うもんだから、仕事を取られたオレよりうんと先輩の秘書の方々のアタリが強いのなんの…。
でもへこたれてはいない。それだけハヤに信頼されていると感じると嬉しくなった。
そんな引継ぎや覚えることで手いっぱいで、結局都内の中心地の元々住んでいるアパートに寝に帰る状態となっていて、なかなかハヤとの新居のマンションに移ることが出来ずにいた。
そして、ようやく……
「このまま自宅へ」
通信業界の有力者との会合の後、いつも助手席に座る秘書のオレに後部座席の隣に座るように促し、ハヤは運転手にそう指示し運転手は黙って頷き車は出発した。
「ようやく…」
小さな声でハヤが呟き狭くない車内でハヤの膝がオレの膝にすり寄ると
「…うん」
とオレも返事をし短い会話を交わす。
ようやく引き継ぎが終わって完全にハヤ付きの秘書となり、オレは都内の元のアパートを引き払って今日からあのマンションへと移り住むことになっていた。
谷垣家の車の運転手はその事を理解している者が勤めていた。
そして、明日から二日間二人ともオフを取ることが出来たのだ。
エントランス前、車を降りる。
なんだかすごく久しぶりに感じる。
二か月前の誕生日にどん底からのハヤとの再会そしてプロポーズ。今でもまだ谷垣さんに認めてもらったのがウソのようで何度も手島さんに確認してしまったっけ。
オートロックをハヤに渡されたカードキーを翳して解除する。
なんだかドキドキする。ここにはハヤと「友達」になった10歳の頃から何度も通ってきたけど、まさか自分が住むことになるなんて想像もできなかった。
開いた自動ドアの前でカードキーを眺める。
先にエントランス内に入っていったハヤがどうした?と不思議そうに振り返って、顔を上げたオレを見てふわっと笑顔になった。
エレベーター内にもカードキーを翳して最上階のボタンの明かりが点くとそこもオレが押しエレベーターは最上階に向かって動き出した。
指定の階に着きエレベーターを停めている間にハヤが降り、後を追うように降りるとハヤがオレの手を握ってきた。
「……まだ、共有部分だって!」
小さい声で呟くとその手を振りほどく。
エレベーター前に一つしかない大きく重厚な玄関扉を開けると、先にハヤが中へと入っていきそっとオレも足を踏み入れる。
と同時に大きな大きな胸の中へすっぽりオレの身体が入り込み、力加減もわかっていない様子で抱きしめられた。
「はぁー…、ナツ…」
ハヤはオレの肩に顔を埋め魅力的な低音ボイスで呟く。オレはその声でスイッチが入ったように背筋から全身そして身体の中心へと快感が走り抜けるのを感じた。
ビル群を分断するような何車線もある幅広の道路に多くの車が行き交う街の中、黄色い銀杏の葉がチラチラとビル風に舞い、色の薄い都会の中に鮮やかな色彩となって目に飛び込んできた。
あー…もう秋か…。と心の中で呟く。
長らく景色すら見る余裕もないほどの忙しさで、寝ている時すら仕事のことが過る毎日にようやく一段落ついた頃だった。
社用車の後部座席ではハヤが取引先と電話をしている。
その間にも自分は次の移動先でハヤがするスピーチの台本を考えタブレット端末にメモ書きをしていた。
オレはハヤの会社に再就職し、早速何人かの秘書の仕事を一気に引き受けることになった。
参った…、ハヤが有能な秘書を引き抜いてきたなんて言うもんだから、仕事を取られたオレよりうんと先輩の秘書の方々のアタリが強いのなんの…。
でもへこたれてはいない。それだけハヤに信頼されていると感じると嬉しくなった。
そんな引継ぎや覚えることで手いっぱいで、結局都内の中心地の元々住んでいるアパートに寝に帰る状態となっていて、なかなかハヤとの新居のマンションに移ることが出来ずにいた。
そして、ようやく……
「このまま自宅へ」
通信業界の有力者との会合の後、いつも助手席に座る秘書のオレに後部座席の隣に座るように促し、ハヤは運転手にそう指示し運転手は黙って頷き車は出発した。
「ようやく…」
小さな声でハヤが呟き狭くない車内でハヤの膝がオレの膝にすり寄ると
「…うん」
とオレも返事をし短い会話を交わす。
ようやく引き継ぎが終わって完全にハヤ付きの秘書となり、オレは都内の元のアパートを引き払って今日からあのマンションへと移り住むことになっていた。
谷垣家の車の運転手はその事を理解している者が勤めていた。
そして、明日から二日間二人ともオフを取ることが出来たのだ。
エントランス前、車を降りる。
なんだかすごく久しぶりに感じる。
二か月前の誕生日にどん底からのハヤとの再会そしてプロポーズ。今でもまだ谷垣さんに認めてもらったのがウソのようで何度も手島さんに確認してしまったっけ。
オートロックをハヤに渡されたカードキーを翳して解除する。
なんだかドキドキする。ここにはハヤと「友達」になった10歳の頃から何度も通ってきたけど、まさか自分が住むことになるなんて想像もできなかった。
開いた自動ドアの前でカードキーを眺める。
先にエントランス内に入っていったハヤがどうした?と不思議そうに振り返って、顔を上げたオレを見てふわっと笑顔になった。
エレベーター内にもカードキーを翳して最上階のボタンの明かりが点くとそこもオレが押しエレベーターは最上階に向かって動き出した。
指定の階に着きエレベーターを停めている間にハヤが降り、後を追うように降りるとハヤがオレの手を握ってきた。
「……まだ、共有部分だって!」
小さい声で呟くとその手を振りほどく。
エレベーター前に一つしかない大きく重厚な玄関扉を開けると、先にハヤが中へと入っていきそっとオレも足を踏み入れる。
と同時に大きな大きな胸の中へすっぽりオレの身体が入り込み、力加減もわかっていない様子で抱きしめられた。
「はぁー…、ナツ…」
ハヤはオレの肩に顔を埋め魅力的な低音ボイスで呟く。オレはその声でスイッチが入ったように背筋から全身そして身体の中心へと快感が走り抜けるのを感じた。
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