【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ

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「セリ様は規格外ですね。」

「そうか、すくすく育っていると報告を受けているが。」

「ええ。ご成長が速く、庭で水魔法を使ってらっしゃいますよ。」

「当主の血か。属性が水なのは知っているが。使っているのは水だけか?」

他の属性だと危険かもしれない。魔力属性によっては危険であるため魔道具によって制御をする。貴族の家ではよくある事で、その対処方法も簡単になっている。魔力が強くなるため貴族の家では自慢になるらしい。

「はい。水魔法で草木に水を与えています。危険性はありません。」

それを赤ん坊がわかって使っている可能性はないが、今問題がないのであれば良い。
「そうか。あの子の母親はわかったか?」

「それが、王都の方ではないようなのです。」

「アレの行動範囲は限定的だ。引きこもり、交流もほぼない男がどこで女性と出会ったか?」

子供をもうけ、育てたのは母親の方だとして赤ん坊が消えた今、どこにいるのか。
最悪、誘拐した子じゃないかと恐れている。あの男なら、孤児院から攫ってきたと聞いても信じるぞ。

計算が得意なくせに、世間とズレすぎて犯罪スレスレな男だ。まだ捕まっていないのは、目立たないからだろうとさえ思う。

「あの子がアイツの娘だとして、当主として育てるべきか。後継は必要だ。だが…」

「正統性を持ち出す親類と言う輩が、たくさん出るでしょうね。」

今でも、私が権限を持つのを不服とする者はいる。軍部に明るくないことから追い返せてはいるが。
社交界での利は、あちらにある。碌な社交ができない現状のせいだが…今は戦力の強化の方に力を注がなければ
魔物に対処できないかもしれん。

「戦力の補強は、なんとかできている。当主不在のままどこまで行けるのか。」

父も母もいない赤児から、居場所さえ奪い取るのか。その立場に立たせて良いものか。
別の道だってある。


「ひきつづき、調べてくれ。」

当主の行方は、途絶えたままだった。小規模な魔物の対処であれば、なんとかやっていける。しかし、もっと規模が大きかったら?他の家とに共同戦線になる。その時に必要な決定権も準備も、当主ではないからとできない?そんな馬鹿な状況は回避しなければ。この辺境の民の命がかかっているのだ。


そんな頃、赤ん坊のセリは…
(コック、離乳食もまずいので、水抗議!)
「なんだあ?魔法を向けるんじゃねー!」

意思疎通できないため、水魔法を当て抗議の意思を伝えている。
赤ん坊のワガママ、癇癪として片付けられてしまうこともあるが。

「くそっおとなしく食ってろ!」

(出されたものは食べた。)

コックの苛々しながらの調理は、丁寧とは言いがたい。
心配事があるかららしい。原因は女房と幼い息子の事。女房の実家の食堂を手伝う予定が長引いている。


(そんなに心配なら帰れば良いのに。義理でいるらしいが、私に不味いもの出さないで!)
そうも伝えられないので、私もイラつく。

赤ん坊に『堪える』という字はないようだった。



「あのガキ!」

周囲に愚痴るようになった。慣れないから、赤ん坊の世話は思った通りに行かないと宥められる。
自身の息子もそうだっただろうか?もう歩いているはずだと想像する。

女房に任せっきりだった。更に苛々したが…庭で。


「赤ん坊が果物を食ってた。庭師の爺さんの手で。あのおいしそうな顔、オレの料理では見ていない。」

オレは、息子に自分の料理を食わせたいんだとわかった。それからも悩んだが。
執事に暇を願い出て、結局オレは屋敷を離れた。

『逃げ帰る気か?恩を忘れて』と言われると思ったが当主代理は労って、去る俺に金もくれた。

気持ちは複雑のままだが、女房の実家へ帰れる安堵と、息子に人見知りされた。家族の時間を過ごすと
あの赤ん坊を思い出さずにはいられなかった。

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