上 下
51 / 110
<エルフ達>

対話

しおりを挟む
屋敷に無事帰ると、オジサマが迎えてくれた。
心配かけるとは思ったけど正直、戸惑いが強い。

夕食は豪華になるらしく素直に喜んだ。まだ日は暮れない、保存食を作ろうか悩む。
しかし、休んでいるようにと先回りされていた。食堂で大人しくしていることにする。

師匠も居た。

「お話しませんか?」

セリが前に座った。先にできた食事を出してくれる。久しぶりの料理が新鮮に感じた。野生味と味の濃さか。
美味しかったが違う味。帰って来て浮かれているかもしれない。

「湖が確認できて良かったです。どーぞ。」

バリスに持ってきてもらったワインを注ぐ。『森で過ごすが、酒は嫌いじゃない』と情報は得ている。『深い味のワインなんか良いだろうな』情報源のアクレイオスが持たせてくれた森のワインと呼ばれ、味は確認していないが香りが素敵。

「湖の事は記録にないので、どう残すか。残して良いのか考えてます。」

フードは被らなくなった。冒険者が珍しい容姿と鋭い雰囲気に驚くが、問題はなさそうな様子。私と話しているからかもしれない。

「あの場所に通えるのか試したいですが、許可が出るかどうか。」

一方的に話すのにも慣れて来た、それを変に見る者も減った。慣れというやつである。


「よく喋る」
「師匠は話してくれないでしょう?」

好きに呼べと言われたまま師匠呼びに諦めげいる、空いたワインを再度注いだ。
“口が滑らかになる”といわれていた効果はあった。

「精霊の導きに頼るのみだ。」

「“記録にあったように”ですか?アクレイオスの情報もありますし。」


視線を受ける。私を見定めようとする悪意は感じない、あるのは疑問だ。

「何故と聞くのも答えは出ないか。」

私が知っている事、その理由の説明を言ってどうするのか。

私が異質とわかっても、問題がなければそのままだ。それが自然であれば良い。
そう考えるのは知っている。


「記憶ですよ」

“死ぬまでの記憶”とは伝えず、嘘はつかない。それで通じるものがあるのか、どうか。


食事になり、暖かく種類も多い食事を楽しんだ。大人はお酒を入れて話をするらしい。
「もう寝ますね。」

子供なので立ち去った。今になって酒の苦さを喉が覚える。最期の時のあの苦さを焼けつくように思い出させた。
(別に思い出さなくて良いのに。)


だって私はお酒を口にしていない。“今の私”は知らない事だ。飲む気もないから記憶もいらない。そうやって選べれば良いのに。そう逃げてしまっても欲しい結果になるのか、怯えてしまう。

“きっとバレてない”そう思って眠った。


その後、机にあったワインが飲み干された。気に入ったのか?表情は苦く、師匠の日頃の表情からわからなかったらしい。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄は、嫌なのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:312

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:2,623

竜王の花嫁

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:2,077

癒しの聖女を追放した王国は、守護神に愛想をつかされたそうです。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:5,168

【武田家躍進】おしゃべり好きな始祖様が出てきて・・・

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:59

処理中です...