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新章

1-③

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窓からの景色を見る。緑の中に建物がニョキリと生えている。埋もれるように建っているのか?
郊外の大学とは、こうなのだろうか。
“緑が多いところで学園生活を”そんなポスターが思い浮かんだ。

知らない場所ではあるが、ゲームの世界は感じない。当たり前か、ゲームの世界へ行くといこと事態が、意味はわかるもののどうすのかさっぱり分からない。

「まだ月に行くための訓練所だって方が、イメージできるなあ。」

「お待たせしました。」
紅茶がまだ温かいうちに、入室する人がいた。以前に案内をしてくれたおじさま。

「クラークです。本名ではなくゲーム名で呼び合っているんですよ。」

イギリスの紳士に居そうな名前で、ベージュのスーツと白髪がとても似合う。意外と本名を使っていたりして。

「家名もあればそちらで通していて、あちらの世界に没頭しているのです。」
朗らかに笑って付け足されるが、偽名を名乗られている気分も少しする。

「私は、カイナと呼ばれるってことですか。」
「そうなりますね、カイナさん。」
名前そのままで使っているから、違和感はない。新しい職場はいろんなルールがありそうだ。

「これからの予定について、話をしましょうか。」
左上が止めてある印刷物を渡される。そこには、人が中に入るカプセルが図説されている。妙なお風呂にも見えるそれに、私が入るんだろうか。

「まず、健康診断からカプセルのサイズ、カスタムパーツの調整が入って、3日後に試験ダイブという予定になります。」

「ダイブ?」
「あちらの世界への通信と考えていただくと、分かりやすいかと。ざっくり申し上げると、体を眠らせて意識だけ送る形になります。その間はカプセルの溶液、あちらの言葉ではポーション(水薬)で満たされ保護されます。」

「水にずっと浸かっているんですか?」
風呂で溺れるイメージを思い浮かべてしまった。

「カイナさんは、呼吸ができる水というのをご存知ですか?」
「いえ」
私は素直に分からないないと答える。ゲームなんかでは、薬や道具で水ステージでも移動ができるけど、今いる現実では不可能だ。それに私は泳ぐのが得意ではないし、苦手意識も強い。

クラークさんの説明が続く
「水の中で呼吸できないのは、酸素が補給できないためでして。その酸素が水に溶けている状態で肺を満たせば呼吸が担えるのではないかという実験が既になされています。ネズミでの実験ですが成功しているのです。」

書類入れから出された端末で、動画でビーカーに入ったネズミが泳いでいる映像が見える。その水量はネズミの身長を優に越して、足は水を掻いている。
「溺れ、ないんですか?」

ネズミの足はバタついているけど、一向に止まる気配はなかった。
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