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整理と準備

13-②

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「おー元気か、ミナ」
「うん楽しくやってるよ」

帰って来た父に答える。本名はミナと読む。カイナは小学校の時に同級生が名前を読み間違えた時のもの。
その後友達になった。呼び名もそれになって、ゲームでは男キャラにも使って違和感がないので気に入っている。

ミナは、アイドルと同じ名前なのであまり気に入っていない。呼ぶのは家族と親戚かな。まあ改名したいとも思わないけど。私はカイナも大切だ。特に話題もないので、さっさと引き上げよう。

「部屋に居ようかな。」
「まだ部屋に引きこもる娘なのかな」


いつも部屋にばかりいたから、父にはその印象しか残っていないようだ。外出すると疲れるから、こもってゲームかネットだった頃の印象が強いらしい。後ろから、母が言葉を投げてくる。

「いい人、いないの~?」
「お母さんはそればっか」

やれ紹介したい人はいないのか、お見合いを考えないか?と話題の中心はそれに戻るので辟易する。
答えられているからって、気にしていない訳じゃないのに。他に話題はないの?

「あれじゃ嫁入り先はないなあ。」

追いついた父の声に(デリカシー、親しき仲にも礼儀あり)と心の中で唱える。
言い返したりすると口喧嘩になる。さらっと流すのが正解。少しの棘を感じたとしても。


数時間、クールタイムを設けて。そろそろ夕食の準備の時間かと思って、リビングに来た。
「隣、行くか?」

3つ上の兄とお義理姉さんが隣に住んでいる。父の質問に、母が答えた。

「夕食は一緒にする予定よ。」

暇なので訪ねても良い旨を話すと、父に回覧板を頼まれた。直ぐ家を出て隣。ピンポンを押せば、呼び鈴が家の中で鳴る。

「ああ、おかえり。」

兄が出た。帰った連絡入れていたので、驚きはないようだ。兄に父母の愚痴を吐いておく。

「2人とも歳だからなー。結婚予定はないのか?」
「ないね!」

「あっそ。まあ仕事頑張れ」

頑張ってるよ、とは返さず
「あ、これお菓子。お義理姉さんの趣味に合うと良いけど。」

おうありがとよと受け取った兄は、ついでとばかりに聞いてくる。
「趣味の方は?」
「細々やってる」

「そっか」

兄はゲームをやるタイプ。一緒にゲームをしたりもした。その記憶は遠くても、兄妹にはなんとなく戻る。

でもまあ5人になった家族の会話は、お客様のような位置の自分が異質に感じる。食事が終われば片付けは手伝って、「移動で疲れた」と部屋に戻った。


(逃げ出したいのかな?)

もやもやと考える自分の心が、何を求めているのか分からなくなっていた。
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