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整理と準備

13-③

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過去を見てみる。手に取ったノート、アイディア書きとデザイン画とは言いづらいイラスト。
「懐かしい」

よく読んでいた画集をペラペラとめくって、好きだった漫画が揃う本棚の前で思う。
(こんなにもつまらなく感じる)

とても楽しかったという記憶は残っていても、今それを感じることはない。それが寂しいのか、時間の経過としてよくある結果なのかはどう判断すれば良いのか。

「物はだいぶ少なくしたと思ったけど。売ろうかな、これ」

置いておくのもどうかと思った。この家に、私の痕跡がある事も違和感を持つ。

「リサイクルショップに持ち込んでみよう」

全部纏めても、それほど重くない。自転車の前後に乗せられそうな量を見繕う事にした。あと2日の実家で暇潰しを見つけた。

(欲しいと思わないのが、わるいの?)
多様性の世界なら、私の選択も尊重して欲しいってワガママなものなのかな?


過去を掘り返して、気持ちを逸らせる。でも、過去からじゃなくて、今のものから始まるんだと。夢がお嫁さんだったことはない。家庭を築くって大変過ぎて、考えられなかっただけでと思っていた。

私の人生にその選択がナイかもしれないって気づかずに。


『仕事されてて偉いわ』

お義理姉さんは、専業主婦。孫が楽しみな父母を知っているけど、流石にお嫁さんに圧はかけてないよね?今時やめなね。

“家庭と仕事どっちか“で考えているのは、お義理姉さんの思考で。私のものでは同じじゃない。


「そう」

波風立たないよう、無難に返す。そこから、話は旅行に行きたい話になって。家族旅行で行った場所、修学旅行でどこに行ったかの話になる。集中したら、小さく3箱に纏まった。

母の呼び声が聞こえる。
「お風呂沸かして入ってね」
「わかったー!」

ちょうど良い、準備して入った。
「ふぅーー」

ここはため息を吐いても許される場だ。足がなんとか伸ばせる風呂に入る。
(変わってない)

「私はそんなつもりもないよ」

相手がいないまま、呟いた。気分は駄々下がりだ。疲れより、ここの現実に。あそこの夢心地の夢中になれる世界が、すごく恋しい。学生時代を過ごした部屋は、変化なく私を迎え入れた。

ここに置いといた物は少ないけど、どれも持って行こうと思えないって分かった。



その頃、クラークの事務部屋にて。

「カイナさんは休みですか。」

端末で面会の予約をしようと見たが、留守な事に気づいた。彼女が刺激になって、潤滑油のように回り出す。

「あちらでもそうなんでしょうか?」

事と次第によっては、カイナのダイブを考えなければならない事態。その時風をしっかり感じていた。



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