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男爵の娘

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身分制度に、貴族のルールのある学園は
最初は馴染めないと決め切っていた。


そんなことより、大事なものがあるんじゃないかと思っていた。

ルールを作った人に優位なルールなんて

「ズルいわ。」

人が集まると、
騙したり、上前をはねたりする人もいる。

盗られる方は、
力も声も消されてしまう弱い人。


声をかけられないよう、
かけられたら、無事で済むようにひっそり暮らしている。

わたしが、男爵の娘だったからかな?


学園とは、

社会の縮図のような世界らしい。
ここにも、狡い人はいる。

そして、強い人に隠れてひっそり暮らしたいと思う人
その影で悪さをする、言葉で傷つける人もいたわ。


今も馴染んではいないと思うけど、やり過ごせていると思う。


煌びやかさも、
触れるくらいまで近くなったら

確かめたくなるというものだ。




その後で、『触れてはならりません』
と注意されても、


「もう触ってしまったのに、どうしろっていうのかしら?」

そう皆んなに話した後で、貴族のご令嬢達からのお小言はなくなった。

快適に、仲良く学園生活を送れた。
特に、勉学面は皆んなに手助けしてもらうことが多く、

「理解する力っていうのが少しはわかったか?」

「ゆっくり、じっくり見てあげる」

迷惑かけたけど、ごめんなさいではなく
「ありがとう」

そう笑顔で言うことは忘れなかった。

お母さんの教えだもの。

わたし、元気いっぱい過ごしてるよ。


学園とは遠くの領地で過ごしているお母さん。
手紙のやり取りもして、

いえ、わたしの方が多く送った。
皆んなの事をよく書いた。

お母さんの手紙には、どんな暮らしをしているか?
の返信に、『領地で穏やかに暮らしている』とだけの内容だった。
多分、代筆だろう。

手紙は少ないのは、お金がかかるから
慣れない男爵様の家で肩身が狭くないかな?


わたしができるのは心配だけ、か。
卒業したら、わたしの稼ぎを仕送りできる。

「学園から紹介された事務の仕事をして、幸せに暮らすの」

皆んな、卒業したら新しい門出を迎える。

宰相様、凄腕の騎士に、深淵の魔術師。
国一番の商人と、ソロS級の冒険者になるって。それと…

「王子様って職業なのかしら?」

そんなわたしの言葉に、皆んな笑ったけど


未来が決まった皆との学園生活を謳歌できたと思う。
いよいよ卒業。


その卒業パーティは、明日だ。
ドレスは皆んなが選んでくれた物。

お城で着付けてくれたらしい。

パートナーについては、秘密だ
と皆んな揃えて言うけど


「卒業パーティ、楽しみね!」

わたしは笑顔で言った。

この時は笑顔だった皆んな。

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