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セリは初めて町に連れて行ってもらうことになった。

料理長のバリスの操る馬が荷台を引く。
その荷台の後ろに足をぶらぶらさせながらセリは座っていた。

後ろの見張り!と後方を警戒中だ。
こうなった理由は使用人達の心配からだった。

魔法の訓練と
書庫に篭ってばかりの子供のセリに息抜きが必要だと総意があった。

「そういうところは当主そっくりだ」
と使用人の内で言っていた。
ああはなって欲しくないと、外にも興味を持って欲しいのだ。

それを
セリの目の前で言わないのは、
微妙な顔をするからだった

“会ったこともない親という当主様”
セリにとって影も形もわからない現当主の話はしないことになった。

当惑の表情をさせるのに忍びない。
今は次代の当主が健康に育ってほしいと思っている。

そして
連れ出す口実が、町へ食料の買い出しだった。

備蓄もあるが、町の
様子を見に行ったり

町の知人に会いにいくなど
出掛けることがある。

しかし、馬が必要な距離で
魔物が出る道行きだ。

「小物だが、馬車から降りるなよ?」
冒険者の目をしているバリスに従う。


様子を観察するセリ。

よく見る、剣を片手に2匹のウルフを狩りとる姿。
慣れた、料理のようにすぐ終わった。

血の臭いと死骸の回収を手伝ったセリは
町の冒険者ギルドへ向かった。


はじめての冒険者ギルド
冒険者たちの依頼を受ける場所と聞いた

冒険者が数人、食事をしている。
静かな時間帯だった。

物珍しく見回していたが、
受付について行った。

収納の腕輪に入れたウルフは合計で3体になった。

道から見た魔物の報告を入れる。
「ウルフが出るのはまずいな。依頼は出せるか?」
「はい。出しておきますね。」


「可愛い子が一緒ですねー。」
「セリュートです」ペコっとお辞儀する。
「うちの貴族家の子だ。」
貴族でも対応はそれほど変わらない。

「礼儀正しいわ。いくつ?」


「6歳です」

ギルドの登録は、10歳からと聞いた

魔法の適性検査ができる水晶があるときく。
「やってみっか?」

水魔法だ
特出していた。

「偏ってんなあ。」
「というより、水魔法だけ高いんじゃ?」
結果を受け、説明もしてもらった


その間、バリスは顔見知りの
冒険者を見つけて話している

討伐にも参加した、若い男3人だった。

「宿がイマイチでなー。」
「商人向けにできてっから」

世間話を聞いて、
依頼を見に行ってみた。


採取で知っている植物ばかりだった
魔物の討伐依頼を見る

兎や鳥の魔物なら、狙えるだろうか?
金額を確認し、資料を見せてもらった。


ざっと覚えれば
「そろそろ行くかー」

ギルドを後にする

「10歳になったら登録しに来てね」

貴族の子が登録できるのか?

できるわよ。圧力には屈しないけどね。

町に買い物をするため、市場に向かった。



活気に溢れている。

魔物の氾濫も小さいものだったし
はやいだろう。


「この町の力さ」

この日常を見せたかったのかもしれない。



飲み物を買ってくれた


賑わいを眺めて
知り合いのいない町を空っぽな私を感じた。

外を知った

帰れる場所があるのが良い
そのためには戦わなければ。

漠然とした感情に、形ができた。

それは私の未来のために


買い物をして帰った。




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