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変化

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その日、たまに顔を合わせることにした子爵夫婦と朝食をした後
いつもながら和やかと言い難い、他人同士の食事を終えると

それを見せられた。
セリュートが封を開け、ヴェーネン家に届けられた手紙を読む

『ーを後継人とする』

通告のような形式的な命令文簡潔で、分かり易い。そして

ー信じられない。
と言う言葉を飲み込み、

「子爵では、爵位が足りない。」不備だと主張する。

それでも目の前の男はニタリと笑うだけ。
封蝋で押された印は貴族院から。

ヴェーネン家として反論をすぐ出すことにし、子爵に図にのるなと言っておく。

「ガイサスが帰ってからだ。」と話を受け付けず、終わらせた。

「子供は大人の言うことを聴けば良い!」とくってかかってくる男に正論を叩きつける。

「この地を森を知らない大人に?
戦えもしない、馴染もうともしないのにか?

ここに必要なのは守り手だ!

ただの貴族じゃない。」

変わらずあんた達は居候のお荷物だという対応を続ける。

コレを読んだからと言って、私のやる事は変わらない。
森の監視、魔物の間引き

備蓄に冒険者との連携。


あの子爵相手に
冷静に答えたつもりだ。

でも、どんどん屋敷が不穏な空気に変わっていく。


冒険者からは、
「…でも、大人の言うことをきいたらどうだ?」
会話の中で歩み寄れと言い募る。

(裏切られた気分になるのは違う。)グッと我慢して、とセリュートは答えた。

「主張が違うんだ。そのまま聴けはしないよ。」
大人のフリをしているような錯覚と背伸びを思いっきりするしかない現状と

“はらわたが煮えくりかえる”
ってこう言う気分か。

若い冒険者は自身の昔と比べて口を挟む
全て子爵と夫人の言うことと、どこから言われているのか

“噂を聴いた”
から始まる自論。それが、助言だと思って話す。

『子供なんだから』と『子供だからこそ』
その“子供扱い”で答えを勝手に決めてしまう。

『まだ働かなくて良い年齢だ』
『大人の言うことをきくのも大事だ』

ああ。心がギシギシ音を立てる

なぜ、違うと分かっていることに従わなくてはいけないんだろう?
大人と言うだけで偉いんだろうか。

ただ居ついただけの他人なのに。


頭が痛いなあ。


そして、また朝食の席だった。

バサリと出される紙束
「婚約者を決めねばならないだろう?」
釣書というものだと察した。

「だとしても貴方の勧めに従う気はありません。」

サディスに回収させ、誰を勧めようとしたか
確認してもらった。

「子爵家に縁のある、お嬢様方ですね。
この方は騎士の御家柄です。」

執務室で見せられた釣書に脱力する


「あの人達、私の性別知ってる?」これは、マヌケと言うべきか
私の嫡男としての演技力が逸品なのか?

少々逡巡しているとサディスがひと言加える。
「わかるのも時間の問題かと」

そう。さすがに使用人からバレるのでは?
いや、古参の使用人から漏れる可能性は少ないか。

子爵に仕えたいという使用人の申し出も出ている現状だ。


「何か先手を打ちたいね?」

2人で思案した。
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