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077 エルダーリッチ
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イネスの活躍を見届けたシンは、一つの決意を終えた後、城壁を歩きゆっくりと最前線まで移動する。
そこから戦場を見渡し、そして気付いた。
やけに魔物の数が多い。まだほとんど倒すことができていないようだ。
(いや、倒せていないと言うより、これはむしろ――)
「くそっ、いったいどうなっているんだ!?」
怒りと困惑に満ちた声に反応し、シンが視線を向ける。
そこには、今回の総指揮を務める冒険者の姿があった。
どうやら、何か想定外の事態が起きているようだ。
シンは一つ息を吐いた後、その指揮官に声をかける。
「おい、何が起きてるんだ?」
「えっ? 君は確か第7班に所属していた……っ、そうだ! ルイン・ドレイクはどうなって――」
「それならもう片付いたから問題ない。そんなことより、今の状況を教えてくれ。魔物がほとんど減ってないように見えるが」
シンの問いかけに、指揮官は「片付いた? あのルイン・ドレイクを、誰かが倒したのか……?」と困惑した表情で呟いた後、すぐにハッと我に返った。
「それが……倒した魔物がすぐに復活するせいで、数が増える一方なんだ! 一体全体、何が起きているのか……」
「倒した魔物が、復活する?」
その言葉に、シンは眉をひそめた。
魔物が復活するなど、通常ではありえない現象だ。
何か、不吉な予感がシンの脳裏をよぎる。
――そして、その予感は見事に的中してしまった。
突如として空が暗くなったかと思えば、まるで太陽が消えたかのように辺り一面が影に包まれたのだ。
「っ、なんだ!?」
「急に空が真っ暗になったぞ!?」
「いや待て、あそこを見ろ! 何かがやってくるぞ!」
困惑する冒険者たち。
そんな彼らの元に、魔物の群れの奥から一つの影が現れる。
ローブを羽織った骸骨の姿。
それは紛れもなく、アンデッドの王として知られる魔物――リッチだった。
指揮官の表情が、一気に険しくなる。
「あれはまさかリッチか!? Sランクダンジョン【憑霊の墓所】に君臨するレベル2500のボスだが……目撃情報だけならともかく、これまでに討伐できたという話は聞いたことがない! ルイン・ドレイクに続いてこれだけの怪物が出現するなんて、いったいどうなっているんだ!」
驚愕と恐怖の入り混じった声を上げる指揮官。
しかし彼はまだ、これが絶望の入り口に過ぎないことに気付いていなかった。
「いや、どうやら違うみたいだぞ」
「えっ?」
隣に立つシンが、静かにそう告げる。
これまで数々の強敵と対峙してきた彼は理解していた。
目の前に現れた魔物が、その程度のレベルで済む相手ではないことを。
指揮官は遅れてリッチの詳細なステータスを確認し――絶望に目を見開いた。
――――――――――――――
【エルダーリッチ】
・レベル:5000
・ダンジョンボス:【憑霊《ひょうれい》の墓所《ぼしょ》】
・数多の魂を喰らい覚醒進化を遂げた、リッチの上位種。
――――――――――――――
「なっ! リッチの上位種……しかもレベルが5000だと!?」
レベル5000。
それは、この町のトップ冒険者をも遥かに凌ぐ脅威的な数値だった。
冒険者のほとんどが言葉を失う中、次に声を上げたのは意外な存在だった。
『ふむ。これはこれは、素晴らしい絶望の味わいだ……わざわざこうして、侵攻をしかけた甲斐があったというものよ』
そう告げたのは、圧倒的な存在感でこの場を支配する魔物――エルダーリッチだった。
魔物の中には稀に人語を介するものもいるが、それはごく一部の超上位個体に限られる。
エルダーリッチが発したのは、たった一文。しかしそのたった一文だけで、エルダーリッチは自身が理外の存在であることを全員に示してみせた。
指揮官は震えながら、エルダーリッチに向けて問いかける。
「まさか……今回のスタンピードを引き起こしたのは、お前なのか?」
その問いに問いに対し、エルダーリッチはカタカタと音を鳴らしながら、肉のない顔で笑みを浮かべた。
『その通りだ! 我は本来であれば、ダンジョンの最奥でただ挑戦者を待ち受けることしかできない無知なる存在だった。しかし、数多の挑戦者の魂を喰らったおかげで覚醒進化を遂げた我は、知性を獲得し会話すら可能になった。その後、ダンジョンの仕組みを解析して地上に出た我は、幾つかのダンジョンを開放し魔物たちを配下に加えた。そして世界を支配するに足る力を得たと確信し、こうして侵攻を開始したという訳だ――前置きは、この程度で十分か』
その言葉は、まさしく死神の宣告のようだった。
エルダーリッチの身体からは、恐ろしいほどの魔力が溢れ出している。
まるで、死そのものを具現化したかのような、冷たく重苦しいオーラ。
「ば、馬鹿な……こんな化け物が町に放たれでもしたら、世界が滅ぶぞ……!」
指揮官をはじめとする冒険者たちは、絶望に打ちひしがれていた。
彼らに今できることは、せいぜい町の被害を最小限に抑えることぐらい――いや、それすらも難しいだろう。
このエルダーリッチを前にして、勝利など夢のまた夢。
ただただ破滅を待つのみといった状況だった。
――だが。
この中でただ一人、例外が存在していた。
そこから戦場を見渡し、そして気付いた。
やけに魔物の数が多い。まだほとんど倒すことができていないようだ。
(いや、倒せていないと言うより、これはむしろ――)
「くそっ、いったいどうなっているんだ!?」
怒りと困惑に満ちた声に反応し、シンが視線を向ける。
そこには、今回の総指揮を務める冒険者の姿があった。
どうやら、何か想定外の事態が起きているようだ。
シンは一つ息を吐いた後、その指揮官に声をかける。
「おい、何が起きてるんだ?」
「えっ? 君は確か第7班に所属していた……っ、そうだ! ルイン・ドレイクはどうなって――」
「それならもう片付いたから問題ない。そんなことより、今の状況を教えてくれ。魔物がほとんど減ってないように見えるが」
シンの問いかけに、指揮官は「片付いた? あのルイン・ドレイクを、誰かが倒したのか……?」と困惑した表情で呟いた後、すぐにハッと我に返った。
「それが……倒した魔物がすぐに復活するせいで、数が増える一方なんだ! 一体全体、何が起きているのか……」
「倒した魔物が、復活する?」
その言葉に、シンは眉をひそめた。
魔物が復活するなど、通常ではありえない現象だ。
何か、不吉な予感がシンの脳裏をよぎる。
――そして、その予感は見事に的中してしまった。
突如として空が暗くなったかと思えば、まるで太陽が消えたかのように辺り一面が影に包まれたのだ。
「っ、なんだ!?」
「急に空が真っ暗になったぞ!?」
「いや待て、あそこを見ろ! 何かがやってくるぞ!」
困惑する冒険者たち。
そんな彼らの元に、魔物の群れの奥から一つの影が現れる。
ローブを羽織った骸骨の姿。
それは紛れもなく、アンデッドの王として知られる魔物――リッチだった。
指揮官の表情が、一気に険しくなる。
「あれはまさかリッチか!? Sランクダンジョン【憑霊の墓所】に君臨するレベル2500のボスだが……目撃情報だけならともかく、これまでに討伐できたという話は聞いたことがない! ルイン・ドレイクに続いてこれだけの怪物が出現するなんて、いったいどうなっているんだ!」
驚愕と恐怖の入り混じった声を上げる指揮官。
しかし彼はまだ、これが絶望の入り口に過ぎないことに気付いていなかった。
「いや、どうやら違うみたいだぞ」
「えっ?」
隣に立つシンが、静かにそう告げる。
これまで数々の強敵と対峙してきた彼は理解していた。
目の前に現れた魔物が、その程度のレベルで済む相手ではないことを。
指揮官は遅れてリッチの詳細なステータスを確認し――絶望に目を見開いた。
――――――――――――――
【エルダーリッチ】
・レベル:5000
・ダンジョンボス:【憑霊《ひょうれい》の墓所《ぼしょ》】
・数多の魂を喰らい覚醒進化を遂げた、リッチの上位種。
――――――――――――――
「なっ! リッチの上位種……しかもレベルが5000だと!?」
レベル5000。
それは、この町のトップ冒険者をも遥かに凌ぐ脅威的な数値だった。
冒険者のほとんどが言葉を失う中、次に声を上げたのは意外な存在だった。
『ふむ。これはこれは、素晴らしい絶望の味わいだ……わざわざこうして、侵攻をしかけた甲斐があったというものよ』
そう告げたのは、圧倒的な存在感でこの場を支配する魔物――エルダーリッチだった。
魔物の中には稀に人語を介するものもいるが、それはごく一部の超上位個体に限られる。
エルダーリッチが発したのは、たった一文。しかしそのたった一文だけで、エルダーリッチは自身が理外の存在であることを全員に示してみせた。
指揮官は震えながら、エルダーリッチに向けて問いかける。
「まさか……今回のスタンピードを引き起こしたのは、お前なのか?」
その問いに問いに対し、エルダーリッチはカタカタと音を鳴らしながら、肉のない顔で笑みを浮かべた。
『その通りだ! 我は本来であれば、ダンジョンの最奥でただ挑戦者を待ち受けることしかできない無知なる存在だった。しかし、数多の挑戦者の魂を喰らったおかげで覚醒進化を遂げた我は、知性を獲得し会話すら可能になった。その後、ダンジョンの仕組みを解析して地上に出た我は、幾つかのダンジョンを開放し魔物たちを配下に加えた。そして世界を支配するに足る力を得たと確信し、こうして侵攻を開始したという訳だ――前置きは、この程度で十分か』
その言葉は、まさしく死神の宣告のようだった。
エルダーリッチの身体からは、恐ろしいほどの魔力が溢れ出している。
まるで、死そのものを具現化したかのような、冷たく重苦しいオーラ。
「ば、馬鹿な……こんな化け物が町に放たれでもしたら、世界が滅ぶぞ……!」
指揮官をはじめとする冒険者たちは、絶望に打ちひしがれていた。
彼らに今できることは、せいぜい町の被害を最小限に抑えることぐらい――いや、それすらも難しいだろう。
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――だが。
この中でただ一人、例外が存在していた。
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