ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト

文字の大きさ
10 / 57

010 初めてのテイム

しおりを挟む
 ガレウルフを倒した直後、シャルロットから歓喜の声が上がる。

「や、やりましたね……!」

 俺は喜ぶ彼女にゆっくりと歩み寄る。
 危険な戦闘を潜り抜けたばかりだ。怪我がないか確認しないと。

「ご無事ですか?」

「は、はい。貴方の……レスト様のおかげです」

「っ!?」

 その返答に俺は思わず表情を凍らせた。

「どうして、俺の名前を……」

「そちらの木剣、エルナ様にいただいたものですよね? 私も同じものを持っていますから」

 シャルロットは凛とした面持ちで立ち上がると、改めて自己紹介をしてきた。

「大変失礼いたしました。改めまして、私はフィナーレ王国第二王女、シャルロット・フォン・フィナーレ。レスト様とは、同じ剣の師匠を持つ身でございます」

 一呼吸置いてから、シャルロットは感謝の言葉を口にする。

「この度は私をお守りくださったこと、心より感謝申し上げます。貴方の勇気と剣技に心から感服いたしました」

 畏まった口調と言葉。
 しかしそこでシャルロットは表情を崩すと、ゲームのイベントスチルにも負けない満面の笑みを浮かべて言った。

「本当に、ありがとうございます――レスト様!」

 その屈託のない笑顔に、俺はしばらく見惚れてしまうのだった。


 お互いの素性が判明した後。
 俺はシャルロットに兄たちの面倒を見てもらうよう頼んだ。

「申し訳ありません、俺は少しガレウルフの様子を見てきます。シャルロット様にはどうか、兄たちの手当てをお願いできますか?」

「はい、わかりました。お任せください」

 許可をもらった俺は、意を決してガレウルフの元に向かう。
 最後の一撃はかなり威力が出ていたようで、木々を数本超えたところにガレウルフが横たわっていた。

 シャルロットの位置からは、今から起きることが確認できないはずだ。
 ……俺にとって、この上なく都合がいい。

「ガルルゥ……」

 すると、足元から聞こえる弱々しい唸り声。
 立ち上がれないくらいに弱ってはいるものの意識はまだ失っていないようだ。
 その証拠に、ガレウルフの両目には力強さのようなものが宿っていた。

(よし、ここまでは上出来だ。後は、コイツが俺に仕える意思を見せてくれるかどうか……)

 ここから先は全ては運に委ねられている。だが、俺の決意に迷いはない。
 そう心に誓った時、目の前に突如としてウィンドウが現れた。


『ガレウルフが、自分を打ち破った強者である貴方に興味を持っています』
『ガレウルフが使役可能となりました。テイムしますか?』


 そのメッセージを見た瞬間、俺の胸中は歓喜に包まれた。

(やった……! テイムできるぞ……!)

 俺の意思を問うように浮かび上がったその文字。迷う理由などどこにもない。
 ガレウルフは俺を新たな主として認めてくれたのだ。

 高揚を隠しきれないまま、俺は優しくガレウルフの額に手を伸ばした。
 魔力を込めて静かに語りかける。

「ガレウルフ……俺が使役《テイム》する、初めての魔物になってくれ」

「……ガルゥ!」

 俺の言葉が通じたのか、ガレウルフは小さく、だけど力強い唸り声で応じる。
 直後、俺とガレウルフの間に眩い魔力が生じた。

 刹那、次々と現れていくメッセージウィンドウたち。


『テイムに成功しました』
『テイム対象が持つ力の一部が、あなたに与えられます』
技能アーツ【風魔法】を習得しました』
『初めてのテイムに成功したため、【縮小化しゅくしょうか】と【異空間住居いくうかんじゅうきょ】を習得しました』


「よしっ!」

 繋がる経路パス
 流れ込んでくる魔力と新たな力。
 確かな手応えと共に、俺は思わずガッツポーズをしていた。


 ――――そう。これこそがまさに、レストが最強に至ると考えた理由だった。


 レストの持つ【テイム】は魔物を使役できるだけなく、なんと使役した魔物の力を獲得することができるのだ。
 どの魔物にも共通しているのが身体能力ステータスの強化。さらに固有の技能アーツを持っている場合、その技能アーツすら使用することが可能となる。

 ちなみに技能アーツというのはゲームにも登場した単語ワードであり、主にスキル以外の技のことを指す。今回でいうならガレウルフが使用していた【風魔法】のことだ。

 ゲームのレストはこの力に溺れた結果、全てを失うという悲惨な末路を迎えた。
 だが俺は違う。欠点を補うべく鍛錬を重ね、強靭な肉体と精神を得た。
 ステータスを伸ばすだけでなく、師匠エルナに教えを請い剣技も磨いた。

 それらの努力は今後も怠るつもりはない。
 故に俺は、魔物を使役すれば使役するだけ強くなれるのだ!

(いける! これなら本当に、俺がこの世界で最強になれる!)

 言い表せないほどの興奮に包まれながら、俺は歓喜に打ち震えた。

 だが、ここで次なる問題が立ちはだかる。
 こんな大きな体のガレウルフを一体どうやって連れ帰れば良いのか。

 その答えは既に知っていた。
 先ほど授かったばかりの、【縮小化】と【異空間住居】を使えば良い。
 ガレウルフを小さくして異空間に待機させておけば、どこへでも一緒に連れて行ける。

「ガレウルフ……って毎回呼ぶには長いな。そうだ、名前の一部を取ってガレルってのはどうだ?」

「ガウッ!」

 嬉しそうに吠える姿を見て、俺は微笑んだ。

「よし、決まりだ。ガレル、お前の存在をひとまず周囲に隠しておきたい。この力を使わせてもらってもいいか?」

「クウゥン!」

 同意を得た俺はガレルを小さくし、異空間へと送り出した。
 これで屋敷に戻ってもテイムの力がバレることはないだろう。

 こうして、俺にとって初めてのテイムが無事に終了した。


 テイムを無事に終え、シャルロットのもとへと戻ろうとした次の瞬間だった。

「お嬢様!」

 森の奥から青髪の女性が慌てた様子で駆け寄ってくる。
 シャルロットの使用人であるエステルだ。

 傷だらけのシャルロットに、意識を失ったままの兄たち。
 その惨状にエステルの目が見開かれる。


「お嬢様、ご無事でしたか!?」

「エステル……ええ。実はガレウルフがもう一頭現れたのですが、何とか撃退することができました」

「なっ、ガレウルフがもう一頭!? しかも既に撃退を終えた後だとは……お嬢様みずからが戦闘を? それとも彼らがお嬢様を守ってくれたのですか?」

「いいえ、守ってくれたのは外でもない……」


 そう言ってシャルロットがこちらに顔を向けた。
 その結果、少し離れたところから様子を窺っていた俺と視線がぶつかる。

 すると、遅れてエステルも俺の存在に気付いた。

「っ、貴方は……!?」

 身構えるエステルに、シャルロットが優しく言葉を重ねる。


「大丈夫ですよ。こちらはアルビオン家のレスト様、私を救ってくださったお方です」

「なっ、ということは彼がガレウルフを!? 私ですら倒すのにかなりの時間を有したというのに、まさかこれほどの若さで成し遂げてしまうとは。それにレスト様といえば、確か【テイム】のスキルしか持っていないと先ほどお聞きした気が……」

「この目で見たので確かです。そうですよね、レスト様?」


 シャルロットが少し茶目っ気のある笑顔を向けてくる。
 俺はゆっくりと頷いた後、ガレルをテイムしたことがバレないよう、脚色交じりに経緯を説明することにした。

「はい。危険な戦いでしたが、なんとかガレウルフを退けることができました。殺すまでには至りませんでしたが、あの傷では追ってくる心配はないでしょう。ご安心ください、エステルさん」

「それはなんと! どれだけ感謝してもし足りません。また場を整えてしっかりとしたお礼をさせていただきたく……ん?」

 恐縮した様子で話し続ける彼女だったが、途中で何かに気付いたように小首を傾げる。


「気のせいでなければ今、私のことをエステルと……貴方にもう名乗りましたでしょうか?」

「あ、いえ、それは……」

「もう、エステルったら。私が先ほど貴方を呼んでいたのが聞こえたのでしょう」

「なるほど、そういうことでしたか。それでは私の方からも改めて……お嬢様をお守りくださり、本当にありがとうございました!」


 一瞬どう誤魔化したものかと狼狽えたが、運良くシャルロットが助け舟をだしてくれて事なきを得た。
 次からゲームの登場キャラクターに会う時は気をつけなくちゃな……

 っと、こうしてる場合じゃない。

「とりあえず、先にこの森から出ましょう。ガレウルフを退けたとはいえ、他にどんな魔物が出てくるか分かりませんから」

「それもそうですね。もう動けますか、お嬢様?」

「ええ、大丈夫です」

 その後は気を失ったエドワードたちを俺とエステルがそれぞれ担ぎ、屋敷への帰路を急ぐことになった。

 二人にはこの後、王女を危険に晒した愚行に対し何かしらの処分が下されることだろう。
 まあ、俺に影響が出なければそれでいい。


 何はともあれ、こうして長い長い一日がひとまず幕を閉じるのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...