51 / 98
第3章
25.やめて!私のために争わないで!!(side:俯瞰)
しおりを挟む
「準備はできたようだな」
作戦会議中であっても、あえて何もせず見守っていた男は改めて2人の前に立ちふさがった。
「あぁ、わざわざ時間くれてありがとうな」
「何を言う、作戦会議中であっても油断なくこちらの様子を伺っていただろう。先ほどの大胆な攻撃といい、冷静に戦況を見極めて勝ち筋を探る頭脳といい、嬢ちゃんは随分といい逸材を集めたものだ」
「逸材。俺たちがか?」
「ああ、嬢ちゃんは“奴”の定めたシナリオへの反逆を企んでいる。そのための駒として眼を付けたのが君達なんだろうな」
「反逆?シナリオ?何の事だ」
「それはいずれ嬢ちゃんが話すだろう。もっともその企みは私にバレた時点で終わりなのだが……」
くいっと男が後ろを指示した、そこには
「~~~!!!」
さきほど投げた腕……右腕の手で首を絞められてもがいてるエクレアの姿がみえた。
ランプは即座に助けに向かおうとするも男は手で静止する。
「話は最後まで聞きたまえ。あれは殺そうとするためではなく余計な横やりを入れられないようにしてるだけだ。今は殺す気はない……が、将来どうなるかは知らないがな。“奴”に消されるぐらいなら私の手で引導渡すのもこれまた一興」
くくくっと笑う男の狂気染みた声に思わずぞくりと寒気が走った。
ただしエクレアに関しては3人とは違う意味での寒気が走った。
「むぐ……(い、今のって……俗にいうヤンデレ発言……?)」
少々おかしな空気を感じてきたエクレアだが、横やりを入れる手段を物理的な意味でも封じられているので見守るしかない。
まさにイベントムービーをみているかのごとく、目の前の寸劇を見守るしかなかったのだ。
「さて、君達の取る選択肢は二つある。ここでの出来事は忘れて帰る事。嬢ちゃんはここに残ってもらう事になるが君達は今まで通りの日常は過ごせる。二つ目は」
「お前を倒せってことか」
「その通り、実にシンプルだろう。ほしいものは力で奪えばいい!この私のようにな!!!」
男の雰囲気が変わった。今までも尋常ならざる空気を纏っていたが、さらに濃くなったのだ。
男の銀の髪が黒く染まり、青白かった肌も黒味を強めていく。
瞳はマガマガしいまでに紅く深く輝き……
「そ、それは……エクレアの」
「『魔人化』というものらしいな。チートの恩恵もなくチートに等しい力を得るとはさすがとしか言いようがない。だが……それだけでは足りない。何もかもが足りないのだよ」
だんっと足を踏み鳴らす。
これもエクレアがお花畑で放った『震脚』だ。
ただし、威力はエクレアの比ではない。部屋に局地的な暴風のような衝撃が巻き起こった。
「最後のテストだ!我に勝て!!絶望に打ち勝って見せろ!!でなければ嬢ちゃんと共に歩もうだなど許さん!!!!歩みたければ我の屍を乗り越えてからにするがいい!!!!」
「むがーーー!!!?(なにその『娘がほしければ俺を倒してからにしろ』発言わぁぁぁぁぁ!!!!!)」
どうやらエクレアから奪い取った“狂気”は男の精神をマジで変な方向に捻じ曲げてしまったようだ。
おまけに……
「ははは!そうかそうか……絶望に打ち勝てか!実にシンプルじゃないか。気に入ったぜ……俺は、いや俺たちはその絶望に真っ向から立ち向かってる奴を知ってるからな」
「ん、この程度絶望に入らない」
「いやいや十分絶望的だって。それでも負ける気はさらさらないけど」
あの暴風で吹き飛ばされる事なく耐え切った3人は改めて男と対峙。
敵は『魔人化』状態の吸血鬼という、ボスの第二形態とも言うべき姿だが恐れる様子は全くない。
むしろ闘志がさらに増す始末だ。
そんな様子をみていたエクレアは……
「もがーーー!!(わー皆もやる気満々になってるしーこれ完全に『やめて!私のために争わないで!!』状態になってるぅぅぅぅぅぅぅう!!!!?)
まさに寸劇……
本来なら生きるか死ぬかの『DEAD OR ALIVE』の死闘が繰り広げられるはずの戦闘は、エクレア自身もよくわかってない乙女ゲームヒロイン補正によってまったくわけのわからない方向性に突っ走った戦闘に切り替わってしまった。
こうして男が舞台を見せるの言葉に嘘偽りのない強制イベントムービーの最終幕がまさに始まろうとしていた。
なお、そのイベントムービーを強制的に見せられる羽目になったエクレアは“死んだ魚のような目”になってたのは言うまでもない……
作戦会議中であっても、あえて何もせず見守っていた男は改めて2人の前に立ちふさがった。
「あぁ、わざわざ時間くれてありがとうな」
「何を言う、作戦会議中であっても油断なくこちらの様子を伺っていただろう。先ほどの大胆な攻撃といい、冷静に戦況を見極めて勝ち筋を探る頭脳といい、嬢ちゃんは随分といい逸材を集めたものだ」
「逸材。俺たちがか?」
「ああ、嬢ちゃんは“奴”の定めたシナリオへの反逆を企んでいる。そのための駒として眼を付けたのが君達なんだろうな」
「反逆?シナリオ?何の事だ」
「それはいずれ嬢ちゃんが話すだろう。もっともその企みは私にバレた時点で終わりなのだが……」
くいっと男が後ろを指示した、そこには
「~~~!!!」
さきほど投げた腕……右腕の手で首を絞められてもがいてるエクレアの姿がみえた。
ランプは即座に助けに向かおうとするも男は手で静止する。
「話は最後まで聞きたまえ。あれは殺そうとするためではなく余計な横やりを入れられないようにしてるだけだ。今は殺す気はない……が、将来どうなるかは知らないがな。“奴”に消されるぐらいなら私の手で引導渡すのもこれまた一興」
くくくっと笑う男の狂気染みた声に思わずぞくりと寒気が走った。
ただしエクレアに関しては3人とは違う意味での寒気が走った。
「むぐ……(い、今のって……俗にいうヤンデレ発言……?)」
少々おかしな空気を感じてきたエクレアだが、横やりを入れる手段を物理的な意味でも封じられているので見守るしかない。
まさにイベントムービーをみているかのごとく、目の前の寸劇を見守るしかなかったのだ。
「さて、君達の取る選択肢は二つある。ここでの出来事は忘れて帰る事。嬢ちゃんはここに残ってもらう事になるが君達は今まで通りの日常は過ごせる。二つ目は」
「お前を倒せってことか」
「その通り、実にシンプルだろう。ほしいものは力で奪えばいい!この私のようにな!!!」
男の雰囲気が変わった。今までも尋常ならざる空気を纏っていたが、さらに濃くなったのだ。
男の銀の髪が黒く染まり、青白かった肌も黒味を強めていく。
瞳はマガマガしいまでに紅く深く輝き……
「そ、それは……エクレアの」
「『魔人化』というものらしいな。チートの恩恵もなくチートに等しい力を得るとはさすがとしか言いようがない。だが……それだけでは足りない。何もかもが足りないのだよ」
だんっと足を踏み鳴らす。
これもエクレアがお花畑で放った『震脚』だ。
ただし、威力はエクレアの比ではない。部屋に局地的な暴風のような衝撃が巻き起こった。
「最後のテストだ!我に勝て!!絶望に打ち勝って見せろ!!でなければ嬢ちゃんと共に歩もうだなど許さん!!!!歩みたければ我の屍を乗り越えてからにするがいい!!!!」
「むがーーー!!!?(なにその『娘がほしければ俺を倒してからにしろ』発言わぁぁぁぁぁ!!!!!)」
どうやらエクレアから奪い取った“狂気”は男の精神をマジで変な方向に捻じ曲げてしまったようだ。
おまけに……
「ははは!そうかそうか……絶望に打ち勝てか!実にシンプルじゃないか。気に入ったぜ……俺は、いや俺たちはその絶望に真っ向から立ち向かってる奴を知ってるからな」
「ん、この程度絶望に入らない」
「いやいや十分絶望的だって。それでも負ける気はさらさらないけど」
あの暴風で吹き飛ばされる事なく耐え切った3人は改めて男と対峙。
敵は『魔人化』状態の吸血鬼という、ボスの第二形態とも言うべき姿だが恐れる様子は全くない。
むしろ闘志がさらに増す始末だ。
そんな様子をみていたエクレアは……
「もがーーー!!(わー皆もやる気満々になってるしーこれ完全に『やめて!私のために争わないで!!』状態になってるぅぅぅぅぅぅぅう!!!!?)
まさに寸劇……
本来なら生きるか死ぬかの『DEAD OR ALIVE』の死闘が繰り広げられるはずの戦闘は、エクレア自身もよくわかってない乙女ゲームヒロイン補正によってまったくわけのわからない方向性に突っ走った戦闘に切り替わってしまった。
こうして男が舞台を見せるの言葉に嘘偽りのない強制イベントムービーの最終幕がまさに始まろうとしていた。
なお、そのイベントムービーを強制的に見せられる羽目になったエクレアは“死んだ魚のような目”になってたのは言うまでもない……
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
モブ令嬢アレハンドリナの謀略
青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。
令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。
アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。
イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。
2018.3.26 一旦完結しました。
2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる