いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-(アルファ版)

やみなべ

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第3章

26.やめて……もう止めて……

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 突如始まった予想外のイベントムービーというか寸劇というか……
 変な乙女ゲーム補正によって全くわけのわからない方向で開始された戦闘は終結した。
 結果を一言で表すなら、蹂躙であろう。

 なにせ相手はかつての魔王と同じ種族である吸血鬼。成人である14歳にも満たない少年達が挑む時点であれなのに、第二形態へとパワーアップしたのだ。

 しかもそのパワーアップの元となってるのは、ゴブリン単体なら余裕でもりのくまさん魔熊相手だと無理程度の強さなエクレアがドラゴンをタイマンで倒せるまでの強さを引き上げる『魔人化』だ。

 それを最初っからドラゴンぐらい倒せるんじゃね?な強さを持ってる奴に施されたら………

 負けイベントまったなし。

 開始から10秒程度で3人は地面に寝転がる……俗にいう床ペロしていた。

「むー(ですよねーいくら右手が私の首を絞めるために使われてるせいで戦闘に使えないというハンデあっても元からのスペックが違い過ぎてハンデになってないし、あれ倒したいならもうチート持ちの勇者でも連れて来ないと無理っしょ)」

 とりあえず決着が付いたなら3人には帰ってもらおう。
 エクレアは取り残される形になるがこればかりは仕方ない。
 それに……エクレアには勝算はあった。
 勝てるわけがないラスボスクラスでも“狂気”を付与できたのだ。なら、時間かけて篭絡を仕掛ければいずれ骨抜きにできる可能性が高い。

(ラスボスを色仕掛けで落とすってどんなクソゲーなんだか……)

 それでも真正面から敵わないなら策略による搦め手は基本だ。外へ出るのは策略で勝利してからっと思いながら、今だけは敗北を認めるから3人を逃すよう念を飛ばしてみる。
 猿轡なしでも対話できたのだからなんとなく出来るかな~っと思ってたら

「敗北を認めるから彼等を帰らせろ?何を言っている。ここで死ぬようなら遅かれ早かれ死ぬのだ。なら今ここで死んだほうが彼等のためというものではないかね」

「むぐー!!?(念は届いたけど制御が効いてない!!?)」

 いや、そもそも“狂気”に浸食されてる奴に制御も何もないのだが、あいにく『正気のまま狂う』がデフォルト状態のエクレアはそのことに気付いてない。


「さぁ立つがいい。まだ立ち向かう気概があるというなら、再度かかってこい」

「と、当然だ……俺たちはまだやれる」

「まだ……戦える」

「勝ち筋なんてない……けど、諦めさえしなければ」

「むーーー!!(立たないでーこいつ絶対勝てないんだしもう諦めてー!!)」

 再度エクレアの飛ばした念もむなしく彼等は立ち向かい、血飛沫と共にまた寝転がる。

 だが彼等は立ち向かい……

「むーー!!(立ち向かっちゃダメ―!!)」



ドゴォ!!


 吹っ飛ばされて寝転がる。だが、また彼等は立ち上がり


「むむーー!!(だから立たないで!これもう負けイベントでどうあがいても勝てないんだから!!)」


バゴォ!!


 舞い散る血と共に寝転がる。それでも彼等は血をぬぐって立ち上がる。

「むー!!(離してー!介入させてーあの戦いに介入させてー!!)」


メキョ!!


 血飛沫と共に寝転がる。だがそれでも立ち上がる。

 無限ループの強制イベントだ。


 どうやらエクレア自身も知らない乙女ゲームヒロイン補正とエクレアの“狂気”が変に混ざりあったことでバグが発生したのだろう。
 彼等は全く同じことを繰り返す。

 わかりきった結果を何度も繰り返す。

 その無限ループをエクレアは止めようとした。
 縛っていた縄はそこらに転がっていた瓦礫の角にこすり合わせてなんとか断ち切った。
 急ぎかつ無理やりだったので両手首を激しく傷つけて血に塗れているが、手当する暇なんてない。
 それより今は最後の障害の除去をっと思って、首をつかんでる男の右手を引きはがそうとするも腕力が全く足りず……






ドン!!



「あぐっ!?」

 大人しくしてろっとばかりに壁際まで押し込まれて磔にされた。
 猿轡も外して口を開く事はできても、首を圧迫されてるせいで声がでない。




「こ……この……!!」

 エクレアは無意識ながらに影から闇の手を呼び出す。
 ゴブリンを飲み込んんだ時のように、男の右手を影の中へ引きずり込むとするも……
 右手は全く動かない。ウィンドウで『もっと弱らせるんだ!』のメッセージが出てるかの如く平然と耐えてるどころか……






バチッ!!!



「あがっ!?」


 右手から発した雷撃のような衝撃で闇の手が全て霧散した。
 以後は召喚しようとする度に雷撃を加えられて召喚をキャンセルされる。

 最早打つ手はなかった……


「はな……して……止めて……このままじゃ皆がしんじゃ……う……」

 必死に念を送るも止まらない。
 もう見たくないっと目を閉じても皆がが強制的に耳へ入り込んでくる。光景が脳裏に入ってくる。


「やめて……もう止めて……」

 泣き叫ぶかのごとく必死に懇願するも彼等は止まらない。
 彼等は取りつかれたかのように同じ動きを繰り返す。

 立ち向かい、寝転がる……


 その動きを何度でも、何度でも……





 立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる、立ち向かい寝転がる……



 何度でも、何度でも………






 何度でも………




 ………


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