いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-(アルファ版)

やみなべ

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第3章

27.ヤメテ……モウ……ヤメテ……

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 3人が立ち向かい、血渋木と共に床へと転がる。


 その光景を何度見続けたか……


 何度繰り返されたのか……


 あまりにも凄惨な光景。自分が拷問を受けた時の苦痛の方がマシかと思われるような精神へのダイレクトアタック。

 精神攻撃は基本っというが、エクレアにとってこうかはばつぐんだったのだろう。
 正気のまま狂っているエクレアの精神を見事にえぐり取ったのだ。


「ヤメテ……モウ……ヤメテ……」


 いつしかエクレアの瞳から“狂気”は消え去り、何も映らなくなっていた。




 まさに“死んだ魚のような目”でもって目の前の惨劇を呆然と見続けるだけであった……

 そんな永遠とも思える光景だが唐突に変化が起きる。


















「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 突如あがった絶叫、今までのループにはなかった変化……

 その声がエクレアを正気?に引き戻したようだ。
 先ほどまで全く焦点のあってなかった目が映し出したのは……

「あぁぁぁぁぁあがあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 絶叫を上げるローインであった。

 全身血塗れで必死に喉をひっかきながら苦しみもがくその姿は……『魔人』であった。

 金髪だった髪が黒く染まり、血濡れた肌も日焼けしたかのごとく黒く染まり。瞳は紅く深く………


「あれ……は……『魔人化』……」

 なぜローインが魔人化したのかわからない。
 わからないが、若干ながら生気と正気をもどしたエクレアは直感で感じた。

“まさか……あの薬を!!!?”

 エクレアが『魔人化』を会得するにいたった薬。通称『超神水』だが、あれは『飲んだ人絶対殺すマン』と言わんばかりな『殺意の塊』に溢れたデスポーションだ。
 飲んだものに訪れるのは確実な……『死』

 毒を無効化させるチートに似た特殊体質があったエクレアすらも6時間苦しみもがく羽目になったあれを……

 ローインは飲んだのだと直感した。

 すなわち、ローインはあの時エクレアが味わった苦しみに襲われているのだと予測される。
 常人ならまず耐えれない、死が癒しとも思えるような苦痛を……







ダン!!








 耐え切った。強く踏み込んだ気合の『震脚』でもって抑え込んだ。

 全身血塗れで絶え間なく流れ出る血。左腕は骨が折れているのか、だらんと垂れさがったまま。動かす度に噴き出す血は致死量に至らんばかりながらも、闘志だけは衰えない。
 消えかけのろうそくのごとく、残り少ない命を全て闘志に変換っとばかりに激しく燃え盛っていた。

 地を蹴る。

 その速度は常人の目では追えないほどの速さ。

 エクレアの場合はある程度制御をかけるが、ローインは制御などしない。
 する必要ないっとばかりに勢いそのまま男へと突撃。


ドゴン!!

 
 丁度エクレアのすぐそばの壁際まで押し込んだ。
 男から苦痛のうめきがあがるも、代償としてローインの左腕が壊れた。
 激突の衝撃に耐えきれず、聞くに堪えない音を響かせて壊れたのだ。

 どちらの方がより多くのダメージを受けたのか一目瞭然な有様だ。

「動かないで!薬を吐いて!!そうすればまだ助かる!!助かるから!!!」

 エクレアは叫んだ。訴えたつもりだったが実際は声など出てなかったのだろう。
 頸動脈を圧迫されてるのでまともに呼吸できないのだ。
 ほとんど口パクだったが、必死に訴えた。

 そんなエクレアを訴えはローインに届いたのか、ふいに目が合い……

 ふっと笑った。笑いながら唇が動く。

 何を言ったのかわからない。わからないが……多分おそらくエクレアにとって聞きたくない言葉だったのだろう。



「ーーーー!!!」

 もう自分でも何を言ってるのかわからない声をあげる。
 戦いに割り込もうとするも、磔にされた身体は縫い付けられたまま動けず………





 そして………










……………………


 決着はついた。


 閃光ともいうべき光と共に……



 無限ループは消え、結末は訪れた。


 ただし、その結末は………



 彼女にとって決して望んでいたものではなく




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 エクレアから絶叫があがった。
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