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百章 パラレルワールド
4-14 炎辰と翠蓮
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※すごいパラレルなんですが、この世界では炎辰はまだ罪を告白してない設定です…
――――――――――
室内に入ると、日は落ちているが燭台の灯りで中は明るかった。薄暗い廊下との違いに、翠蓮は一瞬目を細める。
暖炉は、つい先刻消えたような熱の余韻があった。消えかけた火に薪を焚べなかったのだろう。
分かっていたが、部屋に他の者はいない。二人だけと言う事実が、翠蓮の不安をかきたてる。
炎辰は、目の前の机に腰を下ろしていた。
「座れ」
劉剣が『手に負えない』などと言うから、よほど荒ぶっているのかと思ったが、彼は落ち着いて見えた。
少しでも距離を取りたくて、椅子を目一杯引き、浅めに腰を下ろす。
翠蓮がこちらに向いたのを確認すると、炎辰は口を開いた。
「どうせ劉剣から、出陣の件は聞いたのだろう?」
「はい……心配していらっしゃいました」
「付いてくる気はあるか?」
答えない翠蓮を見つめると、炎辰は愉快そうに喉を鳴らす。
「公平性にかけるんで言っておくがな――俺は目的のためならどんな汚い手も使う。
お前も"心当たり"があるだろう」
(汚い手……心当たり――)
翠蓮の胸に、以前炎辰に抱いた疑念が再び噴き出す。今まで自分の身に降りかかっていた厄災は、全て彼が仕組んだことなのではないか。
思わず立ち上がっていた。
「それは――」
「そうだ、いまさら気づいたのか?」
震える声で確認する。答え合わせをするように。
「試験も……衣装も……」
「そうだ」
「……夜宴の毒も?」
「いや……」
一拍。
炎辰は一瞬視線をそらし、すぐに戻した。
「……そうだ」
「助けてくださったと聞きました」
炎辰は答えずに視線を伏せた。
(否定しないというのは……)
信じたい気持ちもある。しかし翠蓮は力が抜け、気づけばどさりと椅子に身体を預けていた。
なぜ笑いながら罪を告白するのだろうか。そして、なぜ、自分の人生を壊そうとした炎辰に怒りが沸かないのか。
炎辰はそれ以上何も言わず、話題を切るように口調を変えた。
「このまま城に戻ったところで、お前は蒼瑛の隣で、誇りを持って立てるのか?」
翠蓮は思わずぴくりと肩を震わせる。
常に理智的で正しくあろうとする蒼瑛の顔が浮かぶ。
兵を歌で前線に送り出しておきながら、自分は危険を躊躇している翠蓮。
(きっと、蒼瑛さまは私を軽蔑する――)
翠蓮の弱い所をくすぐるように、低い声が響く。
「もう何も考えなくてもいい。
俺なら、お前の罪も苦しみも理解できる」
思考が一瞬緩む。
何も考えずに強者に付いていけば、そこに自分の責任はない。
だけど、それをしてしまったら、今度こそ蒼瑛に顔向けすることは出来ないだろう。
(あぁ……そうか――)
翠蓮は、炎辰を断罪できない理由が腑に落ちた。
罪を共有し、甘い沼に溺れたかったのだ。
翠蓮はゆっくり顔を上げた。
「同じ所に堕ちるつもりはありません」
炎辰の口元が、ふっと息をつきかけるが、それを待たずに翠蓮はつづけた。
「ですが、本陣には付いていきます」
想定外の答えだったのだろうか。彼は息を詰め、顔を歪めている。
「自分の犯した罪がどうなるか見届けます」
精一杯の反抗だった。翠蓮は再び腰を上げると、部屋の出口へ向かった。
「……あなたの罪を告発するつもりはありませんので、ご安心を」
今まで聞いたことのない、自分の声だった。
「――私とあなたは、共犯なのでしょう?」
炎辰を部屋に残し、翠蓮は静かに部屋を出た。
――――――――――
室内に入ると、日は落ちているが燭台の灯りで中は明るかった。薄暗い廊下との違いに、翠蓮は一瞬目を細める。
暖炉は、つい先刻消えたような熱の余韻があった。消えかけた火に薪を焚べなかったのだろう。
分かっていたが、部屋に他の者はいない。二人だけと言う事実が、翠蓮の不安をかきたてる。
炎辰は、目の前の机に腰を下ろしていた。
「座れ」
劉剣が『手に負えない』などと言うから、よほど荒ぶっているのかと思ったが、彼は落ち着いて見えた。
少しでも距離を取りたくて、椅子を目一杯引き、浅めに腰を下ろす。
翠蓮がこちらに向いたのを確認すると、炎辰は口を開いた。
「どうせ劉剣から、出陣の件は聞いたのだろう?」
「はい……心配していらっしゃいました」
「付いてくる気はあるか?」
答えない翠蓮を見つめると、炎辰は愉快そうに喉を鳴らす。
「公平性にかけるんで言っておくがな――俺は目的のためならどんな汚い手も使う。
お前も"心当たり"があるだろう」
(汚い手……心当たり――)
翠蓮の胸に、以前炎辰に抱いた疑念が再び噴き出す。今まで自分の身に降りかかっていた厄災は、全て彼が仕組んだことなのではないか。
思わず立ち上がっていた。
「それは――」
「そうだ、いまさら気づいたのか?」
震える声で確認する。答え合わせをするように。
「試験も……衣装も……」
「そうだ」
「……夜宴の毒も?」
「いや……」
一拍。
炎辰は一瞬視線をそらし、すぐに戻した。
「……そうだ」
「助けてくださったと聞きました」
炎辰は答えずに視線を伏せた。
(否定しないというのは……)
信じたい気持ちもある。しかし翠蓮は力が抜け、気づけばどさりと椅子に身体を預けていた。
なぜ笑いながら罪を告白するのだろうか。そして、なぜ、自分の人生を壊そうとした炎辰に怒りが沸かないのか。
炎辰はそれ以上何も言わず、話題を切るように口調を変えた。
「このまま城に戻ったところで、お前は蒼瑛の隣で、誇りを持って立てるのか?」
翠蓮は思わずぴくりと肩を震わせる。
常に理智的で正しくあろうとする蒼瑛の顔が浮かぶ。
兵を歌で前線に送り出しておきながら、自分は危険を躊躇している翠蓮。
(きっと、蒼瑛さまは私を軽蔑する――)
翠蓮の弱い所をくすぐるように、低い声が響く。
「もう何も考えなくてもいい。
俺なら、お前の罪も苦しみも理解できる」
思考が一瞬緩む。
何も考えずに強者に付いていけば、そこに自分の責任はない。
だけど、それをしてしまったら、今度こそ蒼瑛に顔向けすることは出来ないだろう。
(あぁ……そうか――)
翠蓮は、炎辰を断罪できない理由が腑に落ちた。
罪を共有し、甘い沼に溺れたかったのだ。
翠蓮はゆっくり顔を上げた。
「同じ所に堕ちるつもりはありません」
炎辰の口元が、ふっと息をつきかけるが、それを待たずに翠蓮はつづけた。
「ですが、本陣には付いていきます」
想定外の答えだったのだろうか。彼は息を詰め、顔を歪めている。
「自分の犯した罪がどうなるか見届けます」
精一杯の反抗だった。翠蓮は再び腰を上げると、部屋の出口へ向かった。
「……あなたの罪を告発するつもりはありませんので、ご安心を」
今まで聞いたことのない、自分の声だった。
「――私とあなたは、共犯なのでしょう?」
炎辰を部屋に残し、翠蓮は静かに部屋を出た。
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