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9 side公爵令嬢
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家に帰ると部屋に閉じこもる。
私の身体からパリパリと電流があふれ出していた。
(落ち着いて。落ち着いて。大丈夫、私は大丈夫よ)
そう自分に言い聞かせる。
生まれつき高い魔力のせいで、感情がたかぶるとコントロールができずに、魔力が暴走することがあった。
(幼い子どもの頃は仕方ないですまされたけど、もうそれでは許されないのに…)
暴走は雷で起きることが多かった。次に暴風。
殿下の私室で暴風を起こしたときは、部屋を半壊させてしまった。
(仕方がないよと言ってはくれたけど、そう思っておられないのは分かってる)
この歳になって、いまだ魔力コントロールもできないなんてーー
面と向かって言われることはないが、周りのみんながーー家族や婚約者である殿下ですらーーそう思っていることは知っている。
(公爵家令嬢として家族は私を大切にしてくれている。殿下だって、婚約者として心をくだいてくださっている)
それは知っていた。じゅうぶん理解していたが、彼女の存在がひどく自分を不安にさせた。
(大丈夫よ。私も殿下も過去の出来事を知っている。だから、同じ失敗はしないわ)
その日はそう思い続けた。
⭐︎
翌日、学院の廊下を歩いているとヒソヒソと話し声が聞こえた。
「…ってことがあったのよ!」
「へー。すごいわね。あのアース家の令嬢って聞いたからどんなご令嬢なのかと思ってたけど、意外とまともなのかしら?」
「まぁ、まだ本性はわからないけどね。わかっているのは、ものすごく賢いってことよ」
「それは、…試験の結果にも出てるしね」
「そうよ。順位だけみれば殿下がたより上なのよ」
「サチュルヌ様は大丈夫なのかしら?」
「サチュルヌ様も優秀な方だけど、欠点があるものね」
「あぁ。魔力コントロールができないってやつ?この歳になって本気なの?って思うけど」
つい立ち聞きしてしまったが、あまりの話に聞いていられなくなり、足早にその場を立ち去った。
パリパリと電流が流れはじめる。
(どこか、ひと気のないところに行かないと…)
あの程度の陰口なんて、言われなれているはずなのに。
(こんなことで揺らぐなんて、公爵家令嬢失格よ)
そう思っても、電流はおさまりそうにない。
(こんなところを見られたら、また何を言われるかわからないのに…)
早足で歩き続け、なんとかひと気のない校舎裏の中庭らしきところにたどり着いた。
そこに小さなベンチがあったので、座って電流がおさまるのを待つ。
「あのー、もしもし。具合が悪いんですか?」
目をつぶっていると、誰かが声をかけてきた。
ハッとして目を開けると、そこにはルナ・アースがいた。
「突然お声かけしてごめんなさい。でも、ずいぶん具合が悪そうなので。大丈夫ですか?医務室行きます?」
明るくはっきりした声。キラキラと輝く生き生きとした瞳。
(今だけは、彼女に会いたくなかったのに…)
「具合は悪くありません。少し休んでいるだけなので」
そう言って微笑む。
「そうですか?でも、顔色かなり悪いし、なんかパリパリなってますよ?誰か呼んできましょうか?」
すぐに立ち去ると思った彼女は、食い下がってきた。しかし、今は放っておいて欲しいのだ。
「大丈夫ですから、放っておいてください」
「そうですか。でも、なんかパリパリがだんだん大きくなってますけど…」
そう言って少し後ろにいる人物に目配せする。
彼女がすぐに立ち去らないこと。彼女がいつも1人ぼっちでないことに、感情が大きく揺らいだ。
苦しいとき、私はいつも1人なのにーー
いつもならなんとか押さえこんでいるそれを、止められなかった。
「ですからっ、もう放っておいてと言っているでしょうっ!」
その瞬間。
バリバリっドーン!という音がして、サチュルヌとルナの間に雷が落ちた。
私の身体からパリパリと電流があふれ出していた。
(落ち着いて。落ち着いて。大丈夫、私は大丈夫よ)
そう自分に言い聞かせる。
生まれつき高い魔力のせいで、感情がたかぶるとコントロールができずに、魔力が暴走することがあった。
(幼い子どもの頃は仕方ないですまされたけど、もうそれでは許されないのに…)
暴走は雷で起きることが多かった。次に暴風。
殿下の私室で暴風を起こしたときは、部屋を半壊させてしまった。
(仕方がないよと言ってはくれたけど、そう思っておられないのは分かってる)
この歳になって、いまだ魔力コントロールもできないなんてーー
面と向かって言われることはないが、周りのみんながーー家族や婚約者である殿下ですらーーそう思っていることは知っている。
(公爵家令嬢として家族は私を大切にしてくれている。殿下だって、婚約者として心をくだいてくださっている)
それは知っていた。じゅうぶん理解していたが、彼女の存在がひどく自分を不安にさせた。
(大丈夫よ。私も殿下も過去の出来事を知っている。だから、同じ失敗はしないわ)
その日はそう思い続けた。
⭐︎
翌日、学院の廊下を歩いているとヒソヒソと話し声が聞こえた。
「…ってことがあったのよ!」
「へー。すごいわね。あのアース家の令嬢って聞いたからどんなご令嬢なのかと思ってたけど、意外とまともなのかしら?」
「まぁ、まだ本性はわからないけどね。わかっているのは、ものすごく賢いってことよ」
「それは、…試験の結果にも出てるしね」
「そうよ。順位だけみれば殿下がたより上なのよ」
「サチュルヌ様は大丈夫なのかしら?」
「サチュルヌ様も優秀な方だけど、欠点があるものね」
「あぁ。魔力コントロールができないってやつ?この歳になって本気なの?って思うけど」
つい立ち聞きしてしまったが、あまりの話に聞いていられなくなり、足早にその場を立ち去った。
パリパリと電流が流れはじめる。
(どこか、ひと気のないところに行かないと…)
あの程度の陰口なんて、言われなれているはずなのに。
(こんなことで揺らぐなんて、公爵家令嬢失格よ)
そう思っても、電流はおさまりそうにない。
(こんなところを見られたら、また何を言われるかわからないのに…)
早足で歩き続け、なんとかひと気のない校舎裏の中庭らしきところにたどり着いた。
そこに小さなベンチがあったので、座って電流がおさまるのを待つ。
「あのー、もしもし。具合が悪いんですか?」
目をつぶっていると、誰かが声をかけてきた。
ハッとして目を開けると、そこにはルナ・アースがいた。
「突然お声かけしてごめんなさい。でも、ずいぶん具合が悪そうなので。大丈夫ですか?医務室行きます?」
明るくはっきりした声。キラキラと輝く生き生きとした瞳。
(今だけは、彼女に会いたくなかったのに…)
「具合は悪くありません。少し休んでいるだけなので」
そう言って微笑む。
「そうですか?でも、顔色かなり悪いし、なんかパリパリなってますよ?誰か呼んできましょうか?」
すぐに立ち去ると思った彼女は、食い下がってきた。しかし、今は放っておいて欲しいのだ。
「大丈夫ですから、放っておいてください」
「そうですか。でも、なんかパリパリがだんだん大きくなってますけど…」
そう言って少し後ろにいる人物に目配せする。
彼女がすぐに立ち去らないこと。彼女がいつも1人ぼっちでないことに、感情が大きく揺らいだ。
苦しいとき、私はいつも1人なのにーー
いつもならなんとか押さえこんでいるそれを、止められなかった。
「ですからっ、もう放っておいてと言っているでしょうっ!」
その瞬間。
バリバリっドーン!という音がして、サチュルヌとルナの間に雷が落ちた。
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