48 / 66
【9】 三年目の花が咲く キラキラは罪を生む
⑥ 花泥棒の報い
しおりを挟む
七月に入ると、また人々が花畑に溢れる。
あれから特に何事も起こらなかった。父曰く『監視カメラに気がついたのかもしれないな』とのことで、二度と起きなければこのまま静観を続けるというオーナーとしての判断を伝えられた。
だが優大は毎日、彼女のアカウントを監視し、三島先生も彼女を刺激しない投稿を心がけてくれていた。彼女も変わらずにキラキラした雑貨やスイーツに買った洋服などを投稿して元の生活に戻ったように見える。ママさんたちのボランティアも継続、一般のお客様が気にしないようにと『ご案内役』という腕章をつけて庭を歩いているが、実際のところは『監視』でもあった。
そのおかげなのか、やっと美羽が好きな時に庭でスケッチを楽しむように戻れた。
平日もそれなりのお客様が出入りする季節。明日はまた土日でたくさんの人が来るだろうけれど、金曜日の庭は静かに風の音が聞こえる。
人が少なめでも満開の花に溢れているガーデンを楽しむ人々もまだいて、丘に夕の茜が差すまでゆったりと楽しんでいた。
美羽も学校から帰宅してから庭に出てきた。お気に入りのリバティプリントのブラウスを着て、また姉と同じ姿をして笑って後をついてくるようになって、ホッとしている。
そして姉の舞も、妹の美羽も、言葉にはしなかったがわかっているのだ。『夏休みの間に東京へ戻る時が迫ってきた』ということを。最後を楽しかった日々で締めくくりたい。大人の姉と子供の妹という差があっても通じているのが、舞にも伝わってくる。
「これがラベンダーなんだ。いい香り。いっぱい咲いているのを見るのは初めて」
石畳の小路に座り込んで、大好きなスケッチを始めた。
平日の夕方。お客様も帰路へつき、徐々に静かになっていく。ガーデンには遠くの鳥の鳴き声と風の音だけになる。丘の羊たちも牧羊犬に急かされ、頂きの小屋へと消えていく。
舞も広い庭を一巡りして、明日へと備える。そして今日も何事もなかったか、心の奥を固くして警戒しているこの気持ちにまだ慣れずにいる。もし、またどこかの花が無残にちぎられていたら、あのような哀しみには二度と遭いたくない。
どこも綺麗なままだったので、ほっとして、妹が夢中になっていたラベンダーがある小路へと戻ろうとした。距離はそんなに離れていない。そちらへ足を向けた時だった。
『いや! お姉ちゃん! 助けて!』
美羽の声が聞こえてきた。妹の泣き叫ぶその声だけで、舞は青ざめる。
『やめて、やだ、やめてえーー』
尋常じゃない叫び声。舞だけじゃない、まだ庭を楽しんでいた数人だけのお客様も何事かと、声がする方へと緊張を募らせ表情を固めている。
『おまえのせいで、ちっともフォロワーが増えなくなっただろ! おまえがあのとき、素直に写真を撮らせてくれなかったからだよ! なにを投稿しても文句つけてくるようになったのも、おまえんとこのオヤジとスタッフが監視して嫌がらせしてるんだろ!』
そんな奇声も聞こえてきた。
『切ってやる、花も、おまえも、このシャツも!』
駆けていく舞の目、背が伸びたデルフィニウムとジキタリスのてっぺんに、ハサミを持って振りかざす手だけが見える。美羽が切られる、傷つけられる! 間に合わない! ここを、あの子にとって恐怖の場所にしないで! 後でどうなってもかまわない。もう力一杯、あの女に突撃してやる! そう意気込んで、ラベンダーの路へと辿り着いた途端――。森から一斉に何羽ものカラスが、黒い弾丸のように飛び出してきたのだ。
けたたましくカアカアと声を上げ、黒い大きな羽を広げ女に突撃していく。細くて鋭い爪先の足を向けて、ハサミを持っている女へと飛びついていた。
「なんだよ、やめ、いや、いや、来ないで! なによ、これ!!」
一人の女へと十何羽も群がるカラスは、彼女を真っ黒な塊で封じ込めているようにも見える。彼女の足下では、髪もブラウスも掴まれたのか乱れた姿の美羽がへたり込んでいるだけで、妹にはカラスはまったく触れもしない。それどころか女が美羽から離れるように、どんどん路の奥へと押し込めて移動させている。
その隙に舞は、美羽へと駆け込む。
「美羽! 大丈夫!?」
「お姉ちゃん! あの人、いきなりハサミで……。私の髪とかブラウスとか切ろうとしたの。ラベンダーも……」
美羽がスケッチしていたラベンダーが、石畳の道ばたに何本も切り落とされ落ちていた。美羽を恫喝しながらまたもや花を切り落としたようだった。
「大丈夫だからね。すぐパパと優大君を呼ぶから。警察も!」
スマートフォンを取り出し、舞はすぐに父と警察へと連絡をする。父も驚いて、すぐにこちらに来るとのことだったが、まだカラスがカアカアと叫び、あの女性へとまとわりついている。彼女ももう発狂したような声で、道ばたに倒れて手と足をバタつかせカラスを追い払うのに必死なだけになっている。
『なにあれ。カラスに襲われてるの。怖い』
『女の子が叫んでいただろ。あいつハサミを振りかざしていたのを見たぞ』
残っていた少しのお客様も口々にそう呟き始めている。しかもスマートフォンで撮影している人までいた。
美羽も震えていたはずなのに、突然の有様に茫然として逆に落ち着いたようだった。
「ねえ、お姉ちゃん。私のこと、助けてくれたんだよね。あのカラスたち」
舞もわかっていた。あれはカラク様の仕業だ。だから舞は美羽をぎゅっと抱きしめ、確信を持って伝える。
「この庭の守り神なのよ。あのカラスたちは」
「そうなんだ。毎日、森から遊びに来ているから、大事にしてくれていたってことなんだね」
「花を大事にする美羽のことも、きっと見ていたんだよ。見守ってくれていたんだね、大事に大事に……」
情けないけれど、もう泣いていない美羽の目の前で、姉の舞のほうが涙を流していた。きっと庭をずっと見守っていて、妹のことも。あの女がなにかをしたら、許さない気持ちでいてくれたんだ……と。『罰に値しますよ』と冷酷な面差しで呟いていたカラク様の声が蘇ってくる。
「舞、美羽!」
父が黒いバリスタエプロンをしたまま駆けつけてきた。
「パパ!」
美羽が父の胸元へと飛び込んでいった。初めてのことだった。父も青ざめた顔で娘を強く抱き返している。本当の父娘になれたように舞の目には映る。
「優大君が警察に連絡したから、すぐにあの人を連れて帰ってくれるからね」
「私もしちゃったよ……110番……」
「だったらなおさら緊急で来てくれるだろう」
もうカラスの声は聞こえなくなっていた。通路の向こうへと視線を向けると、女は地面に寝転がったまま動かなくなっているので、舞はまたどっきりと跳び上がりそうになる。
「気絶しているんだ」
父に教えてもらい、舞はホッとしたものの、どれだけ凄まじい責め苦をカラスから受けたのか、やはりゾッとさせられた。カラク様の怒りも相当なものだったのだろう。そのカラスたちは、まだアカエゾマツの枝先に止まって、グワグワ、ギャアギャアと異様な声で鳴き続けている。俺たちはまだ見ているぞと威嚇しているよう。
「不思議だね。一人に狙いを定めたようにカラスが襲うだなんて」
同じ場所にいた美羽には一羽も飛びかからず、無傷なうえに、襲われたところを阻止してくれたことに父も気がついている。
「きっとあの人が、この庭の花を虐めていたのをずっと見ていたんだよ。だってカラスの大事な遊び場だったんだもの」
子供らしい言葉と捉えたのか、父がまた慈しむように娘を見て強く抱きしめていた。
やがてパトカーが二台と救急車までやってきて、ガーデンカフェの周辺が騒然となった。お客様にはお詫びを告げ、早々に店じまいをして庭から退去もしてもらった。
香水瓶の彼女は気絶したまま救急車で運ばれていった。病院で気がついたら警察が事情聴取をするとのことだった。
しかしこの事は、地元でニュースになり、地方新聞では【花泥棒 SNSで逆恨みか】と報道されてしまった。彼女のアカウントは活動していないが、そのまま残っていて、ガーデンから盗まれた花を投稿していたスレッドに、カラスに襲われる彼女を撮影したお客様がそのまま動画をくっつけて投稿してしまい、SNSでもちょっとした騒動になっていた。
そのせいで、今度はガーデンカフェに、騒動についての問い合わせが増えてしまい、また父が対応の追われることになった。
あれから特に何事も起こらなかった。父曰く『監視カメラに気がついたのかもしれないな』とのことで、二度と起きなければこのまま静観を続けるというオーナーとしての判断を伝えられた。
だが優大は毎日、彼女のアカウントを監視し、三島先生も彼女を刺激しない投稿を心がけてくれていた。彼女も変わらずにキラキラした雑貨やスイーツに買った洋服などを投稿して元の生活に戻ったように見える。ママさんたちのボランティアも継続、一般のお客様が気にしないようにと『ご案内役』という腕章をつけて庭を歩いているが、実際のところは『監視』でもあった。
そのおかげなのか、やっと美羽が好きな時に庭でスケッチを楽しむように戻れた。
平日もそれなりのお客様が出入りする季節。明日はまた土日でたくさんの人が来るだろうけれど、金曜日の庭は静かに風の音が聞こえる。
人が少なめでも満開の花に溢れているガーデンを楽しむ人々もまだいて、丘に夕の茜が差すまでゆったりと楽しんでいた。
美羽も学校から帰宅してから庭に出てきた。お気に入りのリバティプリントのブラウスを着て、また姉と同じ姿をして笑って後をついてくるようになって、ホッとしている。
そして姉の舞も、妹の美羽も、言葉にはしなかったがわかっているのだ。『夏休みの間に東京へ戻る時が迫ってきた』ということを。最後を楽しかった日々で締めくくりたい。大人の姉と子供の妹という差があっても通じているのが、舞にも伝わってくる。
「これがラベンダーなんだ。いい香り。いっぱい咲いているのを見るのは初めて」
石畳の小路に座り込んで、大好きなスケッチを始めた。
平日の夕方。お客様も帰路へつき、徐々に静かになっていく。ガーデンには遠くの鳥の鳴き声と風の音だけになる。丘の羊たちも牧羊犬に急かされ、頂きの小屋へと消えていく。
舞も広い庭を一巡りして、明日へと備える。そして今日も何事もなかったか、心の奥を固くして警戒しているこの気持ちにまだ慣れずにいる。もし、またどこかの花が無残にちぎられていたら、あのような哀しみには二度と遭いたくない。
どこも綺麗なままだったので、ほっとして、妹が夢中になっていたラベンダーがある小路へと戻ろうとした。距離はそんなに離れていない。そちらへ足を向けた時だった。
『いや! お姉ちゃん! 助けて!』
美羽の声が聞こえてきた。妹の泣き叫ぶその声だけで、舞は青ざめる。
『やめて、やだ、やめてえーー』
尋常じゃない叫び声。舞だけじゃない、まだ庭を楽しんでいた数人だけのお客様も何事かと、声がする方へと緊張を募らせ表情を固めている。
『おまえのせいで、ちっともフォロワーが増えなくなっただろ! おまえがあのとき、素直に写真を撮らせてくれなかったからだよ! なにを投稿しても文句つけてくるようになったのも、おまえんとこのオヤジとスタッフが監視して嫌がらせしてるんだろ!』
そんな奇声も聞こえてきた。
『切ってやる、花も、おまえも、このシャツも!』
駆けていく舞の目、背が伸びたデルフィニウムとジキタリスのてっぺんに、ハサミを持って振りかざす手だけが見える。美羽が切られる、傷つけられる! 間に合わない! ここを、あの子にとって恐怖の場所にしないで! 後でどうなってもかまわない。もう力一杯、あの女に突撃してやる! そう意気込んで、ラベンダーの路へと辿り着いた途端――。森から一斉に何羽ものカラスが、黒い弾丸のように飛び出してきたのだ。
けたたましくカアカアと声を上げ、黒い大きな羽を広げ女に突撃していく。細くて鋭い爪先の足を向けて、ハサミを持っている女へと飛びついていた。
「なんだよ、やめ、いや、いや、来ないで! なによ、これ!!」
一人の女へと十何羽も群がるカラスは、彼女を真っ黒な塊で封じ込めているようにも見える。彼女の足下では、髪もブラウスも掴まれたのか乱れた姿の美羽がへたり込んでいるだけで、妹にはカラスはまったく触れもしない。それどころか女が美羽から離れるように、どんどん路の奥へと押し込めて移動させている。
その隙に舞は、美羽へと駆け込む。
「美羽! 大丈夫!?」
「お姉ちゃん! あの人、いきなりハサミで……。私の髪とかブラウスとか切ろうとしたの。ラベンダーも……」
美羽がスケッチしていたラベンダーが、石畳の道ばたに何本も切り落とされ落ちていた。美羽を恫喝しながらまたもや花を切り落としたようだった。
「大丈夫だからね。すぐパパと優大君を呼ぶから。警察も!」
スマートフォンを取り出し、舞はすぐに父と警察へと連絡をする。父も驚いて、すぐにこちらに来るとのことだったが、まだカラスがカアカアと叫び、あの女性へとまとわりついている。彼女ももう発狂したような声で、道ばたに倒れて手と足をバタつかせカラスを追い払うのに必死なだけになっている。
『なにあれ。カラスに襲われてるの。怖い』
『女の子が叫んでいただろ。あいつハサミを振りかざしていたのを見たぞ』
残っていた少しのお客様も口々にそう呟き始めている。しかもスマートフォンで撮影している人までいた。
美羽も震えていたはずなのに、突然の有様に茫然として逆に落ち着いたようだった。
「ねえ、お姉ちゃん。私のこと、助けてくれたんだよね。あのカラスたち」
舞もわかっていた。あれはカラク様の仕業だ。だから舞は美羽をぎゅっと抱きしめ、確信を持って伝える。
「この庭の守り神なのよ。あのカラスたちは」
「そうなんだ。毎日、森から遊びに来ているから、大事にしてくれていたってことなんだね」
「花を大事にする美羽のことも、きっと見ていたんだよ。見守ってくれていたんだね、大事に大事に……」
情けないけれど、もう泣いていない美羽の目の前で、姉の舞のほうが涙を流していた。きっと庭をずっと見守っていて、妹のことも。あの女がなにかをしたら、許さない気持ちでいてくれたんだ……と。『罰に値しますよ』と冷酷な面差しで呟いていたカラク様の声が蘇ってくる。
「舞、美羽!」
父が黒いバリスタエプロンをしたまま駆けつけてきた。
「パパ!」
美羽が父の胸元へと飛び込んでいった。初めてのことだった。父も青ざめた顔で娘を強く抱き返している。本当の父娘になれたように舞の目には映る。
「優大君が警察に連絡したから、すぐにあの人を連れて帰ってくれるからね」
「私もしちゃったよ……110番……」
「だったらなおさら緊急で来てくれるだろう」
もうカラスの声は聞こえなくなっていた。通路の向こうへと視線を向けると、女は地面に寝転がったまま動かなくなっているので、舞はまたどっきりと跳び上がりそうになる。
「気絶しているんだ」
父に教えてもらい、舞はホッとしたものの、どれだけ凄まじい責め苦をカラスから受けたのか、やはりゾッとさせられた。カラク様の怒りも相当なものだったのだろう。そのカラスたちは、まだアカエゾマツの枝先に止まって、グワグワ、ギャアギャアと異様な声で鳴き続けている。俺たちはまだ見ているぞと威嚇しているよう。
「不思議だね。一人に狙いを定めたようにカラスが襲うだなんて」
同じ場所にいた美羽には一羽も飛びかからず、無傷なうえに、襲われたところを阻止してくれたことに父も気がついている。
「きっとあの人が、この庭の花を虐めていたのをずっと見ていたんだよ。だってカラスの大事な遊び場だったんだもの」
子供らしい言葉と捉えたのか、父がまた慈しむように娘を見て強く抱きしめていた。
やがてパトカーが二台と救急車までやってきて、ガーデンカフェの周辺が騒然となった。お客様にはお詫びを告げ、早々に店じまいをして庭から退去もしてもらった。
香水瓶の彼女は気絶したまま救急車で運ばれていった。病院で気がついたら警察が事情聴取をするとのことだった。
しかしこの事は、地元でニュースになり、地方新聞では【花泥棒 SNSで逆恨みか】と報道されてしまった。彼女のアカウントは活動していないが、そのまま残っていて、ガーデンから盗まれた花を投稿していたスレッドに、カラスに襲われる彼女を撮影したお客様がそのまま動画をくっつけて投稿してしまい、SNSでもちょっとした騒動になっていた。
そのせいで、今度はガーデンカフェに、騒動についての問い合わせが増えてしまい、また父が対応の追われることになった。
1
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる