拝啓 愛しの部長様

鏡野ゆう

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第三部 バレンタインと元嫁襲来の巻

第十六話 レッツ、ダイエット?

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「あわわ……」

 自宅でお風呂上りに体重計に乗った時、出た数値に思わず声が出てしまった。ふ、増えているっ!! 実家に戻った時でさえそんなに増えていなかった体重が明らかに増えている!!

「ひえぇぇぇ、これはダイエットしないと……」

 皆さん、新年はいかがお過ごしだったでしょうか、宮内愛海、二十一歳……あ、今年の四月末には二十二歳になるんです、エッヘン。

 年の話は横に置いておいて。

 今年のお正月は部長の御実家にお邪魔しちゃいまして、そちらで破格待遇で過ごさせていただきました。多分それが体重増加の主たる原因。実家に戻れば雪おろしやお爺ちゃん達の手伝い、そして地元の友達とスキー三昧と意外と動き回ってるんだけれど、今年は本当に上げ膳に据え膳。御馳走を美味しく頂くばかりだったので、そのつけが今になって押し寄せてきたようです。

 そりゃもっとふくよかな身体になりたいとは思ってますよ? でも、それは部分的なところだけであって、余分なお肉がお腹とか二の腕についてプニプニ出来るようになるというのとは別な話なわけで。これは忌々しき問題、しばらくはケーキは封印かな。

 そんな訳で、いつも利用するバス停も一つ先のところまで歩くことにして、会社にもお弁当持参へと切り替え中。栄養のバランスは大事なので普段食べているモノと内容はそれほど変えずに余分な油を落としたりして工夫してます。うちの社食、美味しいし安いから有難いんだけど量がちょっと多いのが難点なのだ。

「あれ、愛海ってお弁当持ってきてたっけ?」

 一緒に食べることにしている千夏ちゃんが私のお弁当箱を見て首を傾げた。

「ううん。最近は社食を利用していたんだけどね、お正月に体重が」
「あー……誰しもが通る道よね」
「上げ前据え膳で怠けていたら余分なお肉になっちゃったよ。だから元に戻るまではダイエット」
「見た目は全然変わってないよ?」

 そう言ってくれるのは有難いんだけど、体重が増えたのは確かなことだし。そりゃ鏡の前で見た限りでは変わっていないような気もする。だけど増えている分は確実に何処かについている訳だし、油断していたらポッコリお腹になっちゃうよ。それに部長に見られるんだもの、やっぱり綺麗なままでいたいじゃない?


+++++


「体重が増えた?」

 その週末、部長のお宅にお邪魔して夕飯を食べている時にその話が出た。ちなみに部長のところで作る料理は普段通り。部長にまで付き合わせる必要はないし、そこは私が食べる量を控えれば良い訳だし。

「部長はどうでした?」
「俺はそれほど変わってないような気はするが」

 ズボンがきついとか自覚症状は無いらしい。ってことは私だけが太っちゃったの?

「あれだけ運動していればそんなに心配することも無いと思うんだがな」
「運動なんてしてないですよ?」
「あっちでは毎晩のようにしていただろ?」
「ぶ、部長、あれは運動とは言わないですっ」

 神戸では二晩しか泊まっていないのにゴムを買いに行かなきゃいけない事態になったと言えば、どんなふうだったか分かってもらえるかと思う。その時のことを思い出したら急に身体が熱くなってしまった。私って部長と付き合うようになってからどんどんエッチになってると思うんだけど……。

「……煽るな」

 顔を赤らめていた私を見ていた部長がニヤニヤ笑いながら言った。

「煽ってなんかいませんよーだ。だいたい誰のせいだと……」
「俺のせいか?」
「他に誰かいるとでも?」

 きっとその時の私って凄く恨めしそうな顔をしていたに違いない。

「俺のせいなんだろうな、恐らく。まあとにかくだ、一度ちゃんと見てやろう、本当に太ったかどうか。それからにすればいいんじゃないのか、ダイエットは」
「は?」

 それってどういうこと? だって明らかに体重が増えているんだから太ったのは間違いないんですよ? そして後片付けを終えた頃、先にお風呂に入っていた部長に呼ばれた。最近お風呂は一緒に入ることが多くなったから、別に何の疑問も無く浴室に入った。湯船に浸かっていた部長が、その縁に座れと手で示す。

「?」

 お湯を体にかけながら首を傾げる。まあ部長のことだから逆らったら色々と後が厄介なので、今は大人しく従ってあげることにした。部長はそんな私のウエストに両手を当てて、ふむと考え込んでいる。

「見た感じはまったく変わっていないんだがな……ここは逆に細くなった気がするぞ? どのくらい増えたって?」
「えっと……二キロぐらい」

 ウエストにあった手が肌を滑るように移動して胸を包み込む

「ここは大きくなったって前に言ったよな? だけどそれだけで二キロはないよな」
「……っ、やんっ」

 先端を指で弄られて思わず声が出てしまうと部長は満足げに笑った。

「だから可愛い声を出して煽るなって」
「部長が触るからいけないんですっ」
「そりゃ目の前にお前がいるのに触るなって言う方が無理な話だ」

 そう言うと、背中の方へと手を回しお尻の方にまで手を降ろしてろから首を傾げる。

「もしかして、ここか?」
「え? うそっ、ほんとにっ?!」

 慌てて後ろを振り返って自分のお尻を確かめようした私の様子を見ていた部長がクスクスと笑いだす。え、もしかして冗談だったの? もう、部長ったら酷いよ。

「大丈夫だ、お前の尻は綺麗なままだ。さ、調査は終了。そろそろ中に入れ。また風邪をひくぞ」

 向かい合ったままでお湯に浸かる。部長は私を抱き寄せてキスしてくれた。

「毎週のように抱いている俺にはお前が太ったとは思えないんだがな」
「でも二キロって結構な重さですよ? 大きなペットボトル一本」
「その位の増減は普通なんじゃないのか? お前が気にし過ぎなような気がするが。俺としては、これ以上は瘠せて欲しくないんだが」

 ゆるゆると優しく背中を滑る部長の手が心地良くて、目がとろんとしてきちゃった。こういう瞬間に、私の体って本当に部長に馴染んじゃったんだなって思う。

「しばらく様子見をしてみたらどうだ? 適度な運動は良いとしても、そんなに神経質になってダイエットをしなきゃいかん状態とは思えんぞ。しばらくすれば元に戻るかもしれないだろ?」
「そうかなあ……」
「お前のことだらちゃんと考えてするだろうが、過激なダイエットをして仕事中に倒れたとかは御免だからな。現にそういうことが何年か前にあったらしいし」

 そしてニヤリと笑った。

「心配するな。ここにいる間はきちんと運動させてやる」
「だからそれは運動じゃないですよぅ」
「遠慮するな」

 遠慮とかそういう話じゃないですよぉと訴えても聞いてくれる筈もなく。

「だいたいですね、部長ってなんでそんなに体力が有り余ってるんですか。普通その年の人ってもうちょっと淡白な気がするんですけど」
「なんだろうなあ……それこそ愛のなせる業ってやつじゃないのか? それにだ」

 その悪人みたいな笑みはやめましょうよ、部長。本当に悪人にしか見えないから……。

「俺が元気な方がお前だって嬉しいだろ?」
「そういう意味じゃないんですよぉ……私は別にエッチしなくても部長と過ごせたら満足ですし」
「ふーん……」
「そりゃ、エッチした方が更に幸せですけど……」
「だろ?」

 いやだから、だろ?じゃないんですってば。

「俺はそろそろ逆上せそうだから先にでる。お前も出来るだけ早く出てこいよ」

 そして早く抱かせてくれと囁いて先に部長は出ていった。そんな囁きにさえ体が反応しちゃうんだから、どんだけ私ってば部長に弱いんだろう。ふぅと溜息をつくとお湯にしっかりと浸かった。
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