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2.気になることあんだよね

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「どんな武器が来るのかな~っ」
自分に見合った武器を支給されると聞き、リオスは眠れない様子だった。
「なあ、あんたは気にならない?」
ミツハは目を擦りながら
「…寝ないのか?」
とダミ声を発する。
「いーじゃんいーじゃんこれから長い付き合いになるんだし、語り明かそうぜ~っ」
部屋が用意してあるとは言っていたが、まさか相部屋になるとは予想外だった、と思いつつミツハはため息をつく


「武器ねえ…刀と銃があればいい」
「雑っ!違う違う、もっとこう…さ、あるじゃん?何口径の反動少なめの~とかさ」
正直銃の扱いには無知なので、リオスの話は話半分で聞いているミツハ。


「んーじゃあさ、俺一つあんたに気になることあんだよね、それ教えてくんない?」
話題に乗らないと悟ったのか、リオスは話を変えてきた。
「…なんだよ?」
もう寝たい衝動が抑えられないミツハは勘弁してくれと言わんばかりの低い声で返す。


「あんた最初の自己紹介のとき俺は復讐をするために来たんだー!とか言ってたけどさ、どんな事情があったの?てかあれで自己紹介って呼べんの?」
調子に乗って肩をバンバンと叩いてきたリオスに蹴りを入れながら、ミツハは
「んなもんどうだっていいだろう。…こっちとしては、少年兵上がりのお前がなんでそんなにテンション高いのか疑問だな。人を撃ちまくって悲壮感に溢れてるのが少年兵ってもんだと思ってたが」
と、疑問だなを口にする


逆に質問かよ~と、リオスは不満そうな顔をしたが、
「んまあいいや、長いくなるから覚悟しろよ?…俺はさ、最初銃ってのが大嫌いだったんだ」
と語り出した。


「村の財産に目が眩んで、俺の親を、村のみんなをぶっ殺した集団がいた。そのとき俺はガクガクと部屋の隅っこで早く終わってくださいーって虚しく震えてたんだよな」
「そいつらの中に火の能力者がいたみたいでさ、最後に村を焼き払おうとしやがった」
「俺は慌てて逃げたけど、そのときにそいつらの1人に見つかっちまったんだ。やばい死ぬ、と思ったけど、そいつ、俺を撃ってきたりはしなかった。」
「むしろ俺の手をとってそいつらとは反対方向に走り出した」
「そいつが言うには、もともと村全体を襲うなんて計画には反対だったらしい。でも、能力者には逆らえなかった。当時の能力者は珍しく、絶対的な力があったからな」
リオスは遠くを見つめながら
「当時の俺なら、あんたがさっき言ってた悲壮感に溢れてる哀れな子供だったかもな~。まだ人殺してねーけど」
と、続けた。


「俺を助けたのはエリックっつってな、そいつらに対して憤りもあったらしい」
「そこで俺に交渉をしてきた」
「助ける代わりに一緒にあいつらをぶっ殺そうってな。エリックもエリックでまともなやつじゃあなかったってことだ」
「ただ、あいつらを野放しにしておけばまたいつか別の村が襲われるのも事実。あいつらと同じように武器を持つなんて絶対に嫌だったが、俺はその交渉を飲んだ」
「もともと筋が良かったんだろうな~。少し扱いを学んだらすぐに撃てるようになった」
「たったの2日でそいつらのアジトに乗り込んださ。んで最初のひとりをぶっ殺した時、俺は今まで味わったことのない快感を感じた」
「復讐を果たすのはなんて気持ちいいんだ、こいつらを殺しても俺はなんの罪悪感もないってな」
「エリックとともに復讐を果たした俺は、すっかり銃の魅力に取りつかれちまって、少年兵への入隊を希望した。エリックは反対だったみたいだがな」
「そっからは各地を渡り歩いて戦ってきた。銃をぶっぱなせるならどんなことだってやってきた」


「でも、ある日それでいいのかって思えてきてな。上の命令で殺そうとしたやつにも家族がいて、帰りを待つやつらが沢山いる。これじゃあ俺の村を焼き払ったやつと同じじゃねえかって思ったんだ」
「そこで俺が見つけたのがこの組織だ。犯罪者相手に正義の鉄槌を下す、なんてカッコイイじゃねえか。しかも簡単に殺すと判断しないってのがまた俺をひきつけた」
「そんで俺は、ここにいるってわけだな」
リオスはまたミツハに視線を戻す。


「どうよ、俺のこと少しは分かってくれた~?」
と、わざとらしく体をくねらせて近づいてくるリオスに対しまた蹴りを入れたミツハは
「…まあな、そうか、復讐は気持ちいいものなのか…」
とブツブツと呟いた。
「俺の話ちゃんと聞いてた?あんた。」
リオスは若干頬をひきつらせながら
「話してたらなんか眠気が…もう寝るわ~」
とベットにダイブしていった。


「いつかちゃんと聞かせろよー、あんたの過去さー」
電気を消した部屋で、対面のベットからリオスの声が聞こえてくる
「…ああ」
ミツハはいずれこいつには話す時が来るかもしれない、と思いつつ、眠りについた
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