寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank

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第9話

「奥様、こちらはぼっちゃまからです」

「・・・・・・本?」

「はい。奥様がお暇じゃないかと王宮の図書室で借りたそうですよ。
こちらに置いておきますね」

サイドテーブルに置かれたのは、数冊の小説だった。
読んだことのない冒険小説に推理小説。
一番上の小説を手に取ってページをめくると、小さなカードが挟んであった。

“熱が出たと聞いた。
大丈夫だろうか?
安静に過ごして欲しい。
図書室で本を借りた。
少し元気になったら読んでみてくれ。

クライブ”


私はあの日仕事を切り上げて男爵家に帰宅すると、夕刻辺りから熱を出して三日間ほぼベッドで眠り続けた。
疲れが溜まっていたのかもしれない。
水分をとり、汗をかけば着替えて、スープなど消化の良いものをとり、後はひたさすら眠った。

そのおかげか、熱が下がた頃には心なしか気分もすっきりしていた。


火傷はというと、少しヒリヒリ痛む程度の割には数カ所に水疱ができて、症状は悪いように見えた。

毎日医師が往診に来てくれ、軟膏を塗って包帯を交換してくれる。

「あと3日もすれば、仕事復帰も可能でしょう。
ただ、きれいに治るまで少し時間がかかります。
目立つ場所ですから、気なるなら手袋をされたら良いかと」

食欲が復活し、侍女の仕事にスムーズに戻れるように散歩をしたり、なるべく動くことを心がけ、空いた時間はクライブ様が借りてくれた小説を読んでいると、あっという間に3日が過ぎた。

私は、皮膚が数カ所明らかに薄く、ピンク色になっている左手の甲を見てため息をついてから、医師にもらったクリームを塗って手袋をした。

医師はこの火傷の跡がきれいに治るような話をしていたけれど、正直信じられなかった。
きっと私の手を10人見れば10人が驚くような、いや不快に思われてもおかしくない状態だろう。
とてもじゃいけれど、貴族女性の手ではない。

『お医者様の言葉を信じましょう。
ぼっちゃまでしたら全く気にしないですから、御心配なさらないでください』

サンディーさんはそう言ってくれるし、優しいクライブ様なら私が気にする発言はきっとしない。


でも、自分自身はそうは思えなかった。



仕事復帰したものの、手袋をした私には『傷物』と聞きたくなかった言葉が耳に入ってきた。






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