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第8話
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ステラ様は何か言いながらクライブ様の頭へ手を伸ばすと、髪についていたと思われる葉を払った。
その動きはとても自然で。
「・・・クライブ・・・・・・」
ステラ様の口から、クライブ様を呼ぶ声が微かに聞こえた気がした。
私はいつの間にかあの場を去っていたようで、気づいた時には離宮へ続く道を歩いていた。
足が離宮へ向かって勝手に進んでいる妙な感覚は、自分の中にぽっかり穴が開いたような虚しさを感じさせた。
仕事中は普段通りに立ち振る舞っていたはずだったのに、きっとどこか気が抜けていたんだろう、紅茶を淹れる際にお湯を手の甲にかけてしまい火傷を負ってしまった。
「すぐに冷やしたのは良かったですが、多分水疱ができるでしょう」
医師には軟骨を塗って包帯を巻かれ、1週間は仕事は休むことを勧められた。
私はフランシス様に事情を説明し、不手際を謝罪した。
ゆっくり休んできて。フランシス様は火傷を心配してくれ、その日は仕事を切り上げることになった。
少し時間が経つと、自分の仕事中の行いに自己嫌悪に陥ってきた。
個人的な問題があるからといって、仕事は仕事。
それなのに、自分は何をやっているんだろう。
勝手に傷ついて、上の空になって。
ため息をついて男爵家の迎えの馬車を待っていると、誰かが走ってくるような足音が近づいてきた。
「シドニー!」
「クライブ様・・・・・・」
思いもよらない人が目の前に現れてただ驚いた。
「・・・大丈夫か?」
クライブ様は包帯が巻かれた私の手を見つめると、優しくその手を取った。
「ええ、仕事中に失敗して。
侍女失格ですよ」
「そんなことはない。
痛むのか?」
「少し」
手よりも胸が痛むとは、言えない。
『もう会うことはない』
あの言葉は嘘だったの?
そう聞きたいのに、言葉が出なかった。
「ゆっくり休んでくれ。
医師の手配は済ませておく」
「ありがとうございます」
「まだしばらくは帰れそうにない」
そう話すクライブ様の少しこけて見える頬は忙しさを物語っているようだった。
「クライブ様のほうこそ、休める時は休んでください」
「ああ」
到着した馬車にクライブ様の手を借りて乗り込んだ。
「シドニー、着替えをありがとう」
遠ざかっていくクライブ様を見つめながら思い出すのは、ステラ様と一緒に居た姿だった。
その動きはとても自然で。
「・・・クライブ・・・・・・」
ステラ様の口から、クライブ様を呼ぶ声が微かに聞こえた気がした。
私はいつの間にかあの場を去っていたようで、気づいた時には離宮へ続く道を歩いていた。
足が離宮へ向かって勝手に進んでいる妙な感覚は、自分の中にぽっかり穴が開いたような虚しさを感じさせた。
仕事中は普段通りに立ち振る舞っていたはずだったのに、きっとどこか気が抜けていたんだろう、紅茶を淹れる際にお湯を手の甲にかけてしまい火傷を負ってしまった。
「すぐに冷やしたのは良かったですが、多分水疱ができるでしょう」
医師には軟骨を塗って包帯を巻かれ、1週間は仕事は休むことを勧められた。
私はフランシス様に事情を説明し、不手際を謝罪した。
ゆっくり休んできて。フランシス様は火傷を心配してくれ、その日は仕事を切り上げることになった。
少し時間が経つと、自分の仕事中の行いに自己嫌悪に陥ってきた。
個人的な問題があるからといって、仕事は仕事。
それなのに、自分は何をやっているんだろう。
勝手に傷ついて、上の空になって。
ため息をついて男爵家の迎えの馬車を待っていると、誰かが走ってくるような足音が近づいてきた。
「シドニー!」
「クライブ様・・・・・・」
思いもよらない人が目の前に現れてただ驚いた。
「・・・大丈夫か?」
クライブ様は包帯が巻かれた私の手を見つめると、優しくその手を取った。
「ええ、仕事中に失敗して。
侍女失格ですよ」
「そんなことはない。
痛むのか?」
「少し」
手よりも胸が痛むとは、言えない。
『もう会うことはない』
あの言葉は嘘だったの?
そう聞きたいのに、言葉が出なかった。
「ゆっくり休んでくれ。
医師の手配は済ませておく」
「ありがとうございます」
「まだしばらくは帰れそうにない」
そう話すクライブ様の少しこけて見える頬は忙しさを物語っているようだった。
「クライブ様のほうこそ、休める時は休んでください」
「ああ」
到着した馬車にクライブ様の手を借りて乗り込んだ。
「シドニー、着替えをありがとう」
遠ざかっていくクライブ様を見つめながら思い出すのは、ステラ様と一緒に居た姿だった。
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