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デート

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『もうすぐ着きます』と連絡をして、駅の改札を出る。駅から少し歩いて待ち合わせ場所の時計まで向かえばひときわ背の高い素敵な男性が立っている。本当に、僕にはもったいないぐらいカッコいい人。
この人が僕の彼氏なんて信じられる?
たぶん彼と出会う前の俺に言っても信じてくれないよ。俺だって未だに信じがたいもん。

あ、目が合った。

俺に気づいた彼が手を振ってくれるので、俺もそばに駆けつけながら彼に向かって手を振る。

「お待たせしました」
「俺もいま来たところだよ」
「…信じがたい」

俺の彼氏である宏平さんは顔が整っているというのはもちろん、高身長、高学歴、高収入。
その上、威張り散らすDomも多い中、Domなのに超がつくほど紳士的で、老若男女関係なく惚れてしまうであろう人。俺を待たせたくないあまりに一時間半も早くに待ち合わせ場所に来てしまうという優しさと可愛らしさを持つ。
俺よりもふたまわり年上(ちょうど干支が同じ!)の彼は理想的な年の重ね方をしているように思う。自分が童顔なこともあって余計にカッコよく思える。
宏平さんは俺が出会ってきた中で誰よりもヒゲが似合う大人だ。冗談抜きで。

対して俺はしがない大学ニ年生のSub。
そのへんにある石ころみたいなもん。ひょっとしたら石のが有用かも、いや、石よりはさすがに使えるかな? 単位もまだ落としてないし。バイトもそこそこ頑張ってるし。


「行きたいところがあれば言ってね。どこでも連れて行ってあげる」
「どこでも?」
「…地球上なら」
「っはは!」

月に行きたいと言えば彼はなんと返事をしたのだろうか。
真面目で誠実すぎるところも可愛らしく見えて、さらに彼を好きになってしまう。しかし同時に彼があまりに理想的な人間すぎて自分なんかが恋人でいいのかという気持ちにもなってしまう。

宏平さんは俺の全部が好きだと言ってくれる。
その言葉はすごく嬉しい。でも、所詮はDomとSubの関係に過ぎないよと思ってしまう自分も確かにいる。
そんなこと、彼には言えないけど。

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