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癖
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「やっぱり39にもなるとガッツかなくなるもんなんだなぁとおじさんは思いますよ。時期に40になるだけの事はあるなぁ」
「そうですか」
辰巳さんは、うんうんと頷いてて、どうしてそう思うのかって、裸で横たわる私に膝枕してくれて生の尻を撫でているからだと思うの。
私は膝に置かれた辰巳さんの手で遊んでる。
おっきい、おっきい男の人の手、指絡ませたり触ってるだけで気持ちいい、ゴツゴツしててドキドキする。
白くて綺麗、長くてしなやか、爪ピカピカ自分で頬に持ってきたり手の平に唇寄せたりしてみる温かい。
「くすぐったいな」
「ごめんなさい」
「いいよ可愛い」
裸への羞恥心はさっきトイレで真っ青になりながら辰巳さんに寄り掛かっていっぱい体擦ってもらっている内に消えた。
「普通だったらもう合体してると思うんですが、惑星の理性が僕には宿ってますから体調不良の寧々ちゃんの介抱が先」
「ありがとうございます」
服は着てもいいんだけど(辰巳さんは着てる)、また吐くかもしれないから止めておこうという方向で話が固まった。
正直エッチな気持ちなんて一瞬で消え去った、それくらい気持ち悪かった、吐いた後は寒気と冷や汗と震えが止まらなくて軽く恐怖すら覚えて辰巳さんにしがみついて体を温めて貰った。
死ぬかと思ってちょっと泣いた。
「こんな酷い二日酔い生まれて初めてです」
「そうですね、これが毎回だと体壊しそうですね」
「ちょっと……うん……色々って訳じゃないんですけど、毎日の積み重ねみたいのが爆発してしまって昨日は飲みすぎてしまいました」
「心配だったけれど、昨日は決起会だったから、アプリも僕らが営業するし開発の方に顔出さなくてはいけなくて、あの席を離れるのは心苦しかったよ。と言っても後ろにいたけどね」
「ビッチなのも攻め上手なのも私の漫画の話です」
「ええ、分かりました。でもそれって願望だったりするの」
「?」
お尻きゅって掴まれて見上げたら、眼鏡の奥の翡翠が笑う。
「色んな人とエッチがしたくていっぱい攻めたいって気持ちを漫画にぶつけてるんですか」
「…………い、意地悪な聞き方しないでください」
「ふふふ」
と辰巳さんは笑って髪を撫でてきて、あれ何だか冷静になってくるとこの状況って凄いな。
ってゆうか、辰巳さんこそ。
「あの……童貞って嘘でしょう、辰巳さん全然素人な感じしないんですけど」
「ありがとう、気持ち良かった?」
「違ッ!」
「違うの?」
「よくわからないですけど! 初めての人もっと私みたいにビビるでしょ!」
「もちろん本当に童貞ですよ。ちょっと演技もしてみましたけど僕は女性とセックスした事がないです、ペッティング止まりです」
「ペッティング?」
「そう、前戯までです」
「……」
「女性を愛せるのがそこまでだったんですよ。だから相手を満足させたら、エッチはまた今度と逃げてフェードアウトしてました」
「ふぅん? 何で? 入れないんですか? ちょっとよくわかんないです」
「簡単ですよ」
「…………」
長い人差し指を立てると、秘密、と言わんばかりに小さな声で、
「勃たなかったってだけの話です。その人との未来やら将来を考えると欲よりもそっちに思考が働いて萎えます」
そして眼鏡が光った。
「僕はこれをSpace Wall現象と読んでいます」
「う、宇宙の壁……」
辰巳さんはまた私の体をそっと撫でて溜め息を吐いた。
「何の病気かと思ったんですが、病でもなんでもない、ただそれ以上の興味がなかっただけでした」
「…………」
「その証拠に寧々君の髪を触らせてもらっただけで僕反応しましたから」
「ちょっと何気持ち悪い事言ってんですか止めてください」
「ふふふ」
つつつ、っといきなり指先がお尻や腰をなぞってきて、ぎゅって大きな手握って体がびくんってして。
「あっ……んん」
「凄い敏感、前戯だけで随分可愛く乱れていたもんね、入れた時の寧々ちゃんも見たいな」
「ゾクゾク……辰巳さん、ゾクゾクやだ」
お尻のラインを指先が甘く這って愛撫を思わせる動きに呼吸が苦しくなる。
引き寄せた手を口に持ってきて自分から舐めて噛み噛みして体捩って濡れてくる。
「随分やらしい舌の動きさせるね。僕にもして」
「んんんっ……」
顎上に向けられて綺麗な顔が迫ってくる。
開いたままで唇が重なってゆっくりじっとりディープなキスをされた。
口から卑猥な音がする、辰巳さんの匂いがする息がかかる。
優しい指先が背中をふわふわなぞって柔らかく胸を揉まれていやらしい時の声が出た。
「いいよ、直ぐ蕩けた顔になって可愛い。僕おじさんなので何度もできないから、スローなセックスしようね寧々ちゃん」
「いっ……」
耳とか首筋とかたくさんちゅうされて、ダメじゃないのか付き合ってないし上司とこんな事! と思うのに昨日初めて教えてもらった快感の火種は想像以上に私の理性を溶かしてくる。
「寧々ちゃんの刺さった棘がこれで少しは癒えるといいんだけど」
「棘?」
「そう、痛いのは誰だって嫌ですよ。転びたくないから立ち止まるのも傷付きたくないから何も言わないのも自己防衛でいいと思います。無責任にそれはよくないなんて他人が口出す方が間違ってる。そこにいたらいけないとか抜け出せとか卒業しろとか……最後まで助けてくれる訳でもないヒーロー気取りの口だけの正義に胸を痛める必要はないです。もう僕達は大人なのだから少なからず自分の可笑しい所は可笑しいと分かっている、そしてそれに至る理由があるのだから」
「…………」
唇が耳に戻ってきて、腰に響く低い声が息と一緒に頭の奥に入ってくる、手を強く握られて。
「ねえ僕には君を助けられる懐があります、だから囲う勢いで寧々ちゃんにちょっかい出してもいいかな?」
「……」
「君が欲しいんだ寧々ちゃん、もっと僕を求めていいよ」
こめかみにいっぱいキスが降って顎を持たれてエッチなキスまでされて、ドキドキして。
濡れた唇を長い指が拭ってくれる。
「究極を言えばね要は僕、自分の遺伝子がいらないと思っていたのでそれ以上踏み込めなかったんですよ」
「うん? うん」
「けれど、寧々ちゃんとならその先の先の未来まで進みたいと思ってます。自分の経験則や許容を越える想像のつかない未来って、もうそれ宇宙の域だよね、ワクワクしませんか」
「…………言ってる意味がよくわからないです難しいです」
「大丈夫、直ぐ溶け合いますよ僕達は」
「え、それ溶け合ったら私もそのヤバイ思想みたいのに傾倒して辰巳さんの信者になるって事? 怖いです、私変なの聞こえたくないです」
「信者? あははは何それ僕が教祖?」
「何か見た目はそんな感じですよ」
眼鏡を取られて、何? って上を向いたら体を起こされて辰巳さんに股がる格好にさせられて。
「ちょっと辰巳さん」
「はい、寧々ちゃんいいこ」
急に何だよ! 目合わせるの恥ずかしいから胸に抱き付いたら辰巳さんは優しく背中を抱き締めてくれた。
「じゃあ君の支配者にはそろそろ退いてもらわないといけないね」
「君の……支配者……?」
「そう、でも大丈夫。奪うとかそういうんじゃなくて寧々ちゃんが自分で自分が欲しいと思うものを選択するだけだよ」
聞いても聞いても、辰巳さんの言葉は具体的ではなくて核心的な単語がないから傾げた首が更に傾くだけなんだけど、とりあえず今は居心地の良い胸に抱かれて、血液に残るアルコールを抜いた。
家まで送りますの申し出を丁重に断って、それでも駅までは送ってもらって私は生まれて初めて朝帰り……いや、昼帰りした。
ホテルの後辰巳さんと喫茶店で飲んだオレンジジュースは異様に美味しかった。
前に座ってアイスティーを飲む辰巳さんは異次元に格好良かった。
土曜日の商店街は何も変わらない。
八百屋も魚屋も肉屋も薬屋さんも、お地蔵様も町を見て笑ってる頭撫でて、いつも通り冷たい。
花屋さんは少し花の種類が変わったかもしれない、それでも可笑しな所はない。
もしかして、この中で一番変わったのは私かもしれない。
玄関に入って、どうして自分家でこんな緊張するの。
庭にバイクがなかったからお兄ちゃんは出掛けてるみたいだ。
部屋に入ったらお父さんはリビングでテレビ見てる、ただいまって言ったらおかえりって笑って友達? 彼氏? いや、上司かって言った。
「そう、クォーターなんだけど俳優さんみたいに格好良いんだよ」
と答えたら、
「でもかなり年上だし外人なんてお母さんは怖いわ」
と、何だ……お母さんいたんだ。
キッチンにいたの、冷蔵庫の影で分からなかった。
「そうか」
と、ばつが悪い返事をするお父さんに、私に言い聞かせるようにお母さんは話し始めた。
辰巳さんに何を聞いたかは知らないけど、まるで初めから知ってたかのようにネガティブな情報と一緒に自分の意見を押し付ける。
半ば正論めいた所もあるから、質が悪いんだ。
そもそも部下が帰れなくなるまで飲ませる会社の飲み会なんて有り得ない。
帰宅する手段なんていくらでもあるだろう、後は外人、外人って海外の殺人事件に薬に病気に、そんなの日本だってあるよ……そして年齢。
今から子供を生んで10才の時に父親が50だなんで授業参観や運動会の時可哀想だと思わないのかって意味わかんない。
高齢の精子は自閉症になるとか? お父さんが自分に賛同するまであの手この手だな。
お父さんは、いいじゃないかそれでも寧々が好きなら、二人で話し合えばいいだろうっと呆れて新聞を読み初めて、お母さんはあなたは自分の子供が心配じゃないの?! 可愛くないのね! と怒っていた。
「そんな風に心配してくれだなんて頼んだつもりはないけれど」
の言葉はこれ以上空気を悪くしたくなくて言えなかった、お母さんの可愛いは聞き飽きたよ。
翌日、お兄ちゃんのバイクに股がって毎月恒例の霊園に向かった。
いつも通り漫画を読んで、しおりを挟んでそっかもう一ヶ月経ったのかと思いながら立ち上がった。
「今日は羽田空港の方にでも行こうか」
背中で頷いて、お腹に手を回した。
川崎の工場地帯、足元には東京湾、東の空に飛び立つ飛行機を見ながらお兄ちゃんは言った。
「で? 俺の可愛い妹とお泊まりした上司ってどんなやつ?」
「んっと……39才の大柄なクォーターで童貞で性格は電波系」
紫煙を燻らせてお兄ちゃんは眉間を寄せる。
「………………癖が強すぎるだろ」
「良く言うと、大人の男性ですらっと背が高くて日本人離れした目鼻立ちで誠実な人、掴み所がない性格」
「ものは言いようだな」
「それで…………優しくて良い人」
「ならいいよ、それが一番だ」
「そうですか」
辰巳さんは、うんうんと頷いてて、どうしてそう思うのかって、裸で横たわる私に膝枕してくれて生の尻を撫でているからだと思うの。
私は膝に置かれた辰巳さんの手で遊んでる。
おっきい、おっきい男の人の手、指絡ませたり触ってるだけで気持ちいい、ゴツゴツしててドキドキする。
白くて綺麗、長くてしなやか、爪ピカピカ自分で頬に持ってきたり手の平に唇寄せたりしてみる温かい。
「くすぐったいな」
「ごめんなさい」
「いいよ可愛い」
裸への羞恥心はさっきトイレで真っ青になりながら辰巳さんに寄り掛かっていっぱい体擦ってもらっている内に消えた。
「普通だったらもう合体してると思うんですが、惑星の理性が僕には宿ってますから体調不良の寧々ちゃんの介抱が先」
「ありがとうございます」
服は着てもいいんだけど(辰巳さんは着てる)、また吐くかもしれないから止めておこうという方向で話が固まった。
正直エッチな気持ちなんて一瞬で消え去った、それくらい気持ち悪かった、吐いた後は寒気と冷や汗と震えが止まらなくて軽く恐怖すら覚えて辰巳さんにしがみついて体を温めて貰った。
死ぬかと思ってちょっと泣いた。
「こんな酷い二日酔い生まれて初めてです」
「そうですね、これが毎回だと体壊しそうですね」
「ちょっと……うん……色々って訳じゃないんですけど、毎日の積み重ねみたいのが爆発してしまって昨日は飲みすぎてしまいました」
「心配だったけれど、昨日は決起会だったから、アプリも僕らが営業するし開発の方に顔出さなくてはいけなくて、あの席を離れるのは心苦しかったよ。と言っても後ろにいたけどね」
「ビッチなのも攻め上手なのも私の漫画の話です」
「ええ、分かりました。でもそれって願望だったりするの」
「?」
お尻きゅって掴まれて見上げたら、眼鏡の奥の翡翠が笑う。
「色んな人とエッチがしたくていっぱい攻めたいって気持ちを漫画にぶつけてるんですか」
「…………い、意地悪な聞き方しないでください」
「ふふふ」
と辰巳さんは笑って髪を撫でてきて、あれ何だか冷静になってくるとこの状況って凄いな。
ってゆうか、辰巳さんこそ。
「あの……童貞って嘘でしょう、辰巳さん全然素人な感じしないんですけど」
「ありがとう、気持ち良かった?」
「違ッ!」
「違うの?」
「よくわからないですけど! 初めての人もっと私みたいにビビるでしょ!」
「もちろん本当に童貞ですよ。ちょっと演技もしてみましたけど僕は女性とセックスした事がないです、ペッティング止まりです」
「ペッティング?」
「そう、前戯までです」
「……」
「女性を愛せるのがそこまでだったんですよ。だから相手を満足させたら、エッチはまた今度と逃げてフェードアウトしてました」
「ふぅん? 何で? 入れないんですか? ちょっとよくわかんないです」
「簡単ですよ」
「…………」
長い人差し指を立てると、秘密、と言わんばかりに小さな声で、
「勃たなかったってだけの話です。その人との未来やら将来を考えると欲よりもそっちに思考が働いて萎えます」
そして眼鏡が光った。
「僕はこれをSpace Wall現象と読んでいます」
「う、宇宙の壁……」
辰巳さんはまた私の体をそっと撫でて溜め息を吐いた。
「何の病気かと思ったんですが、病でもなんでもない、ただそれ以上の興味がなかっただけでした」
「…………」
「その証拠に寧々君の髪を触らせてもらっただけで僕反応しましたから」
「ちょっと何気持ち悪い事言ってんですか止めてください」
「ふふふ」
つつつ、っといきなり指先がお尻や腰をなぞってきて、ぎゅって大きな手握って体がびくんってして。
「あっ……んん」
「凄い敏感、前戯だけで随分可愛く乱れていたもんね、入れた時の寧々ちゃんも見たいな」
「ゾクゾク……辰巳さん、ゾクゾクやだ」
お尻のラインを指先が甘く這って愛撫を思わせる動きに呼吸が苦しくなる。
引き寄せた手を口に持ってきて自分から舐めて噛み噛みして体捩って濡れてくる。
「随分やらしい舌の動きさせるね。僕にもして」
「んんんっ……」
顎上に向けられて綺麗な顔が迫ってくる。
開いたままで唇が重なってゆっくりじっとりディープなキスをされた。
口から卑猥な音がする、辰巳さんの匂いがする息がかかる。
優しい指先が背中をふわふわなぞって柔らかく胸を揉まれていやらしい時の声が出た。
「いいよ、直ぐ蕩けた顔になって可愛い。僕おじさんなので何度もできないから、スローなセックスしようね寧々ちゃん」
「いっ……」
耳とか首筋とかたくさんちゅうされて、ダメじゃないのか付き合ってないし上司とこんな事! と思うのに昨日初めて教えてもらった快感の火種は想像以上に私の理性を溶かしてくる。
「寧々ちゃんの刺さった棘がこれで少しは癒えるといいんだけど」
「棘?」
「そう、痛いのは誰だって嫌ですよ。転びたくないから立ち止まるのも傷付きたくないから何も言わないのも自己防衛でいいと思います。無責任にそれはよくないなんて他人が口出す方が間違ってる。そこにいたらいけないとか抜け出せとか卒業しろとか……最後まで助けてくれる訳でもないヒーロー気取りの口だけの正義に胸を痛める必要はないです。もう僕達は大人なのだから少なからず自分の可笑しい所は可笑しいと分かっている、そしてそれに至る理由があるのだから」
「…………」
唇が耳に戻ってきて、腰に響く低い声が息と一緒に頭の奥に入ってくる、手を強く握られて。
「ねえ僕には君を助けられる懐があります、だから囲う勢いで寧々ちゃんにちょっかい出してもいいかな?」
「……」
「君が欲しいんだ寧々ちゃん、もっと僕を求めていいよ」
こめかみにいっぱいキスが降って顎を持たれてエッチなキスまでされて、ドキドキして。
濡れた唇を長い指が拭ってくれる。
「究極を言えばね要は僕、自分の遺伝子がいらないと思っていたのでそれ以上踏み込めなかったんですよ」
「うん? うん」
「けれど、寧々ちゃんとならその先の先の未来まで進みたいと思ってます。自分の経験則や許容を越える想像のつかない未来って、もうそれ宇宙の域だよね、ワクワクしませんか」
「…………言ってる意味がよくわからないです難しいです」
「大丈夫、直ぐ溶け合いますよ僕達は」
「え、それ溶け合ったら私もそのヤバイ思想みたいのに傾倒して辰巳さんの信者になるって事? 怖いです、私変なの聞こえたくないです」
「信者? あははは何それ僕が教祖?」
「何か見た目はそんな感じですよ」
眼鏡を取られて、何? って上を向いたら体を起こされて辰巳さんに股がる格好にさせられて。
「ちょっと辰巳さん」
「はい、寧々ちゃんいいこ」
急に何だよ! 目合わせるの恥ずかしいから胸に抱き付いたら辰巳さんは優しく背中を抱き締めてくれた。
「じゃあ君の支配者にはそろそろ退いてもらわないといけないね」
「君の……支配者……?」
「そう、でも大丈夫。奪うとかそういうんじゃなくて寧々ちゃんが自分で自分が欲しいと思うものを選択するだけだよ」
聞いても聞いても、辰巳さんの言葉は具体的ではなくて核心的な単語がないから傾げた首が更に傾くだけなんだけど、とりあえず今は居心地の良い胸に抱かれて、血液に残るアルコールを抜いた。
家まで送りますの申し出を丁重に断って、それでも駅までは送ってもらって私は生まれて初めて朝帰り……いや、昼帰りした。
ホテルの後辰巳さんと喫茶店で飲んだオレンジジュースは異様に美味しかった。
前に座ってアイスティーを飲む辰巳さんは異次元に格好良かった。
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八百屋も魚屋も肉屋も薬屋さんも、お地蔵様も町を見て笑ってる頭撫でて、いつも通り冷たい。
花屋さんは少し花の種類が変わったかもしれない、それでも可笑しな所はない。
もしかして、この中で一番変わったのは私かもしれない。
玄関に入って、どうして自分家でこんな緊張するの。
庭にバイクがなかったからお兄ちゃんは出掛けてるみたいだ。
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「そう、クォーターなんだけど俳優さんみたいに格好良いんだよ」
と答えたら、
「でもかなり年上だし外人なんてお母さんは怖いわ」
と、何だ……お母さんいたんだ。
キッチンにいたの、冷蔵庫の影で分からなかった。
「そうか」
と、ばつが悪い返事をするお父さんに、私に言い聞かせるようにお母さんは話し始めた。
辰巳さんに何を聞いたかは知らないけど、まるで初めから知ってたかのようにネガティブな情報と一緒に自分の意見を押し付ける。
半ば正論めいた所もあるから、質が悪いんだ。
そもそも部下が帰れなくなるまで飲ませる会社の飲み会なんて有り得ない。
帰宅する手段なんていくらでもあるだろう、後は外人、外人って海外の殺人事件に薬に病気に、そんなの日本だってあるよ……そして年齢。
今から子供を生んで10才の時に父親が50だなんで授業参観や運動会の時可哀想だと思わないのかって意味わかんない。
高齢の精子は自閉症になるとか? お父さんが自分に賛同するまであの手この手だな。
お父さんは、いいじゃないかそれでも寧々が好きなら、二人で話し合えばいいだろうっと呆れて新聞を読み初めて、お母さんはあなたは自分の子供が心配じゃないの?! 可愛くないのね! と怒っていた。
「そんな風に心配してくれだなんて頼んだつもりはないけれど」
の言葉はこれ以上空気を悪くしたくなくて言えなかった、お母さんの可愛いは聞き飽きたよ。
翌日、お兄ちゃんのバイクに股がって毎月恒例の霊園に向かった。
いつも通り漫画を読んで、しおりを挟んでそっかもう一ヶ月経ったのかと思いながら立ち上がった。
「今日は羽田空港の方にでも行こうか」
背中で頷いて、お腹に手を回した。
川崎の工場地帯、足元には東京湾、東の空に飛び立つ飛行機を見ながらお兄ちゃんは言った。
「で? 俺の可愛い妹とお泊まりした上司ってどんなやつ?」
「んっと……39才の大柄なクォーターで童貞で性格は電波系」
紫煙を燻らせてお兄ちゃんは眉間を寄せる。
「………………癖が強すぎるだろ」
「良く言うと、大人の男性ですらっと背が高くて日本人離れした目鼻立ちで誠実な人、掴み所がない性格」
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「それで…………優しくて良い人」
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