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擬態
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答えを待たずして華ちゃんは僕の手を引いて歩き出した。
それは強引とは言えない、優しい力だった。
「振り払ったら壁ドンして首閉めて黙ってついて来いよじじいとかする?」
「ん? しない、目隠して全裸にする」
「家どこだっけ」
「渋谷」
「マジ卍の町!!」
ヒゥ!! きょわいんだけど若者の町じゃん!
速くない歩幅で反抗しない僕を見て華ちゃんはふっと笑うと携帯でどこかに連絡していた。
「うん、オレ…………そう、終わった。帰りは電車で帰るから。うん平気、友達を連れて帰るから宜しくね」
直ぐ切って、もう親にも言っちゃったからって携帯を振った。
「おおぉおお!! なんっちゅーギャップ萌え! そんな成りでもちゃんとお家に電話するんだ! 感心感心!」
しかもお家の方がいるなら、身の安全も確保されているのでは?!!
「どしたの? 急に明るくなってるじゃん」
「え? べっつに~まぁそっか、華ちゃん若いもんね! お家の人に連絡して当然でちゅよね~! で、いくつなの?」
「あ? 19」
「じゅっ…………?!!!」
未成年なんですけどッ!!!
「だからいくつに見えるって聞いたじゃんいくつくらいだと思ってたん?」
「じゅ……10万24才」
「閣下かよ」
いやぁあああ!! 19?! 19はないよ!!
19はないない!!
「僕未成年と手繋いでんの?」
「介護みたい」
「じゃあ手離せよ失礼だな!」
未知な生物じゃないですか!
あ、でもなんか一回りも年下だって分かったら心なしかもう華ちゃん怖くないな。
僕よりおっきーけど、僕のがじゅー年も世界を見てる訳だしね。
「く、く、く、知ってるかね? ボックが小学生の時そちはまだ目も開けられぬ赤子だったのだよ」
「年下に年齢でマウントとかマジ人間ちっさいっスね」
「辛辣~ッ!」
何だよ華ちゃん、年上に対して敬意0なんですけど!
で、駅に着いたら何かホームごった返してて……。
「何だろ」
「あ、人身事故だって」
「そっか……」
まだ明るい夕方……。
「たっつん?」
「あ、ごめん、ボーッとしてた。人身事故ってさ、何か聞くだけで胸痛くなんね? 理由も何にも分かんないし、ただホームで腕かすっただけかもしんないし、何も知らないけどさ」
「…………」
華ちゃんは僕をじっと見て、手を引っ張って額にちゅってした。
「何すんだよ」
「うん、今なった」
「ん? そう」
「多分、皆面倒くせーなとかいつ電車動くのかなとかそんな事しか考えてないと思うよ」
「………………まぁ、それが普通だよ。僕はこの後予定ないから、急いでないしそう思うだけ」
言ったら、握った手に指が絡んできて恋人繋ぎしてきて、何かなこの若者は。
「今日はオレんち来るじゃん」
「あ、まあ行くけど……」
駅まで行ってみたら、電車は今から運転再開らしい。
良かった、って思うけど帰宅ラッシュだし再開したばっかの電車って激混みなんだよな。
「たっつん電車で帰る?」
「は? 当たり前だろお前何で来たんだよ」
「………………そっかわかった」
流されるように電車に乗って、うんヤバイ! ぎゅうぎゅうです。
リュック前に持って、確か家渋谷だったよな、だったら取り合えず離れても渋谷で降りれば会えるかなって人の波に身を任せてたら、リュック抱える体に手が伸びてきて引っ張ってくれた。
金髪の見た目怖そうな若者の腕の中に収まって押されても揺れても体痛くないようにしてくれて。
あ、あれ。
これ!
あの…………。
見上げたら半眼のコンタクト入った青い目が笑った。
「大丈夫、オレがついてるから」
「………………ヒッ!!?」
あ、あ、あ、あ!!
これ、デジャブ昨日の高杉さんのセリフなんすけど、そっか! そっか!!
このシチュエーションで思い出した!!
ああ、あのアイドルイベントの日、僕ドルオタに揉みくちゃにされて倒れそうだった時に間に入ってくれた人がいたんだ。
背中でオタク押さえてながら、
「大丈夫?」
って言ってくれて、立ち上がったらその人だって押し潰されそうな勢いだったから、咄嗟に……そ、そ、そ、その。
抱き付いて、オタクの波が舞台に来そうになるのを必死に食い止めた。
そっか……君の名は…………。
「思い出してくれた?」
「え? あっ……うん、あの日もありがとう」
「昨日、何も覚えてないっつーからちょっと寂しかった」
「ああ……うんごめん」
「いいよ、謝んないで。辛かったらオレに寄り掛かって」
「うん、さんきゅ」
そっか、そんで水までくれたんだ怖すぎ太郎君……優しすぎ太郎君じゃん。
「あ、やべっ倒れそう」
「えっ大丈夫?」
ってそんなん言われたら、あの日みたいに抱き付いて支えてしまうんだけど華ちゃんはにやってしてる。
嘘かよ。
まぁリュックあるから抱き合ってるみたくなってないしいいか。
駅に着いて、来てしまいましたよ渋谷!
まぁ大学の時とか飲み会やスポーツバーに行った事もあったけど、じゃあ服買いに行くとか遊ぶとなるとこんな騒がしい所に来る理由もなくて正直あんま来た事ない。
っつーか、むしろここ数年全くない!
渋谷なんて天気予報でスクランブル交差点見る程度!
取り合えず人凄いんで近くの改札出ようってハチ公口から出てきて、若者の町をおじさん間近な僕と若者なうな華ちゃんが歩いた。
本当は神泉のが近いとか言ってたけど、電車いっぱいで乗り換える気にはならなかった。
駅前? 繁華街? どんなとこにあるマンション? とか思ってたら十分歩いた位で、そこは渋谷とは思えない町並みに変わっていた。
渋谷区松濤、電柱にはそう書いてある。
え? まつご? まつ、しょ……何だよ。
そんな漢字見た事ねぇよ、パンちゃんこれ何て読むんだっけド忘れしちゃったぁ!
「しょうとう」
「知ってるし」
電柱指差して言われてプイッて向こう向いとく。
それにしても、向こうもこっちも豪邸ズラリ……。
マジかよ、ついさっきまで雑踏の中だったし、ラブホもあったりして、クソ! 騙されたっとか思ってたのに、こっちの意味で騙されてるナウ!
高級住宅街目の前に僕はあうあうしていた。
「こ、こんな中に家があんの」
「むしろ家しかないでしょ」
うん、そうなんだけどさ。
そしたら、やだやだやだやだやだ!!!
うっそでしょ!!
とんでもなく太くてたっかい白い柱の門の前に立ってるけど。
「しゅごくない? あるそっく? せこむ? ちゃんと入ってる?」
「重要文化財が家にあるからどっちも入ってっかな、警察にも直に連絡できる体勢になってる」
「帰る!」
僕不審者以外の何者でもないし! と思ったけど、華ちゃんもそこそこ不審者だった。
でっかい門は車用? みたいで華ちゃんは玄関まで遠いからこっちからでいいよってシャッターが下りてるガレージに続く小さなドアから僕の手を引いた。
表向きは洋風建築だったけど、中はコンクリート打ちっぱなしで……。
「庭とか見たかったら後で案内するから」
「うん」
言われるがまま階段を下がってたくさんある車を横目で見ながらまた階段を上がったら、うん、しゅごいたっかい吹き抜けに見事ないきれいなお家が僕を待っていた。
長い廊下が伸びていて、俺の部屋こっちって先行っちゃうから着いてく。
中庭すげー軽い自然公園ですよコレハ、庭師みたいな人皆手止めて華ちゃんにぺこってしてる。
板の間になって和室が現れて、ふぅって華ちゃんは息をついた。
入ろうとした部屋の前には、男の人が正座して待っていた。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、若様」
「わ、若様?」
「そう、だって19って若いっしょ?」
って笑ってるけど意味違くね。
家にしてはこじんまりした部屋に入って(それでも広いけど)、華ちゃんは鏡台前に立った。
「着替える」
って言ったら、さっきの男の人が湯気の立った桶持ってきたりなんかして。
え? 嘘でしょジーパン脱いじゃうの?
まぁ下脱ぐなら上も脱ぐよね。
は? マジで? その金髪のカツラだったの、やだ、そーなんだ。
あ、タトゥーそのお湯潜らせたタオルで拭いたら落ちるんだ。
ピアスとかも取れちゃうの、へ? マグネット?
はぁ、ふうん? はや着替え並みに華ちゃんは容姿が変わっていって。
「お待たせ」
「メタモルフォーゼしすぎぃ!!」
振り返った華ちゃんは青みがかった長髪に着流し姿なんだけど、何だよどこの戦国乙女ゲーから出てきたどちら様だよ。
「どしたん?」
「軽く事件だろ」
それは強引とは言えない、優しい力だった。
「振り払ったら壁ドンして首閉めて黙ってついて来いよじじいとかする?」
「ん? しない、目隠して全裸にする」
「家どこだっけ」
「渋谷」
「マジ卍の町!!」
ヒゥ!! きょわいんだけど若者の町じゃん!
速くない歩幅で反抗しない僕を見て華ちゃんはふっと笑うと携帯でどこかに連絡していた。
「うん、オレ…………そう、終わった。帰りは電車で帰るから。うん平気、友達を連れて帰るから宜しくね」
直ぐ切って、もう親にも言っちゃったからって携帯を振った。
「おおぉおお!! なんっちゅーギャップ萌え! そんな成りでもちゃんとお家に電話するんだ! 感心感心!」
しかもお家の方がいるなら、身の安全も確保されているのでは?!!
「どしたの? 急に明るくなってるじゃん」
「え? べっつに~まぁそっか、華ちゃん若いもんね! お家の人に連絡して当然でちゅよね~! で、いくつなの?」
「あ? 19」
「じゅっ…………?!!!」
未成年なんですけどッ!!!
「だからいくつに見えるって聞いたじゃんいくつくらいだと思ってたん?」
「じゅ……10万24才」
「閣下かよ」
いやぁあああ!! 19?! 19はないよ!!
19はないない!!
「僕未成年と手繋いでんの?」
「介護みたい」
「じゃあ手離せよ失礼だな!」
未知な生物じゃないですか!
あ、でもなんか一回りも年下だって分かったら心なしかもう華ちゃん怖くないな。
僕よりおっきーけど、僕のがじゅー年も世界を見てる訳だしね。
「く、く、く、知ってるかね? ボックが小学生の時そちはまだ目も開けられぬ赤子だったのだよ」
「年下に年齢でマウントとかマジ人間ちっさいっスね」
「辛辣~ッ!」
何だよ華ちゃん、年上に対して敬意0なんですけど!
で、駅に着いたら何かホームごった返してて……。
「何だろ」
「あ、人身事故だって」
「そっか……」
まだ明るい夕方……。
「たっつん?」
「あ、ごめん、ボーッとしてた。人身事故ってさ、何か聞くだけで胸痛くなんね? 理由も何にも分かんないし、ただホームで腕かすっただけかもしんないし、何も知らないけどさ」
「…………」
華ちゃんは僕をじっと見て、手を引っ張って額にちゅってした。
「何すんだよ」
「うん、今なった」
「ん? そう」
「多分、皆面倒くせーなとかいつ電車動くのかなとかそんな事しか考えてないと思うよ」
「………………まぁ、それが普通だよ。僕はこの後予定ないから、急いでないしそう思うだけ」
言ったら、握った手に指が絡んできて恋人繋ぎしてきて、何かなこの若者は。
「今日はオレんち来るじゃん」
「あ、まあ行くけど……」
駅まで行ってみたら、電車は今から運転再開らしい。
良かった、って思うけど帰宅ラッシュだし再開したばっかの電車って激混みなんだよな。
「たっつん電車で帰る?」
「は? 当たり前だろお前何で来たんだよ」
「………………そっかわかった」
流されるように電車に乗って、うんヤバイ! ぎゅうぎゅうです。
リュック前に持って、確か家渋谷だったよな、だったら取り合えず離れても渋谷で降りれば会えるかなって人の波に身を任せてたら、リュック抱える体に手が伸びてきて引っ張ってくれた。
金髪の見た目怖そうな若者の腕の中に収まって押されても揺れても体痛くないようにしてくれて。
あ、あれ。
これ!
あの…………。
見上げたら半眼のコンタクト入った青い目が笑った。
「大丈夫、オレがついてるから」
「………………ヒッ!!?」
あ、あ、あ、あ!!
これ、デジャブ昨日の高杉さんのセリフなんすけど、そっか! そっか!!
このシチュエーションで思い出した!!
ああ、あのアイドルイベントの日、僕ドルオタに揉みくちゃにされて倒れそうだった時に間に入ってくれた人がいたんだ。
背中でオタク押さえてながら、
「大丈夫?」
って言ってくれて、立ち上がったらその人だって押し潰されそうな勢いだったから、咄嗟に……そ、そ、そ、その。
抱き付いて、オタクの波が舞台に来そうになるのを必死に食い止めた。
そっか……君の名は…………。
「思い出してくれた?」
「え? あっ……うん、あの日もありがとう」
「昨日、何も覚えてないっつーからちょっと寂しかった」
「ああ……うんごめん」
「いいよ、謝んないで。辛かったらオレに寄り掛かって」
「うん、さんきゅ」
そっか、そんで水までくれたんだ怖すぎ太郎君……優しすぎ太郎君じゃん。
「あ、やべっ倒れそう」
「えっ大丈夫?」
ってそんなん言われたら、あの日みたいに抱き付いて支えてしまうんだけど華ちゃんはにやってしてる。
嘘かよ。
まぁリュックあるから抱き合ってるみたくなってないしいいか。
駅に着いて、来てしまいましたよ渋谷!
まぁ大学の時とか飲み会やスポーツバーに行った事もあったけど、じゃあ服買いに行くとか遊ぶとなるとこんな騒がしい所に来る理由もなくて正直あんま来た事ない。
っつーか、むしろここ数年全くない!
渋谷なんて天気予報でスクランブル交差点見る程度!
取り合えず人凄いんで近くの改札出ようってハチ公口から出てきて、若者の町をおじさん間近な僕と若者なうな華ちゃんが歩いた。
本当は神泉のが近いとか言ってたけど、電車いっぱいで乗り換える気にはならなかった。
駅前? 繁華街? どんなとこにあるマンション? とか思ってたら十分歩いた位で、そこは渋谷とは思えない町並みに変わっていた。
渋谷区松濤、電柱にはそう書いてある。
え? まつご? まつ、しょ……何だよ。
そんな漢字見た事ねぇよ、パンちゃんこれ何て読むんだっけド忘れしちゃったぁ!
「しょうとう」
「知ってるし」
電柱指差して言われてプイッて向こう向いとく。
それにしても、向こうもこっちも豪邸ズラリ……。
マジかよ、ついさっきまで雑踏の中だったし、ラブホもあったりして、クソ! 騙されたっとか思ってたのに、こっちの意味で騙されてるナウ!
高級住宅街目の前に僕はあうあうしていた。
「こ、こんな中に家があんの」
「むしろ家しかないでしょ」
うん、そうなんだけどさ。
そしたら、やだやだやだやだやだ!!!
うっそでしょ!!
とんでもなく太くてたっかい白い柱の門の前に立ってるけど。
「しゅごくない? あるそっく? せこむ? ちゃんと入ってる?」
「重要文化財が家にあるからどっちも入ってっかな、警察にも直に連絡できる体勢になってる」
「帰る!」
僕不審者以外の何者でもないし! と思ったけど、華ちゃんもそこそこ不審者だった。
でっかい門は車用? みたいで華ちゃんは玄関まで遠いからこっちからでいいよってシャッターが下りてるガレージに続く小さなドアから僕の手を引いた。
表向きは洋風建築だったけど、中はコンクリート打ちっぱなしで……。
「庭とか見たかったら後で案内するから」
「うん」
言われるがまま階段を下がってたくさんある車を横目で見ながらまた階段を上がったら、うん、しゅごいたっかい吹き抜けに見事ないきれいなお家が僕を待っていた。
長い廊下が伸びていて、俺の部屋こっちって先行っちゃうから着いてく。
中庭すげー軽い自然公園ですよコレハ、庭師みたいな人皆手止めて華ちゃんにぺこってしてる。
板の間になって和室が現れて、ふぅって華ちゃんは息をついた。
入ろうとした部屋の前には、男の人が正座して待っていた。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、若様」
「わ、若様?」
「そう、だって19って若いっしょ?」
って笑ってるけど意味違くね。
家にしてはこじんまりした部屋に入って(それでも広いけど)、華ちゃんは鏡台前に立った。
「着替える」
って言ったら、さっきの男の人が湯気の立った桶持ってきたりなんかして。
え? 嘘でしょジーパン脱いじゃうの?
まぁ下脱ぐなら上も脱ぐよね。
は? マジで? その金髪のカツラだったの、やだ、そーなんだ。
あ、タトゥーそのお湯潜らせたタオルで拭いたら落ちるんだ。
ピアスとかも取れちゃうの、へ? マグネット?
はぁ、ふうん? はや着替え並みに華ちゃんは容姿が変わっていって。
「お待たせ」
「メタモルフォーゼしすぎぃ!!」
振り返った華ちゃんは青みがかった長髪に着流し姿なんだけど、何だよどこの戦国乙女ゲーから出てきたどちら様だよ。
「どしたん?」
「軽く事件だろ」
応援ありがとうございます!
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