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生と死と3
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恩田さんは僕を見て、私に気を使わないで温かいうちに食べて? と言うので、遠慮なく平らげた。デザートにはグミをくれた。
「グミってドイツ発祥のお菓子なんだよ」
「へえ、アメリカかと思ってた」
「カラフルだからかな?」
可愛い熊の形をしたグミは何となく見覚えがある、桜にって一袋くれた。恩田さんはゆっくりパスタを食べながら、ベッドを指差して。
「何?」
「ねえねえ兵藤君がさ、今描いてる絵見せてよ」
「今描いてる絵」
視線の先にはパソコンが置かれてて、自由に使っていいからと言われても……な。
「まさか、このネットの時代に一枚もSNSに上げてないなんてことないでしょ?」
「うん、イラストレーターで小銭くらいは稼いでるから」
「いいじゃん、人からお金を貰える絵って中々ないよ。人がお金を出してくれてるって凄い事なんだよ」
「それは……そうだね有り難いと思ってる」
「はいはい、だから見せて? 私のライブ見たでしょ? おあいこ」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
携帯でも見せられたけど、パソコンのが見やすいだろうと起動する。テーブルの上を少し片付けて、恩田さんの横にイスを持ってきた。恩田さんはチーズを食べながらワインを少し飲んでて、ちょっと顔が赤くなっている。
「楽しみー」
「このサイトなんだけど、絵描きが自分の絵を公開して、買い手が気に入ったらやり取りしてオリジナルの絵描いたり……」
「ほお、なるほどイラストを有償でリクエストできるサービスね。へえ面白いけど私のアルバムに合いそうなクリエイターはいなそう」
「うーん、どうかな探せばいると思うよ、トップページに出てるのは今時のイラストを得意とするクリエイター達だから見逃してる人がたくさんいる」
「それで? 兵藤君は?」
「うん……ああ、僕はこれ……えっと、人物よりも風景や背景を主に描いてるかな。人は影や後ろ姿で表現してる」
「ふんふん、わあ、綺麗な夕焼けと親子……切ない感じ、田舎の風景っていいよね。こっちは夏のひまわりに朝顔……お祭りの絵わくわくするね。兄妹が手を繋いで横断歩道を渡ってる……とおりゃんせが聞こえてきそう」
納品した作品を見せてあげれば、恩田さんは多分ドイツ語かな? 日本語じゃない言葉で感動を表現してて、意味はわからないけど、微妙とは言ってはいなさそう。まあちょっと絵をかじったら誰でも書けそうな60点の絵だけど。
他にも見たいと言うので、個人サイト見せてあげたり、使用された小説を見せてあげたり、紹介する度ワインが少しづつ減っていった。それで、後は携帯に入ってる画像位でネットで見せられるものはおしまいだと言うと、恩田さんは首を傾げたのだ。
「え? もうおしまい? 私が見たかったのがない」
「うん? 何を見たかったの?」
恩田さんはワインを口に含んだワインを飲み込んで、息を吐きながら言う。
「桜の絵だよ。あっちこっちで描いてるのに、何でここには一枚もないの?」
「は?」
タブを閉じる手が止まって、恩田さんは目を合わせたままワインを飲んでる。何だって? 今、あっちこっちで描いてるって言ったか? 言ったよな? え?
「今見たのは、上手いけど上手いなあで終わる感じ。私はあの「僕を見て!」って感じの桜が見たいんだけど」
「…………えっと」
「何で知ってるの? って顔してる」
「そのままだよ、どうして?」
恩田さんは不敵な口元をワイングラスで隠して。
「多分だけど、うちのクラスの子だったらあれは兵藤君が描いた桜だって分かると思うよ」
「何で?」
「昔さ社会科の授業でポスターを描いたでしょ? 確か自然破壊がテーマだったかな? 兵藤君は地球の温暖化で将来桜が見られなくなるみたいな、そんな理由で山と桜の絵を描いてた」
「うん、描いた…………」
「ね? 気付いた? あれと同じような絵を福島で描いたでしょ?」
「ああ……どうだったかな」
惚けてみたけどバレバレだな、そうだ、色んな桜を描いた中であの絵と同じような構図もあったかもしれない、いやでもそんな事位で……恩田さんはグラスに入ったワインを回しながら続ける。
「まあ、正直カマ掛けたんだけどさ? ドイツでも日本のニュースは毎日チェックしてるの、それで桜の絵を見た、もしかしてって兵藤君の顔が浮かんだ。でも聞く機会もなくて、いつか会ったら聞こうって思ってた。捕まるのが先か会うのが先かってね。ふふふ」
「勘弁してよ」
「そしたら今、こんなに春夏秋冬の季節画があるのに桜だけ抜き取ったみたいにないから、隠してるのかなって」
「策士だね、よかったらその頭脳で捕まった時に刑が軽くなる動機考えてくれない?」
「うーんそれは難しいね。むしろ兵藤君が起訴されないスーパーマンになっちゃう方法を考えようよ」
恩田さんは笑いながら、僕に飲む? とワインを差し出してきて、ここで無理と断ったら、色々な事がここでおしまいな気がして、思い切ってワインを飲み干した。
さっきのウォッカ程ではないけど食道に滲みて痛い。
喉の奥から口に広がった味は渋くて酸っぱくて、ぶどうでできてる癖に甘くないってなんだよ。皆で発酵しなくてもいいじゃん。アルコールもキツイし。胸が焼けて、ぐっと唇を拭って息を吐いた。
「さすが、自分の音楽で時代を作ろうとしている人は言う事が大きいね」
「でも実際、被害に遭った建物の所有者は告訴してないんじゃなかったっけ?」
「まあ……それはもう壊してしまう場所や暗くて人目につかない所に描いてるからね」
「で? その理由は?」
少しでも胃のワインを中和しようと、水を飲んでいたら恩田さんはまたワインを注いでいた。
普通の人なら? 日本人なら? 落書きだって立派な犯罪なんだから止めなよって言うだろうに。彼女の目に僕がどう映っているのか不思議だ。
「あのさ、その自首しようよ、とか何だろう……言われたい訳じゃないけど、やっぱり恩田さんは感覚が違うね?」
「え? うーん……それって言うのは日本人と違うって意味かな? まあそりゃ……大分あっちにいるしね? 著名人でもないのにいたずらがきがニュースになるって平和だなって感覚はあるよ。もちろん重要文化財に人権問題や差別用語書いたら向こうでも取り上げられるけど。でも兵藤君は悪戯にしては美しすぎるから話題になってる訳で、興味津々。だからこそ事実はもういいから理由の方が知りたいなって思っただけ。多分日本中の人が何の為にしてるんだろうって思ってるよ」
「日本中は大げさでしょ」
「大げさじゃないよ。日本だったら私の曲より兵藤君の落書きのが知名度あるんじゃない?」
「なんだろう……有名なはずなのに、嬉しくないね。今となってはバカだったなって思ってる」
「だからそのバカになっちゃった理由を教えてよ」
「くだらない事だよ。世間ではシークレットブロッサムとか枯れた商店街に咲いた奇跡の桜だなんて言われてるけど、他人の為じゃない。僕自身の為に描いていたものだ。エゴだよ恩田さんを感動させられる理由じゃない。それでもいい?」
「私を、じゃないでしょ。日本人を感動させられる理由じゃない、の間違いでしょ? でもさそんなの捕まったらマスコミが兵藤君の過去掘り返して、美談にしてくれるよ。好きそうじゃん小学生の時の親友が桜の木の下で自殺してたなんて過去。だからさそれはメディアに任せてもっとバカみたいな非常識な理由教えてよ」
「グミってドイツ発祥のお菓子なんだよ」
「へえ、アメリカかと思ってた」
「カラフルだからかな?」
可愛い熊の形をしたグミは何となく見覚えがある、桜にって一袋くれた。恩田さんはゆっくりパスタを食べながら、ベッドを指差して。
「何?」
「ねえねえ兵藤君がさ、今描いてる絵見せてよ」
「今描いてる絵」
視線の先にはパソコンが置かれてて、自由に使っていいからと言われても……な。
「まさか、このネットの時代に一枚もSNSに上げてないなんてことないでしょ?」
「うん、イラストレーターで小銭くらいは稼いでるから」
「いいじゃん、人からお金を貰える絵って中々ないよ。人がお金を出してくれてるって凄い事なんだよ」
「それは……そうだね有り難いと思ってる」
「はいはい、だから見せて? 私のライブ見たでしょ? おあいこ」
「……じゃあ、ちょっとだけ」
携帯でも見せられたけど、パソコンのが見やすいだろうと起動する。テーブルの上を少し片付けて、恩田さんの横にイスを持ってきた。恩田さんはチーズを食べながらワインを少し飲んでて、ちょっと顔が赤くなっている。
「楽しみー」
「このサイトなんだけど、絵描きが自分の絵を公開して、買い手が気に入ったらやり取りしてオリジナルの絵描いたり……」
「ほお、なるほどイラストを有償でリクエストできるサービスね。へえ面白いけど私のアルバムに合いそうなクリエイターはいなそう」
「うーん、どうかな探せばいると思うよ、トップページに出てるのは今時のイラストを得意とするクリエイター達だから見逃してる人がたくさんいる」
「それで? 兵藤君は?」
「うん……ああ、僕はこれ……えっと、人物よりも風景や背景を主に描いてるかな。人は影や後ろ姿で表現してる」
「ふんふん、わあ、綺麗な夕焼けと親子……切ない感じ、田舎の風景っていいよね。こっちは夏のひまわりに朝顔……お祭りの絵わくわくするね。兄妹が手を繋いで横断歩道を渡ってる……とおりゃんせが聞こえてきそう」
納品した作品を見せてあげれば、恩田さんは多分ドイツ語かな? 日本語じゃない言葉で感動を表現してて、意味はわからないけど、微妙とは言ってはいなさそう。まあちょっと絵をかじったら誰でも書けそうな60点の絵だけど。
他にも見たいと言うので、個人サイト見せてあげたり、使用された小説を見せてあげたり、紹介する度ワインが少しづつ減っていった。それで、後は携帯に入ってる画像位でネットで見せられるものはおしまいだと言うと、恩田さんは首を傾げたのだ。
「え? もうおしまい? 私が見たかったのがない」
「うん? 何を見たかったの?」
恩田さんはワインを口に含んだワインを飲み込んで、息を吐きながら言う。
「桜の絵だよ。あっちこっちで描いてるのに、何でここには一枚もないの?」
「は?」
タブを閉じる手が止まって、恩田さんは目を合わせたままワインを飲んでる。何だって? 今、あっちこっちで描いてるって言ったか? 言ったよな? え?
「今見たのは、上手いけど上手いなあで終わる感じ。私はあの「僕を見て!」って感じの桜が見たいんだけど」
「…………えっと」
「何で知ってるの? って顔してる」
「そのままだよ、どうして?」
恩田さんは不敵な口元をワイングラスで隠して。
「多分だけど、うちのクラスの子だったらあれは兵藤君が描いた桜だって分かると思うよ」
「何で?」
「昔さ社会科の授業でポスターを描いたでしょ? 確か自然破壊がテーマだったかな? 兵藤君は地球の温暖化で将来桜が見られなくなるみたいな、そんな理由で山と桜の絵を描いてた」
「うん、描いた…………」
「ね? 気付いた? あれと同じような絵を福島で描いたでしょ?」
「ああ……どうだったかな」
惚けてみたけどバレバレだな、そうだ、色んな桜を描いた中であの絵と同じような構図もあったかもしれない、いやでもそんな事位で……恩田さんはグラスに入ったワインを回しながら続ける。
「まあ、正直カマ掛けたんだけどさ? ドイツでも日本のニュースは毎日チェックしてるの、それで桜の絵を見た、もしかしてって兵藤君の顔が浮かんだ。でも聞く機会もなくて、いつか会ったら聞こうって思ってた。捕まるのが先か会うのが先かってね。ふふふ」
「勘弁してよ」
「そしたら今、こんなに春夏秋冬の季節画があるのに桜だけ抜き取ったみたいにないから、隠してるのかなって」
「策士だね、よかったらその頭脳で捕まった時に刑が軽くなる動機考えてくれない?」
「うーんそれは難しいね。むしろ兵藤君が起訴されないスーパーマンになっちゃう方法を考えようよ」
恩田さんは笑いながら、僕に飲む? とワインを差し出してきて、ここで無理と断ったら、色々な事がここでおしまいな気がして、思い切ってワインを飲み干した。
さっきのウォッカ程ではないけど食道に滲みて痛い。
喉の奥から口に広がった味は渋くて酸っぱくて、ぶどうでできてる癖に甘くないってなんだよ。皆で発酵しなくてもいいじゃん。アルコールもキツイし。胸が焼けて、ぐっと唇を拭って息を吐いた。
「さすが、自分の音楽で時代を作ろうとしている人は言う事が大きいね」
「でも実際、被害に遭った建物の所有者は告訴してないんじゃなかったっけ?」
「まあ……それはもう壊してしまう場所や暗くて人目につかない所に描いてるからね」
「で? その理由は?」
少しでも胃のワインを中和しようと、水を飲んでいたら恩田さんはまたワインを注いでいた。
普通の人なら? 日本人なら? 落書きだって立派な犯罪なんだから止めなよって言うだろうに。彼女の目に僕がどう映っているのか不思議だ。
「あのさ、その自首しようよ、とか何だろう……言われたい訳じゃないけど、やっぱり恩田さんは感覚が違うね?」
「え? うーん……それって言うのは日本人と違うって意味かな? まあそりゃ……大分あっちにいるしね? 著名人でもないのにいたずらがきがニュースになるって平和だなって感覚はあるよ。もちろん重要文化財に人権問題や差別用語書いたら向こうでも取り上げられるけど。でも兵藤君は悪戯にしては美しすぎるから話題になってる訳で、興味津々。だからこそ事実はもういいから理由の方が知りたいなって思っただけ。多分日本中の人が何の為にしてるんだろうって思ってるよ」
「日本中は大げさでしょ」
「大げさじゃないよ。日本だったら私の曲より兵藤君の落書きのが知名度あるんじゃない?」
「なんだろう……有名なはずなのに、嬉しくないね。今となってはバカだったなって思ってる」
「だからそのバカになっちゃった理由を教えてよ」
「くだらない事だよ。世間ではシークレットブロッサムとか枯れた商店街に咲いた奇跡の桜だなんて言われてるけど、他人の為じゃない。僕自身の為に描いていたものだ。エゴだよ恩田さんを感動させられる理由じゃない。それでもいい?」
「私を、じゃないでしょ。日本人を感動させられる理由じゃない、の間違いでしょ? でもさそんなの捕まったらマスコミが兵藤君の過去掘り返して、美談にしてくれるよ。好きそうじゃん小学生の時の親友が桜の木の下で自殺してたなんて過去。だからさそれはメディアに任せてもっとバカみたいな非常識な理由教えてよ」
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