【R18】黒猫彼女を溺愛中【著 CHIYONE】

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時計屋さん

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 少し歩いてみたけど立ち止まって、今私の持っている物はなんだろうってポケットや手の中を見た。

 家に帰りたい!! ってお願いしても何も反応してくれなくなってしまった石の欠片。
 数枚の硬貨、いつも忍ばせてあるチョコ……。
 こんな物で帝都をサバイバルできる気がしないぞ!
 だって、少し日が傾いてきてる、最近は夜になると一層冷えるんだ。
 大丈夫かな、でも人も多いし、いざとなったら騎士団もいるから平気……かな?

 ああ、後タツミって私がどこにいるか分かるって言ってなかったけ? 
 とりあえずせっかくお忍びでここまで来たんだ時計屋さんに行こう。
 まずは広場に出て、そうそうこっちの道、市場が終われば店じまいは早い、歩く街並みは閑散としていた。
 開いてるのはポツリポツリとある、飲食店だけだ。
 でもそういう所からはお酒に酔った男の人の大声なんかが聞こえて近寄りがたいけど。
 記憶を頼りに歩いて行けば、あったあった、木彫りの看板に【エミュータ】の文字、宝石、魔法石、時計の専門店だ。
 良かった、まだ店に灯りが付いてて……ショーウィンドウにキラキラ光る宝石と時計が飾られてある、ディスプレイされてるのは細かな装飾をあしらった懐中時計や、装飾品ばかりで…………。
 宝石がメインなのかな? だとしたら私が思っていた時計屋さんと違うかも? お尻尾萎えてしまって、でもここしか時計屋さんって知らないんだよな。

 うーんってしてたら、ふいに入り口が開いた。

「お買い上げ、ありがとうございましたぁ! またのお越しをお待ちしております!」

 凛とした、爽やかな高い女の人の声、見れば蛇の尻尾のお金持ちそうなふくよかなマダムがほくほく顔で店から出て来た。
 私なんかには目もくれず、指で慣らして出現した車に乗り込む。小窓からお店に会釈して、御者も一礼して、トカゲの背中に鞭をい入れた。
 車が動いて道から見えなくなるまで、その女の人は頭を下げると、顔を上げて伸びをした。そして、
「はあ~喜んでもらえてよかったー!! 今日のお仕事終ー了っ!! っと、さーてと! いっぱいえっちしよ!」ってガッツポーズで言ってのけたのだ。
 で、振り返りざま目が合っちゃって…………。

「!」
「ひょわ!! いいいいいらっしゃいませ?」
「…………」

 黒髪のメイド服を着た綺麗な女の人だった、私達を飼っていた人間以来、初めて話す人だと思うと途端に言葉が出なくなる。
 しばらく見つめ合って……
「えっと……なんていうかな? 今のはね、ストレス解消って感じ? スッキリするだけで、そんな風に思ってはないんだよ?」
「…………」
 一歩近づかれて、どうしよう体小さくしたくなるし、耳下がっちゃう。
 そしたら、その人は瞬きをした後、ゆっくりと私の前に座った。私より目線を低くして首を傾げる、そっと顔に手を近付けてくれて、鼻の近くに手の甲がきてクンクンした……危なくはない、かな? って思ったら優しく頬を撫でてきて。
「急に話かけてごめんね? 恐かったよね?」
「…………」
「お店気になるのかな?」
「…………」
 お耳の後ろかいてくれて、ちょっと緊張が解れた。
「入る?」
「………………うん」

 頭なでなでされて、気になってたもん! 入りたい、女の人の後についてお店に入る。

 ドアを開ければカランコロン音がして、口がぱかーってなってしまった、だって壁一面に宝石に装飾品、ガラスケースに並ぶ煌びやかな鉱石! 見た事ないランプに正面に大きな時計! こんな空間見た事ない。それでカウンター越しには執事服にモノクルをかけた男の人がいて、宝石を磨いてる。私と目が合えば、
「いらっしゃいませ」
 と口では言うけど不愛想。
「もっと笑いなよ! うち客商売なんだからね!?」
 前を歩くメイドさんが注意して、わかりましたって言うけど不愛想なままだ。
 メイドさんは振り返って両手を広げた。
「改めまして、いらっしゃいませ! エミュータにようこそ。うちは装飾品や時計を扱うお店なの。私が店主のエムであっちの可愛くないのが修理屋のユタ、何が欲しくて来たのかな?」
「…………」
 笑顔が眩しい溌剌とした口調、なんだろう……私も家では、働きたい! ってお店屋さんごっことかしてたけど、そんなのとは全然違うな! こんな眩しい笑顔を初対面の人にできる自信がない。何て答えていいのか分からないよ……。
 ただただ挙動不審な獣人と化していたら、
「エム」
「はいはい」
 カウンターの無表情の彼がメイドさんに何か投げて、受け取ったメイドさんは、ほうほう! ってしてる。
「プレイの時のアイテムがこんな所で役に立つとは!」
 また私の前で座ると、受け取ったそれを頭に装着した、所謂、黒い猫耳カチューシャだ、それと尻尾。
「にゃんにゃん! うふふ、これでお揃いだね! どうかな? 話やすい?」
「…………………うん」
 なんだろう、たったお耳と尻尾がお揃いなだけで、この人は人間なのに一気に親近感わいて差し出された手を握ってしまった。
「わあ可愛い! 小さいお手て!! 黒い小猫ちゃんのお客さんなんて初めて」
「というか黒猫なんて稀少種すぎて見た事ないですよ。こっちでは本に乗ってる絶滅危惧種」
 モノクロの人が指輪を拭きながら言ってきて、そうなの? って首傾げる。
 そうしたらメイドさんが私をぎゅってして頭撫でてきた、
「そうだよ? 私達だって突然この町に転移してきた移民者よ? 朝ね出勤しようとマンションのエレベーターに乗ったら、なぜかこのお店の中にいたの」
「シュッキン? マンション? エレベーター?」
「まあ、それはいいか。それで昔の住んでいた所では黒髪黒目も当たり前だったけど、ここに来たら一人もいないし、地図に私達の住んでいた島も載っていなくてね? でもまあ、この世界では黒髪って流行ってるみたいで染めてる人もいて目立たないけど、私達みたいに天然の黒髪っていうのは少ないと思う。あなたもそうなんでしょう?」
「…………」
「艶々で綺麗、優しいご主人様がいるのかな?」
「…………いる」
 やん、声可愛い! ってスリスリされてしまって、なんだろう……この人……嫌いじゃない。
 でも、それを恨めしそうに睨んでるモノクルの人は、何だか、何にでもヤキモチ焼くタツミに似ているような気がする。
「それで? 小さい子がどうしてこんな所に来たの?」
「小さい子?」
「うん? そうだよ、子猫だよね? まだ」
「…………」
 そうなの、かな? 猫年齢的には成人に近いと思ったんだけど……? 小柄なだけ?
 商談用のテーブル椅子にメイドさんは座って、私を膝に乗せてると、足怪我しちゃうと困るから私のお古の靴良かったら履いて? と靴を履かせてくれた。そっかお家から急に来たから…………すっごい小さな声でありがとうっと言ったら、笑ってる。いいんだよってお膝ポンポンされて、お店に飾ってある商品を指差した。
「それで、おっきくなったらどれが欲しいの?」
「おっきく? えっと…………私は鳩時計が欲しいの」
「鳩時計?」
「うん、お家の壊しちゃったの……」
 答えたら、メイドさんは可愛いいいいいいって後ろから抱き締めてきた。
「そっかあー!! お家の時計壊しちゃってうちに来たの?!! でも大丈夫だよ!! こんな可愛い猫ちゃんが時計壊して誰が怒るの? 絶対猫ちゃんの時の姿可愛いでしょ? 君!」
「そ、そんな事ない! 可愛くなくて捨てられてしまう見た目」
「?」
 何それ、ありえない。ってメイドさんは言ってた、そしたら執事さんが私の前にいくつか時計を持って来てくれた。

「そもそも時計と言っても二種類あって蓄魔式の魔力を溜めてその動力で動くタイプと、吸魔式は人、家、土地……などの魔力を吸って永久的に動いているタイプの二種類あります。前者が一般的に家庭に復旧しているもので針がズレてくるので直す必要がある。後者は常に新たな魔力を吸収して時を刻んでいるので針のずれもありません、ですが魔力を常に吸収する仕組みになってるので……」
 モノクルを直しながら私を見て。
「お客様は魔力がないので畜魔式かと」
 そっか、やっぱり私には魔力がないんだ、でも時計の裏をみたら、蓄魔式は魔力を貯めておくポケットみたいのがついてて、うちにあった鳩時計はそんなの付いてなかった、だから。
「こっちの吸魔式の時計を下さい」
 言えば二人共、待って待ってしてきた。
「でもこれ高いよ? 吸魔式って常に魔力を変換するからカラクリも複雑で」
「欲しい、と言っても君お金は?」
 お金のジャスチャーをされて、ポケットに入っていた硬貨を見せてみた。
「えっと……タツ……ご主人様がお手伝いのお駄賃にくれるお金はこういうので……買えないかな……?」
「嘘!! 大判金貨三枚…………?! いやいやいや、一枚でも超お釣りがくるよ?」

 執事さんは金貨を透かして、頷いた。
「本物ですね、君この価値わかってる? 盗んできたようにも見えないし、飼い主の名前は?」
「えっと…………タツミ」
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