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最終話 再誕の焔
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夜が、静かに更けていく。
王宮の高塔、ルイセル王子の私室では、暖炉の焔だけが、ふたりの影を壁に揺らしていた。
「……殿下」
リリアの声は、焔に溶けるように静かだった。
「私は、もう一度確かめたいのです。あの夜、私が触れた“もの”――それが、貴方のすべてであると」
王子は、ゆっくりとうなずく。
「……俺もだ。おまえが包んでくれた場所、俺の“核”――あれが、俺のすべてなのかを、知りたい」
ふたりの間にあるのは、もはや言葉を超えた信頼。
そして、名誉の“証”を託し合った誓いの記憶。
王子はそっと椅子から立ち上がり、リリアの手を取った。
その手を、かつて熱に震えた“中央”へ導き――
「……もう、何も隠さない」
⸻
リリアの指が、そっとそこに触れる。
かつて苦しみに歪み、欲望に脅かされた場所。
だが今、その熱は穏やかで、静かに鼓動している。
「……感じます。貴方の意志が、そこにあると」
リリアの手が、包み込むように彼をなぞる。
まるで、彼の輪郭を確かめるように。
「誰にも渡しません。この熱も、この意志も、私が……守り抜きます」
王子は目を閉じた。
胸の奥から、ようやく息が抜けていく。
「リリア……おまえに触れられることが、苦痛ではなくなった。
おまえだけが、“俺そのもの”に触れ、傷つけなかった」
彼女の手に導かれるまま、王子はベッドに腰を下ろす。
膝をついて寄り添うリリアは、彼の目の高さにまで顔を上げた。
「殿下。――誓ってください。
これからの人生、誰の熱にも染まらず、誰の手にも奪われず……」
王子は頷いた。
「誓う。……“おまえの掌の中”に、俺という存在を委ねよう」
その瞬間――
炎の灯る音が、少しだけ強くなった。
それはまるで、“彼”という存在が、今まさに――
一度死に、そして再び生まれ直したような感覚。
⸻
その翌朝。
王宮の庭には、リリアが仕立てた一輪の花飾りが置かれていた。
白い花は、王子の“核”を象徴する場所にのみ、そっとあてがわれた。
誰にも気づかれず、誰にも穢されることなく。
王子の中心は、いまやひとりの少女の誓いによって、守られたのである。
そして王子は静かに、彼女の肩を抱いた。
「――ありがとう。おまえがいたから、俺は“俺である”ことを選べた」
⸻
その日以降、ルイセル王子には、どの貴婦人も近づかなくなった。
いや、近づけなかった。
その存在の中心には、決して侵すことのできない、
**ひとりの少女が捧げた“掌の誓い”**が、しっかりと息づいていたから。
焔のような欲望も、冷たい陰謀も――
もう、そこには届かない。
なぜなら、彼の核はもう、誰にも奪えぬものとして――
「再誕」したからだ。
(完)
王宮の高塔、ルイセル王子の私室では、暖炉の焔だけが、ふたりの影を壁に揺らしていた。
「……殿下」
リリアの声は、焔に溶けるように静かだった。
「私は、もう一度確かめたいのです。あの夜、私が触れた“もの”――それが、貴方のすべてであると」
王子は、ゆっくりとうなずく。
「……俺もだ。おまえが包んでくれた場所、俺の“核”――あれが、俺のすべてなのかを、知りたい」
ふたりの間にあるのは、もはや言葉を超えた信頼。
そして、名誉の“証”を託し合った誓いの記憶。
王子はそっと椅子から立ち上がり、リリアの手を取った。
その手を、かつて熱に震えた“中央”へ導き――
「……もう、何も隠さない」
⸻
リリアの指が、そっとそこに触れる。
かつて苦しみに歪み、欲望に脅かされた場所。
だが今、その熱は穏やかで、静かに鼓動している。
「……感じます。貴方の意志が、そこにあると」
リリアの手が、包み込むように彼をなぞる。
まるで、彼の輪郭を確かめるように。
「誰にも渡しません。この熱も、この意志も、私が……守り抜きます」
王子は目を閉じた。
胸の奥から、ようやく息が抜けていく。
「リリア……おまえに触れられることが、苦痛ではなくなった。
おまえだけが、“俺そのもの”に触れ、傷つけなかった」
彼女の手に導かれるまま、王子はベッドに腰を下ろす。
膝をついて寄り添うリリアは、彼の目の高さにまで顔を上げた。
「殿下。――誓ってください。
これからの人生、誰の熱にも染まらず、誰の手にも奪われず……」
王子は頷いた。
「誓う。……“おまえの掌の中”に、俺という存在を委ねよう」
その瞬間――
炎の灯る音が、少しだけ強くなった。
それはまるで、“彼”という存在が、今まさに――
一度死に、そして再び生まれ直したような感覚。
⸻
その翌朝。
王宮の庭には、リリアが仕立てた一輪の花飾りが置かれていた。
白い花は、王子の“核”を象徴する場所にのみ、そっとあてがわれた。
誰にも気づかれず、誰にも穢されることなく。
王子の中心は、いまやひとりの少女の誓いによって、守られたのである。
そして王子は静かに、彼女の肩を抱いた。
「――ありがとう。おまえがいたから、俺は“俺である”ことを選べた」
⸻
その日以降、ルイセル王子には、どの貴婦人も近づかなくなった。
いや、近づけなかった。
その存在の中心には、決して侵すことのできない、
**ひとりの少女が捧げた“掌の誓い”**が、しっかりと息づいていたから。
焔のような欲望も、冷たい陰謀も――
もう、そこには届かない。
なぜなら、彼の核はもう、誰にも奪えぬものとして――
「再誕」したからだ。
(完)
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