【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!

2-1-13.鍛冶屋のジャスミンは海に出たい

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第十三話
鍛冶屋のジャスミンは海に出たい


 はあ?
 今、なんと言った?

「『このガレオン船に乗って、海に出たい』と、いつもうるさく……」
「そんなこと、言って無いよ」

「お嬢さん、うちの娘を」
 その娘は、顔を赤くして下を向いていた。
 小娘め!
 可愛いな(笑)

「しかし、うちも船員は揃いましたし……」
「まあ、そうだろうなぁ」と、父は諦め顔で呟いた。

 それを見ていたのは、イリーゼだ。
「海に出たいって? なら、うちには他にも船はある。うちで雇っても構わないさ」

 しかし、ジャスミンは頷かなかった。

 なぜなら、
「この白いガレオン船に乗りたいの」と、ジャスミンが言うと、イリーゼはニヤリと笑った。
「実は、砲術長がいないので、しばらくはうちの社員にやらせようと思っていたんだけど、ジャスミン? 大砲は撃っだことは?」
「はい、この船の砲はすべて試射しました」

 すると、イリーゼは『判断は、お前がしろ!』と私の方を向いた。

「おっほん。ジャスミンくん。砲術師に命ずる」
「本当か? やった!」

 えっ?
「命ずる」って、私は、既に船長なのか?
 イリーゼを差し置いて、良かったのだろうか?

 そして、次の日からは、我々の訓練に武装訓練が追加された。


 いくばくかの日が経過した。

「これから、エディンバラに商品を運ぶ。ガレオン船改修後の初航海に良いだろう。うちの商船と共にしてもらうよ」と、イリーゼからのお達しだ。

 そして、「ミーナ、皆にもプレゼントがある」
 何だろう?

「さあ、開けてみて」と、急かされ箱を開けると、なんと衣装だ。
 私には赤い上着だ。

「キャプテンは、いつも赤い上着だったわ。『この海原を私の情熱で赤く染め上げる』とか言っていたわね」
「お祖母様と同じッ!」
「うーん、キャプテンの上着より、暗い感じの赤ね」

 お祖母様の赤より暗い赤らしいが、私は気に入った。
 良い感じの色だ!

「私、この色、好きです。
 炭が燃えるときの赤に見えます。
 ロウソクの炎は明るいけど、誰かが吹けば消える。
 しかし、炭の炎は、自分が燃え尽きるまで、誰も消せない。そんな炭の炎の赤に見えます。
 そして、この赤を“真実の赤”という意味で“真紅”と呼ぶことにします」

 しばらく、イリーゼは黙っていたが、
「真紅……そう真紅なのね。その名に恥じぬよう頑張って、ミーナ」
「はい」


「それともう一つ、プレゼントがあるわ。これよ」
「これは……」
 私は驚いた。
 長年、夢に見た。
 探していた。
 それが、ここにあるのだから!

 それは、
「ジョリー……ロジャー?」※1

「我らの海賊旗、“髑髏と未来の鍵”を貴女に託すわ」
「イリーゼさん、貴女が預かっていたのですね」
「えぇ、だから死ねないのよ。
 仲間たちの思い出が詰まっているのですからね。
 ですが、これからは貴女たちの思い出を詰めなさい」


 そして、不覚にも私は、ここで大泣きしてしまった。

 それを見ていたクリスティアーネも、もらい泣きした。

 さらに、従姉妹のベネディクタも泣いてしまった。

 うちのメイドのアンナとアガーテ、そして、スペインからの逃亡者のアナとヘマは、ウンウンと頷いていた。


 おや、ジプシー・アンは、ギターを弾き出したよ。
 音楽担当として、早速、仕事をしているわね!
 感心、感心!?


 次回の女海賊団は、初仕事だ!


※1 ジョリー・ロジャー 17世紀辺りから海賊旗のことを指すようになった。
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