【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-26.バーナー・シュベルツ

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第二十六話
バーナー・シュベルツ


「スループ船。なまじ速いとスピードを出したくなるよな」と、私は苦笑していた。

 この船が、普通のガレオン船以上の速さなのだ。
 つい、全速力で追いかけてしまう。

 そして、いつの間にか、例の時計と反対周りの軌道を走っているのだ。

「ジャスミン、アンナ、準備は良いか?」と、水面撃ちの準備に入った。

 すると、黒い大型船が、そこに割って入ってきた。

「なんだ?」

 船体には“BKG”と大きく書かれていた。

「ガレオン船だ」
「かなりの重武装だ」

 私は、『これは撃ち合うと、ノーダメージという訳には行かないな』と思い、
「よし、乗り込むぞ! アガーテ、準備をしろ! アンナ、黒船の横に着けろ」と、気合を入れた。

 その気合は、アガーテ達に伝播するように、クルー達の顔つきが変わって行った。


 ふん、これは乗り込んで、我々を襲ってきたバカ者の顔を見に行こうではないか!
 そして、襲った理由も聞いてやろう。


「若旦那、奴ら乗り込んできます」
「伯爵の名を語る偽海賊団め! 成敗してくれるわ」

 そして、私たちは、甲板からの援護も有って、黒船に乗り込んだ。

 騎士のアガーテは、海賊刀でなく、ショートソードという不思議なスタイルであったが、振り回す海賊刀では、刺突するロングソードより遅れ気味であり、もうアガーテ一人で片付けてしまいそうだった。

 そして、ハンドカノンも役に立った。
 マスケット銃より弾込めが早く、3丁用意すれば、弾込め要員が一人でも連射出来た。

 まあ、こちらはプロの海賊団だ。
 地元の武装集団などに、ヤラレはせんよ。

「さあ、話してもらおうか。我らを襲った訳を」と、私は愛用の仕込傘を肩に載せて言い放った。

 すると、
「何を言う、偽海賊団め!」
「そうだ」
「そうだ」と、地元の連中から反発が起こったのだ。

 偽?
 こいつらは、何を言っているのだ?

 そこに、長身の男が、海賊刀を抜き駆けてきた!

「俺たちは、まだ、負けてはいない」
 そこに、アガーテが割って入った。

「無礼者ッ」
「何が無礼だ」

「アガーテ、私が、直接、聞くわ」
「お、お嬢様!」

「お前は何奴だ?」
「偽海賊団に名乗る必要は無い」

 偽海賊団?
 先から何を言っているのだ?

「では、キーナ・コスペル海賊団の船長として、お前を処分する」と、私が言うと、男たちから、凄まじいブーイングが起こった。

「ふざけるな」と言っているようだ。

“バーーン”と、ハンドカノンをぶっ放した。

「ふん、静かになったね。私がキーナだ」
「それがウソだと言っている。
 我らのヴィルヘルミーナ様は、既にお亡くなりになっている」と言うと、長身の男は斬りかかってきた。

 私は、仕込み傘で対応した。

 さて、この男の言っている“ヴィルヘルミーナ様”とは、うちのお祖母様のことでは?

 私たちが、チャンバラをしていると、港から盛大に鐘がなっている。
 あらゆる鐘がなっているようだ。

 突堤の鐘、灯台の鐘、教会もなっているのだろうか?
 まるで、空から鐘の音が降り注いでいるようだ。

 やかましい……

 そこに、一隻のカッターが高速で近付いてきた。
「止めろ、戦いはやめるんだ」という、四十代の男性が旗を振っている。


「旦那様だ」
「会長とヨーゼフ部長だ」と、口々に男たちが言っている。

 会長?
 誰だろうか?

 そのカッターは、“Der Schlüssel zur Zukunft”号の船首に近づいた。

「ヨーゼフさん。どうです」
「間違い無い。本物だ! この船首像はレプリカとは違う。レプリカは単に女神像だったが、本物は“セイレーンを連れたローレライ”だ。そうローレライなのだ。
 この船こそが、“Der Schlüssel zur Zukunft”号だ」

「おい、聞いたか?」
「ヨーゼフさんが、本物と言っているぞ」


 なんだ?

 ヨーゼフさんって、あのマリーネさんの弟のヨーゼフさんか? ※1

 そして、カッターから、船員が上がってきた。

 会長と呼ばれる四十代の男性が、私を見て、開口一番、
「似ている。伯爵様の面影がある」

 ……

「父さん、今なんと!」
「あぁ、私も若い頃のヴィルヘルミーナさんに似ていると思ったよ」
「ヨーゼフさんまで、何を言っているんです」

「すまない。ヴィルヘルミーナ嬢。こんなに早くボンベイに着くとは、思っていなかったんだ。
 私がエルハルト・シュベルツ。
 こちらが、ヨーゼフさん。
 そして、息子のバーナーです」

 えっ、この男が“あのシュベルツさん”の孫なの?

 そして、バーナーが言った、
「えっ、あの伯爵様の孫なら、もっと美人では?」と。

 やかましいわッ!


 次回の女海賊団は、幻滅です。
 シュベルツさんの孫が、こんな粗野な……
 夢は儚くも……


※1 マリーネ 風土病で既に他界している。
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