【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

文字の大きさ
48 / 58
第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-35.淡水真珠は恋の歌

しおりを挟む
第三十五話
淡水真珠は恋の歌


「マルですか?」と、私は思わず口にした。
「そうマルです。私達は円相と呼んでいます。エンソウと」

「円相?」という私に、バーナーがこちらを向いた。
 何故、こんなに熱心に聞くのだろうかと、思ったのだろう。
 それは、自分でもわからないが、何かを感じたのだ。
 カンだ!

 住職は続けた。
「円とは、仏性であり、悟り。目覚め。悟りとは解脱。解脱とはすべての欲から解き放たれる事。すなわち自由自在」
「自由自在?」

 その時、私の中の何が、雷の如く光を放った。
 
「住職! お尋ねします。自由自在に目覚める事は誰にでも、出来ることなのでしょうか?」
「我が宗派は、ひたすら、坐することで、全ての者が解脱に到れると考えております。これ、すなはち、大乗仏教の教え、強いては一乗とも言います」
「一乗ですか……」

 そこで、私は、先日の村上海賊が敵の子供を養子にしていることを、どう思うかを、住職に聞いてみた。

「住職のご意見をお聞かせください。何故、敵の子供を養子にして、育てるのでしょうか? しかも、自分たちの子供と分け隔てなく」
「まさしく、先ほどのマルです」

 私は、マルについて、この宗教について、もっと知りたいと思ったが、残念なことに時間となってしまった。

 ただ、村上海賊が、敵の子供を養子にするのは、聖書に記載があるなどといった宗教上根拠があるわけでも、法律上根拠があるわけでもないことは、確かだということは理解した。


 さて、翌日は、例の傭兵がお勧めしたい店があるらしい。
 この傭兵は、佐吉という名前のようだ。

 まあ、名前など、どうでもよろしい。

「これはマッチロック?」
「はい、御婦人。火縄銃です」
「銃というより、小砲にみえるわね」と言うと、アガーテも頷いている。

「試し撃ちをしてみますか?」
「可能なら是非に」というと佐吉は、準備に取り掛かった。

「このマッチロックで、あの板を撃ちます。すると」
「板に穴があく」と、皆思っている。
「では!」と佐吉が言うと、火縄銃を撃ち放った。

 ドカーン!
という音と共に、板が爆裂した。

 見た目を裏切らない、スゴい威力だ。
 私達は、苦笑していた。
「では、三丁ほど買いましょう」と、佐吉に購入を指示しておいた。

 さて、私は、そんな事よりも、赤い真珠が気になっていた。

 佐吉が言うには、白い真珠以外にも、色んな色があるそうだ。※1

 なんと!

 ただ、赤い真珠は知らないと言っている。

「どんな色があるの?」
「はい、黄金や桜色にミカンのような橙色がありますが、たまに紫も出来るみたいですね」

 えっ?
 黄金に紫!?
 そう、この時代、紫は贅沢の象徴なのだ。
 何故なら、ヨーロッパには紫の染料が無いからだ。

 紫の真珠なんて付けて、社交界に出た日には、御婦人達に囲まれて離してもらえないだろう。
 やはり、この国は黄金は無くとも、宝の山だ!
 我々の常識を上回る品がある。

「どこにありますの?」
「はい、この都から東の琵琶湖にあります。馬なら直ぐです」

 なんと、近くにあると!

 そして、翌日、琵琶湖の大津へ向かった。
 白い真珠は海でアコヤ貝を使い養殖をするが、この淡水真珠はイケチョウ貝を使うらしい。
「南蛮からも買付に来られますね」と、店主。
 なんやて!
 もう、出遅れたのか……

 しかし、宝石やら、真珠やらを眺めるのは、心の栄養みたいなもので飽きない。
 つい長居をしてしまった。

 すると、バーナーが、
「も、もし、君が良ければ、これをプレゼントしたい」
「えっ、バーナー。私に」
「そうだ。ミーナに」と、言ってくれたんだけど、後ろがやかましいな!

「バーナーさん、ミーナちゃんだけってことは無いですよね。私も、私もいますから」

 あぁ、ベネディクタ!
 うるさいって!

 ということで、淡水真珠は、私とベネディクタの二人にプレゼントとなった。

 キィーッ!

 しかし、黄金の真珠って、有ったんだな。
 驚きだ!
 しかも、数は少ない。

「バーナーさんは、私のものなんだからね」
 おだまり!


  淡海あふみの海 しずく白玉知らずして ※2
  恋ひせしよりは 今こそまされ
  『万葉集』第十一巻 2445 柿本人麻呂 ※3

 次回の女海賊団は、選択します。


※1 ヨーロッパには、白い真珠しかない。淡水真珠は日本と中国が産地。

※2 淡海の海は、「近江」と「淡水」を掛けている。近江では淡水でも真珠が作れるという驚きを表現している。
   白玉は、真珠のこと。ここでは恋しい女性を指す。

※3 「琵琶湖に深く沈んでいる真珠のように、深く相手を知らずに恋焦がれていた時よりも、相手を知って理解した今の方が、より素敵に見える」という意味。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...