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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて
2-2-35.淡水真珠は恋の歌
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第三十五話
淡水真珠は恋の歌
「マルですか?」と、私は思わず口にした。
「そうマルです。私達は円相と呼んでいます。エンソウと」
「円相?」という私に、バーナーがこちらを向いた。
何故、こんなに熱心に聞くのだろうかと、思ったのだろう。
それは、自分でもわからないが、何かを感じたのだ。
カンだ!
住職は続けた。
「円とは、仏性であり、悟り。目覚め。悟りとは解脱。解脱とはすべての欲から解き放たれる事。すなわち自由自在」
「自由自在?」
その時、私の中の何が、雷の如く光を放った。
「住職! お尋ねします。自由自在に目覚める事は誰にでも、出来ることなのでしょうか?」
「我が宗派は、ひたすら、坐することで、全ての者が解脱に到れると考えております。これ、すなはち、大乗仏教の教え、強いては一乗とも言います」
「一乗ですか……」
そこで、私は、先日の村上海賊が敵の子供を養子にしていることを、どう思うかを、住職に聞いてみた。
「住職のご意見をお聞かせください。何故、敵の子供を養子にして、育てるのでしょうか? しかも、自分たちの子供と分け隔てなく」
「まさしく、先ほどのマルです」
私は、マルについて、この宗教について、もっと知りたいと思ったが、残念なことに時間となってしまった。
ただ、村上海賊が、敵の子供を養子にするのは、聖書に記載があるなどといった宗教上根拠があるわけでも、法律上根拠があるわけでもないことは、確かだということは理解した。
さて、翌日は、例の傭兵がお勧めしたい店があるらしい。
この傭兵は、佐吉という名前のようだ。
まあ、名前など、どうでもよろしい。
「これはマッチロック?」
「はい、御婦人。火縄銃です」
「銃というより、小砲にみえるわね」と言うと、アガーテも頷いている。
「試し撃ちをしてみますか?」
「可能なら是非に」というと佐吉は、準備に取り掛かった。
「このマッチロックで、あの板を撃ちます。すると」
「板に穴があく」と、皆思っている。
「では!」と佐吉が言うと、火縄銃を撃ち放った。
ドカーン!
という音と共に、板が爆裂した。
見た目を裏切らない、スゴい威力だ。
私達は、苦笑していた。
「では、三丁ほど買いましょう」と、佐吉に購入を指示しておいた。
さて、私は、そんな事よりも、赤い真珠が気になっていた。
佐吉が言うには、白い真珠以外にも、色んな色があるそうだ。※1
なんと!
ただ、赤い真珠は知らないと言っている。
「どんな色があるの?」
「はい、黄金や桜色にミカンのような橙色がありますが、たまに紫も出来るみたいですね」
えっ?
黄金に紫!?
そう、この時代、紫は贅沢の象徴なのだ。
何故なら、ヨーロッパには紫の染料が無いからだ。
紫の真珠なんて付けて、社交界に出た日には、御婦人達に囲まれて離してもらえないだろう。
やはり、この国は黄金は無くとも、宝の山だ!
我々の常識を上回る品がある。
「どこにありますの?」
「はい、この都から東の琵琶湖にあります。馬なら直ぐです」
なんと、近くにあると!
そして、翌日、琵琶湖の大津へ向かった。
白い真珠は海でアコヤ貝を使い養殖をするが、この淡水真珠はイケチョウ貝を使うらしい。
「南蛮からも買付に来られますね」と、店主。
なんやて!
もう、出遅れたのか……
しかし、宝石やら、真珠やらを眺めるのは、心の栄養みたいなもので飽きない。
つい長居をしてしまった。
すると、バーナーが、
「も、もし、君が良ければ、これをプレゼントしたい」
「えっ、バーナー。私に」
「そうだ。ミーナに」と、言ってくれたんだけど、後ろがやかましいな!
「バーナーさん、ミーナちゃんだけってことは無いですよね。私も、私もいますから」
あぁ、ベネディクタ!
うるさいって!
ということで、淡水真珠は、私とベネディクタの二人にプレゼントとなった。
キィーッ!
しかし、黄金の真珠って、有ったんだな。
驚きだ!
しかも、数は少ない。
「バーナーさんは、私のものなんだからね」
おだまり!
淡海の海 沈く白玉知らずして ※2
恋ひせしよりは 今こそまされ
『万葉集』第十一巻 2445 柿本人麻呂 ※3
次回の女海賊団は、選択します。
※1 ヨーロッパには、白い真珠しかない。淡水真珠は日本と中国が産地。
※2 淡海の海は、「近江」と「淡水」を掛けている。近江では淡水でも真珠が作れるという驚きを表現している。
白玉は、真珠のこと。ここでは恋しい女性を指す。
※3 「琵琶湖に深く沈んでいる真珠のように、深く相手を知らずに恋焦がれていた時よりも、相手を知って理解した今の方が、より素敵に見える」という意味。
淡水真珠は恋の歌
「マルですか?」と、私は思わず口にした。
「そうマルです。私達は円相と呼んでいます。エンソウと」
「円相?」という私に、バーナーがこちらを向いた。
何故、こんなに熱心に聞くのだろうかと、思ったのだろう。
それは、自分でもわからないが、何かを感じたのだ。
カンだ!
住職は続けた。
「円とは、仏性であり、悟り。目覚め。悟りとは解脱。解脱とはすべての欲から解き放たれる事。すなわち自由自在」
「自由自在?」
その時、私の中の何が、雷の如く光を放った。
「住職! お尋ねします。自由自在に目覚める事は誰にでも、出来ることなのでしょうか?」
「我が宗派は、ひたすら、坐することで、全ての者が解脱に到れると考えております。これ、すなはち、大乗仏教の教え、強いては一乗とも言います」
「一乗ですか……」
そこで、私は、先日の村上海賊が敵の子供を養子にしていることを、どう思うかを、住職に聞いてみた。
「住職のご意見をお聞かせください。何故、敵の子供を養子にして、育てるのでしょうか? しかも、自分たちの子供と分け隔てなく」
「まさしく、先ほどのマルです」
私は、マルについて、この宗教について、もっと知りたいと思ったが、残念なことに時間となってしまった。
ただ、村上海賊が、敵の子供を養子にするのは、聖書に記載があるなどといった宗教上根拠があるわけでも、法律上根拠があるわけでもないことは、確かだということは理解した。
さて、翌日は、例の傭兵がお勧めしたい店があるらしい。
この傭兵は、佐吉という名前のようだ。
まあ、名前など、どうでもよろしい。
「これはマッチロック?」
「はい、御婦人。火縄銃です」
「銃というより、小砲にみえるわね」と言うと、アガーテも頷いている。
「試し撃ちをしてみますか?」
「可能なら是非に」というと佐吉は、準備に取り掛かった。
「このマッチロックで、あの板を撃ちます。すると」
「板に穴があく」と、皆思っている。
「では!」と佐吉が言うと、火縄銃を撃ち放った。
ドカーン!
という音と共に、板が爆裂した。
見た目を裏切らない、スゴい威力だ。
私達は、苦笑していた。
「では、三丁ほど買いましょう」と、佐吉に購入を指示しておいた。
さて、私は、そんな事よりも、赤い真珠が気になっていた。
佐吉が言うには、白い真珠以外にも、色んな色があるそうだ。※1
なんと!
ただ、赤い真珠は知らないと言っている。
「どんな色があるの?」
「はい、黄金や桜色にミカンのような橙色がありますが、たまに紫も出来るみたいですね」
えっ?
黄金に紫!?
そう、この時代、紫は贅沢の象徴なのだ。
何故なら、ヨーロッパには紫の染料が無いからだ。
紫の真珠なんて付けて、社交界に出た日には、御婦人達に囲まれて離してもらえないだろう。
やはり、この国は黄金は無くとも、宝の山だ!
我々の常識を上回る品がある。
「どこにありますの?」
「はい、この都から東の琵琶湖にあります。馬なら直ぐです」
なんと、近くにあると!
そして、翌日、琵琶湖の大津へ向かった。
白い真珠は海でアコヤ貝を使い養殖をするが、この淡水真珠はイケチョウ貝を使うらしい。
「南蛮からも買付に来られますね」と、店主。
なんやて!
もう、出遅れたのか……
しかし、宝石やら、真珠やらを眺めるのは、心の栄養みたいなもので飽きない。
つい長居をしてしまった。
すると、バーナーが、
「も、もし、君が良ければ、これをプレゼントしたい」
「えっ、バーナー。私に」
「そうだ。ミーナに」と、言ってくれたんだけど、後ろがやかましいな!
「バーナーさん、ミーナちゃんだけってことは無いですよね。私も、私もいますから」
あぁ、ベネディクタ!
うるさいって!
ということで、淡水真珠は、私とベネディクタの二人にプレゼントとなった。
キィーッ!
しかし、黄金の真珠って、有ったんだな。
驚きだ!
しかも、数は少ない。
「バーナーさんは、私のものなんだからね」
おだまり!
淡海の海 沈く白玉知らずして ※2
恋ひせしよりは 今こそまされ
『万葉集』第十一巻 2445 柿本人麻呂 ※3
次回の女海賊団は、選択します。
※1 ヨーロッパには、白い真珠しかない。淡水真珠は日本と中国が産地。
※2 淡海の海は、「近江」と「淡水」を掛けている。近江では淡水でも真珠が作れるという驚きを表現している。
白玉は、真珠のこと。ここでは恋しい女性を指す。
※3 「琵琶湖に深く沈んでいる真珠のように、深く相手を知らずに恋焦がれていた時よりも、相手を知って理解した今の方が、より素敵に見える」という意味。
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