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第三章 プロイセン公国へ(失われた栄光のために)
3-10.ケーニヒスベルクの海
しおりを挟む父のフォルカーを中心としたガレオン船製造計画がスタートした。
アインス商会がライン川の上流にあるボーデン湖とウィンター湖という2つの巨大な湖で試作船を建造する。
ちなみにだ。
ドイツ語では湖は“see”なのだ。
海は“Meer”となる。
問題の武装はヤスミンの知識で、新兵器を作っているとか。
一方、私は従姉妹たちの誘いで、海へ行くことになった。
ワルシャワから、ケーニヒスベルクへ移動となる。
そして、生まれて初めて海を見た。
おそらく、「まあ、なんて広くて気持ちいいの」なんて、反応をするのが一般人だろう。
隠さず正直に言うと、「き、気持ち悪い。とっても気持ち悪い。勘弁して欲しい」が第一印象だった。
この潮風と言うのが、どうも身体に悪そうなのだ。
身体を侵食されそうになる。
そして、臭いのだ。
潮風と言うのは、どうもダメだった。
しかし、アンナもマリーもとても楽しそうだ。
これが普通の反応なのだろう。
まあ、私は生まれついての山の人間なのだろうな。
そう!
このケーニヒスベルクの海を説明しておこう!
ここは、内海と外海のある海だ。
日本だと天橋立がそうなのかしらね。
ビスワ湖からビスワ潟が内海になり、バルト海が外海になる。
橋立の先っちょが船が通れる程度に空いており、そこから内海の港へ入って来れるようになっている。
守りに適しているかもしれない。
しかし、内海のビスワ湖は、ビスワ川の他の支流につながっており、支流をさかのぼって侵入することも可能なので、意外と出入り自由かもしれないな。
さて、しばらく、ここでお世話になるのだけれど、父やエマリー達には手紙を出しておいた。
そして、ここで覚えたものが、いくつかある。
1つ目は、変装だ。
一度やると癖になる。
この様な商売が良いのかどうかはわからないのだけれども、仕立て屋の裏の稼業のようだ。
例えば、商売人の奉公人がいたとする。
主人がいて、番頭がいて、先輩がいて……
仮に、番頭が悪い奴だとしようじゃないか。
自分が番頭、あるいは主人の役の服装をして、自分にきつく当たる番頭と対等になったり、主人になり、そいつを懲らしめたりする気分を味わう。
外出も出来る様だ!
私の場合は、貴族令嬢から街娘やら女海賊の服装をして、ちょいと街に出かける。
「だれも私とは気づくまい。ふふふ」
しかし、私の専属の使用人になった少女が青ざめている。
「どうかしたの?」
「いえ、護衛もなしに街に出かけられては、もしものことがあっては……」
「あったら?」
「いえ、その」
「う~ん、貴女のクビが飛ぶのかしら」
「お嬢さま……ですからおやめください」
「嫌よ!」
ということで、この仕立て屋の裏で変装を、今日も楽しんでいる。
しかし、この仕立て屋は、私が貴族令嬢に変装して店に来ていると思っているようだ。
何故だ?
あふれんばかりの気品があるはずなのだが……
そして、そのことを使用人の少女に話し、彼女の方を見ると、私と眼を併せようとしないのは、何故?
さて、もう一つ覚えたことは、金細工だ。
街娘に返送して、商店を見ていると、合鍵を作っている店を見つけた。
早速、弟子入りして、基本を教えてもらったわ!
そして、使用人の少女が言うように、もしもの時に備えて、暗器や仕込み杖なども作れるようにお願いするも。
「それは簡単には出来ないよ。研究が必要だね」とのことだった。
「出来れば、日傘を刺突武器に強化できない?」
「まあ、考えておくよ」とのことだった。
さて、合鍵の技術を覚えたので、屋敷の鍵と言う鍵を開けてやるのだ!
ガハハ!
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